静岡人インタビュー「この人」 第69回全国展フォトコンテスト「日本の文化」部門で文部科学大臣賞を受賞した 松浦昭宏さん(島田市)

 受賞作は、農機具用の刃を作る鍛冶職人を捉えた組み写真「野鍛冶ひとすじ」。昨年は全部門最高賞の内閣総理大臣賞を受賞し、歴史ある全国公募展で2年連続上位入賞した。発表展が6月4日まで、東京都美術館で開かれている。薬学博士号を持ち、新薬や医療機器の文書作成に従事する。キヤノンフォトクラブ静岡の代表。70歳。

浦昭宏さん
浦昭宏さん

 ―受賞作への思いは。
 「高温の鉄を鍛錬し、放射状に火花が飛び散る瞬間を狙った。職人歴70年の熟練した技や機械類がひしめく工場など4枚を組み合わせた。鍛冶と聞くと刀が有名だが、昔から人々の暮らしを支えてきた農機具にも日本伝統の美しさを感じる。それらを形作る手、工具一つ一つに説得力があった。これまでも県内外の伝統工芸や祭りの担い手、大衆演劇の役者に引かれて作品づくりを行ってきた」
 ―写真との出合いは。
 「カメラ好きだった父の影響で子どもの頃からよくカメラに触れ、雑誌を眺めていた。本格的に始めたのは大学生の時。研究用の植物を採集するため山に登り、山岳写真に夢中になった。高山植物、昆虫などにもレンズを向けるようになった」
 ―心がけていることは。
 「人物の動き、物事の流れを一部始終収める記録写真ではなく、一瞬のアート性を引き出す。祭りは、準備段階の緊張感や片付けの余韻にも面白さがある。デジタルカメラで現像処理の幅が広がり、自分らしい表現を形にしやすくなった」
 ―今後の目標は。
 「まだ撮ってみたい伝統工芸の技や祭りが多くある。仲間との情報交換も刺激になり、評価を受けると足りないものが見えてくる。被写体の持つ強さ、存在感を表現していきたい」

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞