富士で民間の定住推進組織 移住者、活躍するまちへ【湧水】

 コロナ禍で地方の暮らしに目を向ける人が増え、移住定住促進施策は地方の自治体間で競争の様相を呈してきた。富士市では市の移住定住推進事業と連動して、仕事を通して移住者と地域の接点づくりを進める移住者らの組織が発足した。行政の促進策と、新天地での生活を充実させる民間の取り組みがかみ合い、移住者増加につながることを期待したい。
 富士市は、富士山と駿河湾を望む恵まれた自然環境と首都圏まで新幹線で約1時間でアクセスできる好立地にある。移住費用の軽減を図る市補助制度などを利用した県外からの移住者は2021年度が162人と、市町別でここ数年、上位に入る。
 市は補助制度のほかにも、暮らしの想像を膨らませてもらおうと、先輩移住者と交流できる「体験ツアー」に取り組む。2019年度に始まった「富士このみスタイル事業」では、市内の生活になじめるように、移住者同士の情報交換会などで仲間づくりを後押しする。
 本年度は市の企画などで知り合った移住者やUターン経験者の30~40代の女性を中心に「富士このみスタイル推進協議会(このみ会)」が発足。主にウェブ記事作成など年間数件を企業や行政から受注して会員で分け合うワークシェアを実践する計画だ。家事や子育ての時間を確保しつつ柔軟に働ける仕組みでの運営を目指す。
 ウェブ制作の他にも地元企業からさまざまな事業を受注できれば、仕事を通して地域とつながりがより深まる。企業側も市外から流入した新鮮な視点から刺激や新しい発見が得られるだろう。
 7月からの本格受注に向けてウェブページ制作の研修を受ける会員からは「同じ境遇の仲間がいて自信がついた」との言葉があった。仕事を通した地域との交流が孤独感の解消や暮らしに充実感を生み、定住につながることを願っている。
 市内には企業への転勤で一時的に市内で暮らす人も多い。新天地の生活が充実し、誰もが活躍できる環境が整ったとき、富士市の魅力は一段と高まるはずだ。

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