川端康成「伊豆を愛していた」 「踊子」ゆかりの旅館女将らトーク 河津町

 川端康成の「伊豆の踊子」ゆかりの旅館・福田家(河津町)で25日、生前の川端とも交流のあった4代目女将(おかみ)の稲穂昭子さん(78)らのトークショー(県温泉協会、美しい伊豆創造センター共催)が開かれた。

在りし日の川端との思い出を振り返る稲穂さん(左)と河村さん=河津町の福田家
在りし日の川端との思い出を振り返る稲穂さん(左)と河村さん=河津町の福田家

 「踊子」では、川端康成が自身を投影した主人公「私」が過ごした福田家。稲穂さんは「(川端は)怖いというイメージを持たれがちだが、無口でとっつきにくいだけで、本当は優しい方。伊豆を愛していた」との逸話を紹介。川端が温泉への愛着を度々示していたとし、「だからこそ『踊子』も生まれたのかもしれない」と推察。「小さな温泉街に多大な財産を残してくれた。この歴史を後世にしっかりとつないでいかなければいけない」と決意を示した。
 日本温泉地域学会の赤池勇治理事は福田家周辺の湯ケ野温泉の歴史などを解説した。「踊子が足を運び、主人公と距離を近づけたのも温泉。温泉には旅人や地域を結び付ける力がある」と強調した。
 福田家に川端康成が最初に泊まったのは1918年と伝わっていて、小説そのものとされる。「『私』の泊まった部屋」との名称の一室も、ほぼ滞在当時のままの姿で今も宿泊者を受け入れている。
 トークショーには県舞台芸術センター(SPAC)が県内各地で上映する「伊豆の踊子」に出演する河村若菜さんも参加し、「ゆかりの地が今も残されているのがどれだけ素晴らしいことかを実感した」と語った。

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