アイヌ民族に「謝罪」表明 文化人類学会、遺骨持ち出し研究

 日本文化人類学会は2日までに、アイヌ民族の遺骨の不適切な取り扱いが指摘されてきた過去の学術研究について「真摯に反省し、心から謝罪の意を表明する」とする声明を発表した。北海道アイヌ協会によると、国内外の学会が研究に関してアイヌ民族に謝罪するのは初めて。

秋サケを迎える伝統儀式「アシリチェプノミ」を行うアイヌ民族団体のメンバーら=2022年9月、北海道浦幌町
秋サケを迎える伝統儀式「アシリチェプノミ」を行うアイヌ民族団体のメンバーら=2022年9月、北海道浦幌町

 アイヌ研究を巡っては、19世紀以降に遺骨が同意なく墓地から持ち出されるなど、民族独自の宗教観への配慮を欠いたとして、2012年以降、遺骨の返還を求める訴訟が相次いだ。協会関係者は声明について「一歩も二歩も前進したと思う。他の学会も足並みをそろえるか注視したい」と話した。
 声明は1日付。「過去に犯した研究至上主義の過ち」をたえず自省すると言及した上で、先住民族や少数民族が直面する課題や差別問題について「公正な認識をもち、相互理解を深めていく決意」を表明した。
 文化人類学会の前身の日本民族学会は1989年、アイヌ民族の意志や希望を研究に反映する姿勢などが「極めて不十分であった」と反省する見解を発表していた。
 声明は、この見解の後、アイヌ民族と協働する研究の試みが生まれたが、研究成果の共有は不十分で、アイヌ民族から日本社会への発信に「学会として支持する姿勢で向きあえなかった」と言及。見解の精神が「学会活動で十分に生かされず、アイヌ民族の不信感を招き、誠に遺憾」とした。

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