在日米軍基地、攻撃に脆弱 中国ミサイル、連携対処を

 米下院議長の台湾訪問に反発した中国軍が演習で日本近海に弾道ミサイルを撃ち込み、日本や在日米軍が射程内にある現実を示してから8月4日で1年。大規模な基地は攻撃に弱いため、米空軍は対策を進めている。米空軍中国航空宇宙研究所のデレク・ソレン上席研究員は日本の自衛隊と連携して備えることが急務だと指摘した。(ワシントン共同=武井徹)

インタビューに応じる米空軍中国航空宇宙研究所のデレク・ソレン上席研究員(共同)
インタビューに応じる米空軍中国航空宇宙研究所のデレク・ソレン上席研究員(共同)

 ―中国は軍拡を続け、脅威が増している。
 「沖縄の嘉手納基地をはじめとして、日本にある基地は全て中国がミサイルで狙える。既存の航空基地の難点は、大量の燃料を備蓄する必要があることや、作戦機の補給や整備を担う支援要員を置くために施設が大きくなりがちなことだ。機能は充実しているが攻撃には脆弱な側面がある。基地が破壊されて作戦機が離着陸できなくなれば、航空戦力は意味を持たない」
 ―対策は。
 「部隊を分散させること、そして敏しょう性を高めることだ。さまざまな場所に展開しながら、頻繁に移動することが必要になる。攻撃を受けるリスクを減らし、残存性を高めて作戦を続ける能力を維持するためだ。特定の基地とは別の拠点を確保し、作戦機の再武装や燃料補給をして戦闘に戻れるようにしておかなければならない。動きを予測されにくくし、目標を増やすことで敵に負担を強いる狙いもある。実現を目指して米空軍は近年、『機敏な戦闘展開(ACE)』と呼ぶ構想の検証を進めている」
 ―日本での課題は。
 「別の拠点を確保しなければならないため、日本の政府や自治体の協力が絶対的に必要だ。ACEを成功させるには自衛隊との相互運用性も鍵となる。6月に嘉手納基地で実施された訓練には航空自衛隊も参加した」
 ―中国の動向は。
 「米空軍に倣って独自のACE構想の導入を進めている。中国の強みは、作戦地域へのアクセスを同盟国に頼る必要がないことだ。戦闘支援で民間団体に協力を強制することもできる。2021年に中国軍が実施した演習には、民間の建設会社や航空機メーカーが加わった。民間の輸送能力を自由に活用できるなど選択肢が多いのが強みだ」
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 1981年生まれ。カリフォルニア州出身。立命館アジア太平洋大(大分県別府市)卒業。ノーウィッチ大大学院(バーモント州)で軍事史の修士号を取得した。元米陸軍情報専門家。2019年10月から現職。

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