下り坂、安全手順省略か 住民「引き綱が面倒と聞いた…」 伊豆の国・山車横転 10日で発生1週間

 伊豆の国市田京の市道で秋祭りの山車が横転し、1人が死亡、18人が重軽傷を負った事故で、山車の巡行に関わった住民が安全確保のための手順を何らかの理由で意図的に省略した可能性があることが、8日までの複数の関係者への取材で分かった。静岡県警は業務上過失致死傷容疑を視野に入れ全容解明を急いでいるが、関係者が多数いることや事故の瞬間を記録した映像がないとみられることなどから、捜査には一定の期間がかかる見込み。事故は10日で発生から1週間を迎える。

警察に押収された山車=3日、伊豆中央署
警察に押収された山車=3日、伊豆中央署
秋祭りの山車が横転した現場=3日午前、伊豆の国市田京(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
秋祭りの山車が横転した現場=3日午前、伊豆の国市田京(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
警察に押収された山車=3日、伊豆中央署
秋祭りの山車が横転した現場=3日午前、伊豆の国市田京(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)


 事故現場の下り坂に入る際には本来、前方2本の引き綱のうち1本を後ろに移動して引き、速度を調整する。今回はこの操作をしていなかったことがこれまでの関係者への取材などで分かっている。当日、巡行に関わった住民の1人は取材に「一部の人から引き綱が面倒だと聞いた。(事故当日も)勝手にやり方を変えたのではないか」と指摘する。
 伊豆中央署などは山車を任意で押収して調べているが、これまでのところ車体そのものに何らかの不具合や異常があった可能性は低いとみられている。関係者の話では、山車は年に2回ほど車輪を中心に点検していたほか、事故の約2週間前には消防による点検を受けたばかりだった。
 関係者によると、山車の引き手全体には運行経路や危険箇所に関する情報共有がされていなかった。県警は、横転した山車の運行に関わっていた地元住民らに話を詳しく聞くなどし、事故当日の運行方法や安全対策に加え、現場指揮や情報共有のあり方などに問題がなかったかどうかを調べているとみられる。
 現場では今なお献花に訪れる人の姿が絶えない。近くに住む70代女性は「地域が盛り上がる大切な祭りだが、今後はこのような事故が決して起こらないようにしなければ」と悔やんだ。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞