日軽金 漁師らに直接謝罪 土砂堆積続く雨畑ダム【サクラエビ異変 母なる富士川 未来につなぐ㊦】

日本軽金属の土砂撤去作業が始まる前の堆砂著しい雨畑ダム湖=2019年8月、山梨県早川町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から、写真部・久保田竜平)
日本軽金属の土砂撤去作業が始まる前の堆砂著しい雨畑ダム湖=2019年8月、山梨県早川町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から、写真部・久保田竜平)
日本軽金属により河道の確保策が進められている雨畑ダム上流の雨畑川=5月上旬、山梨県早川町
日本軽金属により河道の確保策が進められている雨畑ダム上流の雨畑川=5月上旬、山梨県早川町
堆砂の影響で河床が上昇、台風19号により浸水被害に見舞われた雨畑ダム上流の本村集落=2019年10月、山梨県早川町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から、写真部・久保田竜平)
堆砂の影響で河床が上昇、台風19号により浸水被害に見舞われた雨畑ダム上流の本村集落=2019年10月、山梨県早川町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から、写真部・久保田竜平)
日本軽金属の土砂撤去作業が始まる前の堆砂著しい雨畑ダム湖=2019年8月、山梨県早川町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から、写真部・久保田竜平)
日本軽金属により河道の確保策が進められている雨畑ダム上流の雨畑川=5月上旬、山梨県早川町
堆砂の影響で河床が上昇、台風19号により浸水被害に見舞われた雨畑ダム上流の本村集落=2019年10月、山梨県早川町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から、写真部・久保田竜平)

 サクラエビ漁師「アユは富士川に戻ってきたのか」
 日本軽金属幹部「河川の状況は当然注目している。(個体数は)感覚的なところでは、ここ1~2年で元に戻ったとは言えないが、改善されたと確認している」
 漁師「サクラエビの不漁の原因は何だと思うか」
 幹部「専門家が検証を重ねているのは存じ上げている。濁りについても全く無関係とは言えない」
 漁師「エビの成育がだめになった。エビが泥で育たなくなってしまった」
 幹部「・・・」

 3月16日午後、由比港漁協。ブルーの作業着に身を包んだ日軽金蒲原製造所(静岡市清水区)の執行役員佐野功和所長らの姿があった。2018年の秋漁で戦後初めて操業すらできず、自家水力発電用の同製造所放水路からの濁りが原因と指摘されてから初めての謝罪。約1時間非公開で行われた会議では、船主らから厳しい質問が飛んだ。
 会場で佐野所長らは「早川が一定の濁度を超えた場合取水制限する」「マイクロプラスチックの海への流出を抑える」などの約束をし、深々と頭を下げた。ただ、会場外での本紙の取材に対し、幹部らは「文書でください」とだけ述べ、足早に去った。
      ◇
 18年暮れ、エビ漁師たちは約40キロ上流で堆砂が進む日軽金雨畑ダム(山梨県早川町)を直接訪れ、濁りの発生源を確かめていた。国は19年8月、周辺住民に洪水被害をもたらす危険性から同社にダムの土砂撤去を行政指導した。現在、日軽金は約270億円をかけて20~24年度の5カ年計画で撤去作業を続ける。
 町中心部を貫く県道をひっきりなしに往来する大型ダンプ。大型連休中こそ見かけなかったが、平日にはリニア中央新幹線のトンネル掘削残土の運搬など、町によるとダンプカーが1日500~600往復する。
 「ここ数年は洪水もなく天候に助けられた。河床の掘削が進み、安心感が出てきた」。19年8、10月の台風で浸水被害を受けた、ダム上流の本村地区に住む男性(67)は話す。ただ、下流のダム堤体近くの掘削は追い付かず、県道が被災し孤立する可能性は残る。
 巨額の特別損失を計上した同社の経営体力を心配する声もあり、行政にダム撤去費用などの支援を期待する人もいる。男性は「毎年数十万立方メートル以上の土砂が新たにダムの中にたまる。日軽金という会社の設立自体、国策の面もあり、面倒を見てほしい」と訴える。
 国は昨年10月、同社が富士川水系に持つ複数の水力発電所で過去35年間に計約1億9千万立方メートルの不正取水があったと発表。一部では水利権許可期間を短縮するなど措置を講じたが、長年続けてきた国の監視体制に疑いの目を向ける流域住民は多い。山梨県南部町でアユのおとり店を経営する佐野保さん(78)は「行政はもっと主体的に富士川の河川環境に責任を持ってほしい」と訴え続ける。

 雨畑ダムの堆砂 質問主意書に対し政府が2021年5月に答弁した内容によると、総貯水容量1365万立方メートルの雨畑ダムは、20年11月時点で堆砂量1631万4千立方メートル、堆砂率(総貯水容量に対する堆砂量の割合)は120%近くに達した。日軽金は20~24年度に合計600万~700万立方メートルの堆砂を撤去する計画を立て作業中。毎年新たに上流から平均50万立方メートルの土砂が流入する。

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