記者コラム「清流」 指針に忠実 現場の思考停止

 新型コロナの流行以来、省庁や団体が作成した感染対策ガイドライン(指針)は約200ある。その一つ、感染死者の葬儀指針は一度も改訂されていない。接触感染はほぼ起きないと分かってもなお、接触感染を防ぐためとして遺体を納体袋に入れるよう推奨するなどしている。
 指針に法的拘束力はない。目安や参考に過ぎず、現場の判断でいかようにも運用できる。しかし指針に関係する省庁と市町、病院、葬儀社に取材すると、ほとんどが指針に忠実に従い、時には明記された以上に別れの機会を過剰に制限し続けていると知った。
 省庁はようやく指針改訂を表明した。改訂の遅さも問題だが、状況の変化を把握せず、指針にむやみに従い続ける現場は思考停止しているし、遺族の視点に立っていない。
 (社会部・伊豆田有希)

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