
1986年9月の創刊から数えて、今回が節目の40号。評論、詩、俳句、短歌、小説を包摂した総合文芸誌を地方発で発行し続ける意義は大きく、その過程の山あり谷ありも察するに余りある。編集担当の竹腰幸夫さんが後記で、毎月の研究例会の成果を強調している。温故知新の気風が、表現の清新さと高潔さ、質の高さを維持してきたのだろう。
今号も「招待席」と題して、静岡市や藤枝市の高校生3人(田島実織さん、堀内南海江さん、齋藤日菜さん)の短歌を掲載している。若者の時間軸とその周辺の風景を鮮やかに伝える。
「コラージュ」のページでは竹腰さん、武士俣勝司さん、多摩宗介さん、小長谷建夫さん、渡辺健一さん、田中芳子さん、竹内凱子さんの同人6人が「坂」と題した掌編を寄せている。それぞれが700文字程度。随筆、結末がある短編小説が多いが、長編小説の導入部分として受け取れる作品もあって、ユニークだ。
こうした試みは時に教育の現場でも行われるが、人生経験豊富な書き手たちの技巧とアイデアを盛り込んだ作品群をサッサッと次々読むのは、たいへん楽しい。個人的には「暗闇坂」を描いた渡辺さんの怪談に、特に引かれた。
これに呼応するように、小川国夫研究で知られる文筆家山本恵一郎さんの小説「闇の誘惑」も坂から始まる。砂浜に通じる坂を下りてくるかつての同級生。秀才だった彼は医者になり、36歳で恐ろしい犯罪の嫌疑をかけられる。彼は果たして実行犯なのか。
明らかに「導入」で終わっている本作は、解析しにくい心理状態の同級生を見つめるわたしの戸惑いが読者を巻き込む。子ども時代の同級生の残酷な所業には、心底ぞっとさせられる。
小説家の岩崎芳生さんが深草凡名義で寄せた句も心に染みる。老境を受け入れながらも、暮らしの隅々に目を凝らす姿に打たれる。
杖つきの影法師ぽつり虫の夜
(は)






































































