台風2号大雨 24時間降水量、台風15号超す 短期集中豪雨なく、被害広がらず? 静岡県内

 3日未明までの大雨の影響で一部道路が冠水するなどした静岡市清水区。夜間も強い雨脚が続き、昨年9月の台風15号の被災が頭をよぎった住民は多かった。静岡地方気象台によると、同区の最大の24時間降水量を比較すると、今回の大雨では、6月としてはこれまでで最も多い360・5ミリを記録し、昨秋の台風15号の319・5ミリを上回った。一方で今回は、1時間降水量が110ミリを超えた場合に気象庁が発表する記録的短時間大雨情報が一度もなく、巴川が注ぐ清水港の潮位の違いも被害の広がり具合を分けたとみられる。

「高さ30センチくらいまで水が押し寄せた」と話す鈴木美之さん=5日午前、静岡市清水区鳥坂のラーメン店「鳥坂一元」
「高さ30センチくらいまで水が押し寄せた」と話す鈴木美之さん=5日午前、静岡市清水区鳥坂のラーメン店「鳥坂一元」
静岡市清水区における昨秋の台風15号と今回の大雨の比較
静岡市清水区における昨秋の台風15号と今回の大雨の比較
「高さ30センチくらいまで水が押し寄せた」と話す鈴木美之さん=5日午前、静岡市清水区鳥坂のラーメン店「鳥坂一元」
静岡市清水区における昨秋の台風15号と今回の大雨の比較


 「また大きな被害が出るのかな、と覚悟した」。今回、床下浸水の被害が集中した清水区鳥坂地区。半世紀続く老舗ラーメン店「鳥坂一元」の店主鈴木美之さん(58)は5日、振り返った。台風15号では1メートル80センチ浸水し、3週間の休業を余儀なくされた。今回は30センチ程度の浸水で、翌日も何とか営業できたという。
 鳥坂地区では周辺の理美容店も床上浸水し、営業を再開できたのは翌日の夕方だった。従業員の40代女性によると、近くの巴川支流の排水不良などが原因となり、最近十数年で4~5回は同様の被害が起きているという。
 清水区では台風15号で床上浸水3731棟、床下浸水1019棟を記録した。今回の大雨では床上浸水3棟、床下浸水は111棟だった。24時間降水量は今回の大雨が上回ったにもかかわらず、被害が抑えられたのはなぜか―。
 関係者が挙げるのは、今回は1時間で110ミリを超えるような短期的な集中豪雨がなかったこと▽まだ雨が降り続いていた2日夜に巴川河口の清水港が干潮を迎えたこと―の2点だ。
 気象庁は1時間降水量が110ミリ以上となった場合に記録的短時間大雨情報を発表し、国民に注意を促している。昨秋の台風15号では、静岡市の南部山間部で3回、平野部で2回の計5回、同情報を発表したが、今回は発表がゼロ。静岡地方気象台は「仮説だが、短時間に一気に降る雨の多寡が被害状況を分けた可能性がある」とする。
 また、ある市幹部は巴川河口の清水港の潮位にも注目する。台風15号では、雨が降り続いた9月24日午前4時過ぎに満潮を迎えたが、今回は逆に本格的な降雨終盤の6月2日午後10時半ごろ、清水港は干潮を迎えた。幹部は「今回は巴川と清水港が支流の水を吸い込むことができたのでは」とみる。

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