衛星データをAIで解析→候補を抽出 荒廃農地調査を省力化 静岡県内5市で実施

 静岡県と県農業会議でつくる県荒廃農地調査DX化推進研究会は9月、荒廃農地の調査にデジタル技術を導入し、農業委員が目視で行ってきた現地パトロールを効率化する取り組みを始めた。衛星データ解析を基にしたアプリを使い、荒廃が進む農地を抽出した上で現地調査を行う。調査の迅速化につなげ、農地の荒廃化を抑制する効果も期待されている。

タブレット端末を使って現地調査する三島市農業委員会の望月正己さん=9月上旬、三島市大場
タブレット端末を使って現地調査する三島市農業委員会の望月正己さん=9月上旬、三島市大場

 調査には衛星データ解析などを手がけるサグリ(兵庫県)のアプリ「アクタバ」を活用。人工知能(AI)で農地の状況を分析し、耕作放棄地となる可能性がデジタルの地図上で表示される。調査を担う各農業委員会は、荒廃度が低い農地のパトロールを省略できるようになる。
 取り組みの背景には、4月に施行された農業経営基盤強化促進法の改正に伴う農業委員会の負担増の課題もある。改正法により、自治体ごとに地域農業の将来像を示す「地域計画」の策定が必要となった。計画の基となる調査は各地の農業委員会が担うが、委員の高齢化や荒廃農地の拡大などで、作業量の低減は喫緊の課題となっている。
 9月上旬に三島市大場で行われた現地調査では、農業委員が専用のタブレット端末を持って、抽出された荒廃農地を巡回した。農業委員は荒廃率を目視で確認し、解析結果と現状の比較確認を行った。現地で撮影した写真を端末に保存することで、資料作成の省力化にもつながった。
 三島市農業委員会の望月正己さん(75)は「これまで巡回と紙の地図上で確認してきた作業が合理化できる。端末操作もそれほど難しくなく、非常に便利なツール」と語った。
 本年度は三島市のほか、沼津、島田、牧之原、菊川の計5市でAI解析と現地調査を進める。来年度以降は他市町の農業委員会にも活用を促し、県農業会議が一括して同アプリを導入する予定。
 県農業ビジネス課の担当者は「荒廃農地の確認と農地の集約化は地域農業の重要課題。新技術で対応スピードを上げられる」と期待する。
 (経済部・垣内健吾)

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