「生物の評価不十分」 国交省会議報告書案に見解 知事会見【大井川とリニア】

 川勝平太知事は10日の定例記者会見で、リニア中央新幹線トンネル工事が南アルプスの自然環境に与える影響を議論する国土交通省専門家会議で9月26日に示された「報告書案」について、「沢の流量変化により動植物の環境にどういう事態が生じる可能性があるのか分析、評価できていない」と述べ、動植物に対する環境影響評価が不十分との認識を示した。
 知事は、県がこれまでに求めている動植物の生息・生育調査や、工事による影響予測、回避・低減策の検討が報告書案に記されていないとし、「細部を落としてでもとにかく全体をまとめていこうという姿勢が見える」と、専門家会議の議論の進め方に疑問を呈した。
 報告書案では、高標高部の植生への影響に関して、JR東海の調査結果を基に「工事の影響は受けない」との趣旨の結論が盛り込まれたが、知事は「(影響がないとは)明らかにされていない」と、調査不足との見解を述べた。
 「専門家が時間をかけて資料を見ながら(議論を)やってもらったものだから、尊重する姿勢は変わらない」と述べつつ、「問題が解決することとは全然違う」と指摘。専門家会議で検討が不十分な点について県専門部会であらためて議論し、関係者が納得する結論を導く必要があるとした。   協議の進捗 「1合目よりは進んだ」 依然位置低く「ボールはJR側に」
 川勝知事は定例記者会見で、県内でのリニア中央新幹線工事着手に向けたJR東海との議論の進捗(しんちょく)について「1合目よりは少し進んだ」と述べた。記者が「まだだいぶ低い位置にある」と問うと、「そうですね」と答えた。
 知事は2021年3月の定例記者会見で、当時の国専門家会議での議論の進捗を「1合目」などと発言していた。21年12月に大井川中下流域の水資源問題に対する国の中間報告が出され、「田代ダム取水抑制案」の協議が進展していることなどから、知事は「議論は着実に前に進んでいる」との認識を示した。
 一方で、南アルプスの自然環境への影響や残土置き場の安全性に関しては議論の最中で、現時点で成果を見いだしにくいとした。
 25年7月までの知事任期中の解決は難しいのかと問われたのに対し、「私がJRの意思決定者であれば、川勝と膝をつき合わせて話し、その場で解決策を出せる自信がある」「ボールはJRの方にある」などと持論を述べ、同社の対応次第と強調した。

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