大自在(2月4日)立春大吉

 取材・出稿作業がデジタル化して、もはや死語になったと言える写真の「裏焼き」。フィルムをプリント、スキャンする際に裏表を間違えると左右が逆の画像になる。撮影者と処理者が違う時は要注意だった。
 2016年ノーベル物理学賞発表で、受賞3氏が見栄え良く並ぶよう、主催者が左端で左向きの人物を右向きに反転させた写真を公表。日本の感覚では信じられないと通信社記者がコラムに書いていた。
 交通安全運動や特産品販売イベントなどの取材で、のぼり旗を写し込もうとして気を使ったことを思い出す。風向きや固定の仕方で裏面がこちらを向いていることがよくあった。
 暦の上では春である。「立春大吉」。門や玄関に掲げるこの文字は左右対称で、裏から見ても立春大吉。いちど入って来た鬼が振り返って見て、まだ入っていないと勘違いして出て行くという厄払いの意味もあるとか。
 左右対称な物や人に安定や美しさなど好感を持つことを心理学でシンメトリー効果と言う。「はね」「はらい」などに目をつぶれば、左右対称の漢字は次々に浮かぶ。昨日の本欄で取り上げた大豆。ちょうど1年前、冬季五輪が開幕した北京。ことし世界遺産登録10年の富士山は姿も、ほぼ対称。
 氏名漢字が左右対称な人も知人に何人か。シンメトリー効果を意識しての用字なのだろうか。戸籍氏名の読み仮名について法改正に向けた要綱案がまとまり、キラキラネームは「一般的な読み」に制限されるが、柔軟性もあるようだ。用字も読みも、命名には愛情とともに責任が伴う。

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