ゴールデンカムイ実写版に期待 アイヌ文化の「入り口に」

 アイヌ民族の文化を描いた人気漫画「ゴールデンカムイ」が実写化され、1月から全国公開された。明治時代の北海道を舞台に元軍人の青年とアイヌの少女が金塊を探すエンターテインメント作で、言語や食文化も紹介。明治政府による迫害や差別といった負の側面には踏み込んでいないが、映画が「入り口」となり歴史への理解も進むことに期待が高まっている。
 全31巻で累計2700万部を突破した原作は、アイヌの料理や生活習慣も生き生きと描き、北海道では「聖地巡礼」がブームに。映画も公開3日間で35万人を動員した。
 北海道アイヌ協会の事務局長を務める貝澤和明さんは、個人の感想としつつ「フィクションとして、より幅広い人に楽しんでもらえる映画。続編があるなら、お客さんが楽しみながら史実に基づいたアイヌ文化を知ってくれるような作品を期待したい」と歓迎する。
 映画は明治政府がアイヌを「旧土人」と呼んで和人と差別したり、伝統的な狩猟や漁労を禁じたりした迫害の歴史には、あまり触れていない。
 国連大サステイナビリティ高等研究所のスニータ・スブラマニアン研究員は、少数民族を題材にしたエンターテインメント作品を「文化への敬意を忘れなければ、世代間のコミュニケーションが生まれる素晴らしいツールだ」と評価。「たとえ負の歴史が十分に伝えきれなかったとしても、物語に共感した人はその背景を調べようとするだろう」と分析した。
 一方、同志社大大学院の菅野優香教授(映画研究)は配役に関し、アイヌでない人がアイヌを演じることは「長い間、少数者が自らのアイデンティティーやコミュニティーを表現する機会が与えられなかった映画の歴史をほうふつとさせる。文化の魅力を盛り込んだ映画だからこそ、もっと多くのアイヌに出演してほしかった」と指摘した。

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