パフォーマンス おまちで熱く 3月11、12日 静岡でフェスティバル【NEXTラボ】

 静岡市の中心市街地を舞台にした、パフォーマンス(身体を媒介にした芸術表現)の祭典「アワーフェスティバルシズオカ」(市文化・クリエイティブ産業振興センター主催)が11、12の両日に開かれる。今年で2回目。プロとアマチュアの垣根を超えて展開するイベントの見どころ、まちづくりとの関連性を探った。(遠藤竜哉、橋爪充、山本淳樹)

2022年3月の第1回アワーフェスティバル。野外公演を多くの市民が楽しんだ=静岡市葵区
2022年3月の第1回アワーフェスティバル。野外公演を多くの市民が楽しんだ=静岡市葵区


柚木康裕ディレクター 才能ある市民に活躍の場
 アワーフェスティバルシズオカの柚木康裕ディレクター(57)は「静岡市を全国的なパフォーマーの創作活動の拠点にしたい」と話す。企画に込めた思いを聞いた。

パフォーマーの創作拠点として静岡市のポテンシャルを強調する柚木康裕ディレクター=2月下旬、同市葵区

 -コンセプトは。
 「市民パフォーマーが参加し、市民自らつくる祭典。前身の『七間町ハプニング』は、中心市街地の中でも特に七間町のにぎわいづくりを主眼とし、招いたプロやセミプロが出演した。市民の主体性や自治を醸成する狙いから、新たな企画に移行し、名称変更した」
 -背景には何が。
 「市民の中には、普段は仕事をしているが高い技術や情熱を持っている方々がいる。活躍の場を提供し、後押しすることが重要だ。フェスには多くの市民パフォーマーが出演する。できる限りオープンな場で披露し、パフォーマンスを市民に“開く”ことで、新たなつながりが芽生えることを期待する」
 -才能ある市民とは。
 「例えば、一輪車パフォーマンスの山本夏夢さんは20代で民間企業に勤めながら世界的に活躍している。面白い働き方の実例、これからの企業の在り方のモデルケースだと感じる。呉服町でのダンスパレードを演出するおかむられなさん、ダンス劇に出演する市民ダンサーの宮城嶋静加さん、山口瑠菜さんはいずれも20代の静岡市民。このほか公募型のステージにも多くの市民が出演する」
 -将来の方向性は。
 「文化芸術に対する静岡市のポテンシャルはかなりあると思っている。地理、気候など作品を創作する環境として恵まれているからだ。練習場や宿泊施設などを整えれば興味を持つパフォーマーは必ずいる。やる気も才能もある若者が、静岡にいながら、充実した創作活動ができれば市の魅力になる。最終的にはそこにつなげたい」

静岡市まちは劇場推進課5年 「見る」「やる」で自己実現を
 アワーフェスティバルシズオカは静岡市の「まちは劇場」プロジェクトの公式イベントとして位置付けられる。同プロジェクトを推進する市の「まちは劇場推進課」は、2023年3月末で設置から5年になる。気軽に文化芸術に触れられる公共空間づくりを目指し、さまざまな施策を実現させてきた。文化のみならず、経済、社会の分野も含めた幅広い課題解決を図る。
 
ゴールデンウイークの開催が定着した演劇とダンスの祭典「ストレンジシード静岡」。山田裕幸さん作・演出の劇団渡辺「芝生の上のさかさま姫」=2022年5月、静岡市葵区の駿府城公園

 プロジェクトは1992年初開催の「大道芸ワールドカップ」の人気定着を受け、市第3次総合計画(2015~22年度)に「生活の質を高める仕組み」として掲げられた。同課の後藤義正まちは劇場推進係長は「創造活動に市民を巻き込んでいく。文化芸術を『見る』『やる』の両面で自己実現を図る」と説明する。「核になる大規模イベント」「若者」「地域の特産品」を掛け合わせ、効果を発揮させるという。
 公式イベントの一覧には県舞台芸術センター(SPAC)の「ふじのくに→←せかい演劇祭」、市が主催するパフォーミングアーツのイベント「ストレンジシード静岡」など大規模な催しが並ぶ。市内各所には10カ所の「まちは劇場パフォーマンススポット」を設け、市が公認したパフォーマーが週末を中心に妙技を披露する。市内2カ所にはストリートピアノも設置した。
 市内でアートに接する機会が増える一方、「まちは劇場」の認知度は高いとは言えない。20年度調査では、市民の約8割がプロジェクトを知らなかった。
 市は新たな取り組みとして、市民参加型舞台公演「ラウドヒル計画」を通じて育成した市民俳優約50人から有志を募り、市の文化施設で演じてもらう計画を進めている。観光振興も視野に入れ、プロジェクトの浸透を図る。

高レベルの技、間近で 一輪車パフォーマンス
 国内外の一輪車競技大会で輝かしい実績を誇る静岡城内一輪車クラブ。しかし、地元・静岡市のまちなかでその技を披露する機会は少なかった。「エンターテインメントとしての一輪車を知ってほしい」。演出を担当し、自らも出演する山本夏夢さん(25)=同市駿河区=は、そんな思いを込める。
 
当日は愛用の一輪車でパフォーマンスをする山本夏夢さん=2月下旬、静岡市駿河区

 同クラブの演舞に魅せられて小学1年で練習を始め、その後はほぼ一輪車漬け。世界的なパフォーマンス集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」のステージに出演するなど、活動の幅を広げた。3月からは勤め先を2年間休職し、海外での活動に力を入れる。
 大会出場で欧米を訪れるうち「一輪車が文化、芸術として根付いている」と思うようになった。一方、地元では、就職や進学を機に一輪車に乗らなくなる人も多い。「静岡ではエンタメが産業になりきれていない。一輪車のプロとしての道を歩めるようにしたい」
静岡城内一輪車クラブ

 演技、構成、振り付け―。新しい表現を常に模索する中、多彩なパフォーマーが一堂に会するイベントでインスピレーションを得ることも期待する。「エンタメでもっと人を呼び込めるはず。一緒に活動するパフォーマーと力を合わせたら、静岡のまちづくりに貢献できるのでは」
 「一輪車パフォーマンス」には、クラブから経験豊かな4人に加えて小学生のメンバーも出演する。11、12の両日、午後0時15分と2時半から、同市葵区の青葉シンボルロードで。各15分。

テーマパークダンスパレード
 静岡市在住のダンサー・振付家おかむられなさんが演出する「テーマパークダンスパレード」は、おかむらさんらに、子どもから大人までオーディションを通過した市民を加えた計10人が、同市葵区の呉服町通りをパレードする。
 テーマパークダンスは、テーマパークのパレードやショーで披露されるダンス。バレエやジャズダンスをベースに、エンターテインメント性をプラスしている。オリジナル制作によるパレードとしては市内初の試みという。今回のために書き下ろした曲を使用する。
 11、12の両日、午前11時半、午後1時15分、3時15分から。各30分。

ダンス劇in静岡 ワーク・イン・プログレス
 12日午後4時から、静岡市葵区の市文化・クリエイティブ産業振興センター(CCC)多目的室で行われる「ダンス劇in静岡 ワーク・イン・プログレス」では、宮城嶋静加さんや山口瑠菜さんら20代の市民ダンサーが出演する。
 ダンス劇は、ダンスに見えない動きを多用したり語りを繰り広げたりしながら行う身体表現。宮城嶋さんらが、ダンス劇作家熊谷拓明さん作・演出の「ささやかに鳴く。」の一部を上演する。
 シェアハウスで暮らす3人の女性の生き方が交錯する物語。上演に先立ち、稽古を公開する。

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