「慎重な削孔」県境300メートルに JR、湧水対策で拡大 静岡県専門部会【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線トンネル工事を巡る大井川水問題について協議する静岡県有識者会議の地質構造・水資源専門部会が20日、県庁で開かれ、JR東海が山梨県から静岡県境に向かって削孔(さっこう)を始めた高速長尺先進ボーリングについて新たな湧水対策を示した。これまで「県境約100メートル」と示していた慎重な削孔を始める区間を「約300メートル」に拡大した上で、管理値を超える湧水量が1週間程度続いた場合はボーリングを終了すると説明した。

県境における高速長尺先進ボーリングに対する主な意見
県境における高速長尺先進ボーリングに対する主な意見

 山梨県内のボーリングでも静岡県内の地下水が引っ張られる形で流出するという県の懸念を踏まえて、JRが歩み寄る姿勢を見せた格好だが、森貴志副知事は会議後の取材に「県の懸念、疑問は残ったままだ」と述べ、湧水の全量返還などを引き続き求めるとした。
 JRは、県境から約250メートル区間に県内の地下水流出につながる断層帯があるとの県の指摘を受け、慎重な削孔区間を拡大した。10メートルあたり毎秒50リットルの湧水量管理値を設定し、管理値を超える状況が1週間程度続いた場合はボーリングを終了し、バルブを閉めて止水するとした。
 250メートル区間の断層帯で県内の地下水が流出する懸念については専門部会委員の間でも意見が分かれた。森下祐一部会長は県内の工事に着手していない現時点でボーリングを行う必要性はないとの考えを改めて示した。
 (政治部・尾原崇也、大沼雄大)

田代ダム案「水利権に影響与えぬよう」 東電意向が協議の前提
 JR東海の沢田尚夫中央新幹線推進本部副本部長は20日、リニア中央新幹線トンネル工事中の湧水の県外流出対策として県側に示している田代ダム取水抑制案について、ダムを管理する東京電力リニューアブルパワー(東電RP)との協議を始める前提条件に「同社の水利権に影響を与えない」ことなどを求めているのは東電RPの意向だと明らかにした。県有識者会議の専門部会後の取材で答えた。
 東電RPが田代ダム案の協議開始の前提条件としているのは水利権の関係のほか、「方策の実施は工事期間中に限定」の2点。沢田副本部長は流域市町などがこの条件を認めない場合、「いきなり(東電RPとの協議が)立ち消えになるのか、継続するのかは(判断が)難しい」としつつも「東電は大変気にしている」と述べ、市町などに理解を求めていくとした。
 県は20日、JRから田代ダム案についての説明を受ける場として大井川の利水団体や流域市町で構成する大井川利水関係協議会の会合を27日に県庁で開催すると発表した。

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