富士山の自然と文化、共に維持 世界遺産登録の意義解説 富士で国際シンポ

 富士山世界遺産登録10周年記念国際シンポジウム「世界の聖なる山と富士山」(県富士山世界遺産センター主催、静岡新聞社・静岡放送後援)が1日、富士市のロゼシアターで始まり、各分野の学者ら6氏が登壇した。世界文化遺産登録によって、富士山の自然環境と文化を共に維持し、管理する施策につながったとの意見が聞かれた。

世界の山々を世界遺産登録する意義を語るメヒティルド・ロスラー氏=1日午前、富士市のロゼシアター
世界の山々を世界遺産登録する意義を語るメヒティルド・ロスラー氏=1日午前、富士市のロゼシアター

 世界遺産登録された山の多くが、周辺地域での象徴的な特性が登録の決め手になっている中、メヒティルド・ロスラー元ユネスコ世界遺産センター長は、葛飾北斎らの富士山画が西洋から見た日本文化に大きく影響を与えたとし、「世界的に価値を認められている霊峰だ」と改めて強調した。
 文化遺産登録だった意義について、稲葉信子筑波大名誉教授は、人と自然の絆を表す文化的景観として保全すべきと判断された結果であり、自然と文化財というそれぞれ独立した保全の枠組みの間を埋める立ち位置を作ったと指摘した。
 鈴木正崇慶応大名誉教授は、古代は山を禁足地として遥拝(ようはい)してきたが、登って無病息災などを願う風習が次第に広まった日本の山岳信仰の変化を説明。ロスラー氏は山々を世界遺産に登録したことで関係機関の保全意識が向上し、生物や文化の多様性維持に貢献しているとの利点に言及する一方、観光客の過多を課題として挙げた。
 2日はニュージーランド・トンガリロ国立公園の解説やパネル討論会を予定。最終日の3日は関係者らが関連施設を訪問する。

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