ちゃらん ぽらん 真面目が幅を利かす今 佐藤ゆず【SPAC俳優 言葉をひらいて⑰】

 自覚している自分の性格と、周りが認識しているその人の性格は結構違うと思う。

言葉をひらいて「ち」
言葉をひらいて「ち」
佐藤ゆずさん
佐藤ゆずさん
言葉をひらいて「ち」
佐藤ゆずさん

 子どもの頃、私は「ちゃらんぽらんなことをしない!」とよくしかられていた。だらしない、とか、いいかげんと似たような意味で言われていた気がする。
 大学受験の時の話。願書締め切り2日前に、私の手元にはまだ出願書類があった。今みたいにオンライン出願なんて時代じゃないから、郵送か手渡し。しかも同封する証明写真もまだ撮っていなかった。
 私自身は「速達で出せば届くから問題ない~」と呑気[のんき]にしていたのだが、「ちゃらんぽらんにも程がある!」と、父激怒。両親と担任の先生を説き伏せてまで高校3年生で進路変更をしたのに、本当に進学する気はあるのか? と、そりゃ心配になるわと、今なら分かる。しかし高校生の私は、自分のちゃらんぽらん度合いがよく分かっていなかった。本当に、今でも鮮明に思い出せる、見事な怒られっぷりだった。
 そのおかげなのかどうか定かではないが、大人になった私は、だらしなくも「真面目」と言われることがとっても増えた。「佐藤ゆずの印象=真面目」である。面白いことを思いつく柔軟性がほしいとき、例えばラジオパーソナリティー時代やSPACでの日々の稽古場でこそ、ちゃらんぽらんのいいところを発揮できそうなのに、これがなかなか思うようにはいかず「真面目」が幅を利かせている。
 おかしい。私って、ちゃらんぽらんじゃなかったのか…? ちゃらんぽらんと言われた幼い頃も真面目と言われる大人になった今も変わっていないのは、楽しくなるとすぐ跳びはねるところ。三つ子の魂百まで。自分のことは、自分が一番分かっていない。今こそ、ちゃらんぽらんの本領発揮をしたいものだ。

 さとう・ゆず 新潟県出身。獣医師を志すも、民族舞踊やヨガの道に。2009年よりSPAC。24年1~3月、宮城聰・寺内亜矢子演出のSPAC「ばらの騎士」に出演予定。ヨガ講師やアマチュアカメラマン、ラジオパーソナリティーなどの顔も。

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