“海のゆりかご” アマモ保全へ NPO、沼津沖で種子植栽

 沼津市西浦地区で、地元のダイバーや漁業関係者でつくるNPO法人「海プラスSOU」が海草のアマモの保全活動に取り組んでいる。多くの水生生物のすみかや産卵場所になる「海のゆりかご」とも呼ばれるアマモは同地区で減っているという。杉山善一代表(52)は「魚の種類や漁獲量の減少の一因とも考えられるので、豊かな海を取り戻すためにできることをしたい」と話す。

アマモの種子を採取する関係者=6月上旬、沼津市西浦平沢沖
アマモの種子を採取する関係者=6月上旬、沼津市西浦平沢沖
アマモ場に隠すように産み付けられたアオリイカの卵塊=6月上旬、沼津市西浦平沢沖
アマモ場に隠すように産み付けられたアオリイカの卵塊=6月上旬、沼津市西浦平沢沖
アマモの種子を採取する関係者=6月上旬、沼津市西浦平沢沖
アマモ場に隠すように産み付けられたアオリイカの卵塊=6月上旬、沼津市西浦平沢沖


 プロジェクトの発起人の一人で、西浦江梨地区で漁業を営む小林大介さん(41)は「20年前と比べマダイやサバの漁獲量は減っている。ヤリイカは全く取れなくなった」と危機感を抱く。同団体によると、西浦地区では海水浴場や港湾としての整備、大雨による土砂流入などの影響でアマモ場が少なくなった。
 小林さんは「漁師にとっては漁船のスクリューに絡むやっかいな存在でもあるが、共存のための工夫はできる。取り返しのつかない状況になる前に、今できることはしたい」と話す。
 保全プロジェクトは杉山さんと小林さんを中心に2015年から始動した。比較的規模の大きなアマモ場で種子を採取し、減少が顕著な海域に種子を植栽する取り組み。18年からはNPOとして活動を本格化した。江梨港周辺などに植えた種の生育は順調だったが、20年の大雨で海に土砂が流入したため、昨年度からは場所を変えて生育に適した場所を探っている。
 6月初旬には平沢港沖で本年度の種子採取をした。海洋生物の生息環境を調べる地元の伊豆・三津シーパラダイスのスタッフも参加し、約5万粒を採取できたという。11月ごろに西浦足保沖や大瀬崎周辺の海底に植える。
 県内では浜名湖でもアマモの減少による生態系や水産資源への影響が懸念されている。県水産技術研究所浜名湖分場の鷲山裕史研究科長は「植栽に当たっては水温の変化や地形、透明度など環境状況を調べることが重要」と指摘する。

 <メモ>アマモ 海岸近くの浅い砂泥に生育する多年生の海草。葉の長さは20~100センチ。光合成で酸素を作ったり、水中の汚れを吸収したりする役割を果たす。群生するアマモ場は水流が穏やかで隠れる場所になり、餌になる小さな生き物も多いため、魚やエビ、貝など多種多様な水生生物が集まる。

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