東北の被災商店街、歩む復興 「まちなか再生」認定10年

 東日本大震災で被災した商店街について岩手、宮城、福島の各県の自治体が申請し、国に認定された「まちなか再生計画」に基づく13施設のうち8施設が、持続的運営が可能だと現状を前向きに捉えていることが24日、共同通信の調査で分かった。想定より来客者数が多いとしたのも7施設あった。初の認定から今年で10年。市街地の復興の担い手として軌道に乗りつつある施設が多い状況が浮き彫りになった。

宮城県南三陸町の「南三陸さんさん商店街」=11日
宮城県南三陸町の「南三陸さんさん商店街」=11日
岩手県陸前高田市の「陸前高田発酵パークCAMOCY」=2020年12月
岩手県陸前高田市の「陸前高田発酵パークCAMOCY」=2020年12月
宮城県南三陸町の「南三陸さんさん商店街」=11日
岩手県陸前高田市の「陸前高田発酵パークCAMOCY」=2020年12月

 一方、持続的運営に不安があるとしたのは3、どちらとも言えないとしたのは2。課題を複数回答で問うと「地域の人口減」と「事業者の高齢化に伴う事業継承」が、それぞれ最多の7だった。能登半島地震や今後の災害の被災地で利点を生かせるよう、専門家から国による検証を求める声が出ている。
 同計画は、街の中心に機能を集める「コンパクトシティー」の考えを踏まえ、自治体と連携し、商業集積により、にぎわいの再生を図る。市町村や施設運営を担う「まちづくり会社」が、公共施設の整備と合わせ、消費動向を検討し、計画を作成。国は外部評価委員会を置き、認定した場合、施設整備費を補助する。
 対象は岩手、宮城、福島の42市町村で、うち申請し、認定されたのは10市町13施設。初認定は2014年12月の宮城県女川町で、翌年に「シーパルピア女川」が開業した。仮設時代から全国的に有名になった同県南三陸町の「南三陸さんさん商店街」も17年に再建を果たした。両施設は持続的運営が可能で、想定より来客が多いと回答した。
 同計画で整備したメリットを複数回答で問うと「自治体などとの連携」が10、「補助金の活用」が9と多かった。デメリットは「特にない」が8で、「計画の策定・実施まで時間がかかった」などが3だった。
 23年11月に補助金の最後の公募が締め切られた。調査は今年2月、13施設を運営する、10市町11のまちづくり会社を対象に行った。

 流通科学大の長坂泰之教授(商業まちづくり)の話 「まちなか再生計画」による整備の特徴は、中心市街地の機能の集約化にあった。個別事業者がバラバラに再建する原形復旧に終始した阪神大震災時と比して、より集客効果が高く、コストを抑えるといった収益性も重視した。現状を前向きに捉えている施設が多いのは計画が功を奏したと言えるが、今後の人口減少や高齢化を見据え、国による長期的な検証が必要だ。予算や災害規模の問題から、国が同様の支援策を今後も行うかどうかは不透明だが、原形復旧から復興にかじを切った意味は大きく、今後も利点を生かせるはずだ。

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