大自在(12月8日)横浜毎日新聞

 新聞文化の継承と発展を目的として2000年に開設された日本新聞博物館(ニュースパーク)は横浜市中区にある。日本新聞協会が運営し、新聞に関わるさまざまな資料を展示している。来館者が記者になって取材や紙面製作を疑似体験するコーナーも設けられている。
 手前みそだが、1階吹き抜けロビーに展示されたオフセット輪転機は静岡新聞が1979年に導入し、97年まで稼働させた実物。訪れた人に新聞の歴史を知ってもらうための一助になっているとすればうれしい。
 横浜が同館の開設地に選ばれたのは、日刊新聞発祥の地だからだ。日本初の日刊新聞とされる横浜毎日新聞の創刊は、旧暦の明治3年12月8日(新暦の1871年)のこと。改題や移転を繰り返し、吸収合併されて現存しない。
 創刊当時の横浜は、江戸時代末期の横浜港開港により多くの外国人が住むようになっていた。そこに集まる重要な情報を求める人々のニーズに応え、新聞文化が芽吹いたとされる。
 横浜毎日新聞は当初、主として貿易に関する情報を掲載する経済紙だったが、しばらくすると民権派の新聞と見なされるようになっていった。不平士族を中心に始まった自由民権運動が商工業者や地主、知識人などへと広がっていったことに応じた変化だったのだろう。
 日刊紙誕生から150年が経過した今、新聞はその歴史上で最も大きな変化の波にもまれている。歴史ある紙の良さを生かしつつ、デジタル化をどう進めていくか。「ニーズに応じた変化」が大切なのは昔も今も変わらないようだ。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞