​【浜松市美術館の特別展「足立美術館展-横山大観と近代日本画-」】日本画のスターが大集合。「オールタイムベスト」的な顔ぶれの中に見つけた一番星

静岡県のアートやカルチャーに関するコラム。今回は4月4日に浜松市中央区の浜松市美術館で開幕した特別展「足立美術館展-横山大観と近代日本画-」を題材に。
(写真・文=論説委員・橋爪充)

足立美術館は島根県安来市にある。実業家の足立全康(1899~1990年)のコレクションをもとにして、1970年に開館した。浜松工出身の中根金作(1917~1995年)が中心となって造成された広大な日本庭園でも知られる。

個人的な話で恐縮だが、2月下旬に山陰地方を訪れた際、なんとかしてこの美術館に足を運びたかったのだが休館中でかなわなかった。4月の特別展を知っていたので、浜松市美術館の学芸員との雑談の中で「庭も持ってきてください」と冗談交じりに言ったのだった。

ところが。驚くことに今回展はそんなニーズにもかなり応えるものになっている。映像や写真パネルをふんだんに使い、四季の移ろいによって変化する大庭園の表情をあますことなく伝えてくれる。なだらかな曲線で構成された植栽と白砂、たおやかな水の流れとともに心地よい時間を過ごした。

開幕翌日4月5日の午前に入館したが、多くの人が訪れていた。横山大観を筆頭に富岡鉄斎、竹内栖鳳、上村松園、橋本関雪、川合玉堂、菱田春草、鏑木清方、今村紫紅、小林古径、川端龍子…。きら星のような日本画家の名前がこれだけ並ぶ展覧会も珍しい。音楽の世界で言うところの「オールタイムベスト」的な顔ぶれだ。

大きな屏風作品の前で圧倒されたような表情を浮かべる観覧者が多い。威風堂々の富士山を描いた横山大観『神州第一峰』、明らかにわざとど真ん中にアラビックな水差しを配した橋本関雪『訪隠図』、明度の高い緑の草木が画面を覆う榊原紫峰『青梅』などは皆さん、かなり滞留時間が長かった。

個人的には西村五雲(1877~1938年)という未知の画家との出会いに感謝したくなった。昨年は静岡県立美術館で石崎光瑤、静岡市美術館で小野竹喬という竹内栖鳳門下の二人の個展があったが、西村も同門である。今回展には30代後半から病気がちだったという彼の『凍夜』『寒梅』が出ていて、どちらも構図や動物(『凍夜』は犬、『寒梅』はミミズク)の質感が素晴らしい。

『凍夜』は月の下、こちらに尻を向けて振り向く犬を描いている。じわりと心に染み入る寂寥感がある。犬が抱える寂しさ、もの悲しさをここまで共有できる絵画は、見たことがない。しばし絵の前で足を止め、作者の感受性の豊かさに思いをはせた。

<DATA>
■浜松市美術館「足立美術館展-横山大観と近代日本画-」
会期:5月17日(日)まで
休館日:毎週月曜、ただし5月4日(月・休)は開館。5月7日(木)は休館
開館時間:午前9時半~午後5時
入場料(当日):一般1800円、高校生・大学生・専門学校生・70歳以上1000円、小・中学生無料

静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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