時論(10月29日)バッハ会長 3期目はあるのか

 インドのムンバイで先日行われた国際オリンピック委員会(IOC)の総会では、2028年ロサンゼルス夏季五輪の追加競技の一括承認や30、34年の冬季五輪開催地を同時決定することが決まった。
 その他にも見逃せない動きがあった。トーマス・バッハ会長(69)=ドイツ=の任期延長についてである。25年での退任が決まっていたが、IOC委員から続投を求める意見が相次いだ。
 「再選を可能にすべきだ」。アルジェリアの委員が続投を訴え、ドミニカ共和国、パラグアイ、ジブチの各委員が続いた。任期延長論の形成に向け、各委員が事前に協議してきたという声もある。
 会長の任期は1期目8年、2期目4年の最長12年と五輪憲章で決まっている。権力集中や腐敗など長期政権の弊害を防ぐためだ。13年に初選出されたバッハ会長は、21年に再選されていた。3期目を可能にするには、憲章の改定が必要になる。
 各委員の発言を受けてジョン・コーツ副会長は、改定は容易ではないとしながら「修正案はIOC理事会に諮り、総会の30日前に提出しなければならない」と加えた。今後の手続きの説明とも受け取れないだろうか。
 「スポーツ組織は高潔さを持ち、ルールを守らないといけない」。バッハ続投の流れが加速する中、異を唱えたのは国際体操連盟会長の渡辺守成委員だ。渡辺氏も次期会長候補として名前の挙がる一人ではある。しかし、渡辺氏を支援する委員はいなかった。
 東京五輪での独善的な姿勢も記憶に新しいバッハ会長。憲章改定については「私は憲章に忠実だ」とかわし、肯定も否定もしなかった。果たして真意は…。
(論説委員・山崎善啓)

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