熱海への誘客、小説で支える 作家・森村誠一さん死去

 作家の森村誠一さんの死去が報じられた24日、森村さんとゆかりの深い熱海市では、気さくで温かい人柄を惜しむ声や、同市の観光や文化の振興を支えてくれた文豪への感謝の声が聞かれた。

カフェ・ド・シュマンで杉本憲治さんと記念撮影する森村誠一さん(左)=2019年1月、熱海市(杉本さん提供)
カフェ・ド・シュマンで杉本憲治さんと記念撮影する森村誠一さん(左)=2019年1月、熱海市(杉本さん提供)
森村誠一さんが好んだコーヒーを入れながら思い出を語る杉本憲治さん=24日午後、熱海市
森村誠一さんが好んだコーヒーを入れながら思い出を語る杉本憲治さん=24日午後、熱海市
カフェ・ド・シュマンで杉本憲治さんと記念撮影する森村誠一さん(左)=2019年1月、熱海市(杉本さん提供)
森村誠一さんが好んだコーヒーを入れながら思い出を語る杉本憲治さん=24日午後、熱海市

 森村さんは1970年代から同市中心街のマンションに仕事場を構え、執筆活動に打ち込んだ。月の半分ぐらいは熱海で生活していたという。仕事の合間に足しげく通った飲食店「カフェ・ド・シュマン」の杉本憲治さん(74)は突然の訃報に、「もうお会いできないと思うと寂しくてならない」と肩を落とした。
 コロナ禍前の2019年までは毎年正月に杉本さんや従業員と写真を撮るのが恒例だった。杉本さんは、森村さんお気に入りのコーヒーを入れながら「熱海の街を歩き回り、住民との出会いを作品のヒントにしていた。とても好奇心が旺盛な方だった」と悼んだ。
 森村さんは、1500冊近い著書を同市立図書館に寄贈したほか、市の観光事業にも協力した。03年から10年ほど続いた誘客企画「アタミステリー紀行」では、市内の観光スポットが登場するミステリー小説を森村さんが毎年書き下ろし、観光客が作品を基に街歩きしながら謎解きに挑んだ。事業を担当した市観光建設部の立見修司次長(55)は「当時の熱海は観光客が減少し、非常に苦しい時だった。そんな時に少しでも街を盛り上げようと支えてくれた」と感謝の言葉を繰り返した。
 (熱海支局・豊竹喬)

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