3月18日に出版された世界的なレストランガイドブック『ゴ・エ・ミヨ』。2025年も多くの静岡のレストランが掲載されましたが、17日、都内で行われた授賞式で静岡県焼津市の日本料理人が快挙を成し遂げました。

今、この風味と最高の鮮度・食感を求めて国内外の美食家たちが焼津を訪れます。
独自の世界を築き、日本料理界期待の星に贈られる「明日のグランシェフ賞」に選ばれたのは、焼津に店を構える「茶懐石温石」の杉山乃互さんです。
<「茶懐石温石」杉山乃互さん>
「誰も認めてくれなかった時にサスエ前田の前田尚毅さん、手を差し伸べていただきありがとうございます。前田さんの灯してくれた希望は次の世代にもつなげていきます」
杉山さんの成長をずっと支えてきたのが、国内外の有名シェフから魚の目利きと仕立てに絶大な信頼を得ている静岡県焼津市の「サスエ前田魚店」の前田尚毅さんです。
<杉山さん>
「焼津でとれた鯵の大根巻きでございます。表面を軽く酢漬けした大根でくるっと巻きましてネギとゴマ、米麹ですね、中に入っています。今の時期、脂がすごくのっているので酢漬けした大根とすごく相性がいい。冬の鯵の方が脂が多いのでこのような仕立てにしました」

<客>
「食材の深みというか、同じ食材でも自分自身が今まで出合ったことのないような 表情を見せてくれるというか」
<杉山さん>
「焼津で獲れた鰆です。抜群の。前田さんの熱意に応えて漁師さんが船上で締めた特別な鰆です」
杉山さんは、前田さんの仕立てた魚と出合って、料理に対する向き合い方が変わっていきました。
<杉山さん>
「鮮度の良さが風味に直結していると思い始めて素材を生かした料理に変わった」
高校卒業後、東京の茶懐石の名店で修業。焼津に戻ると、先代の父親から徐々に料理を任されるようになりました。
「温石」はこれまで個室メインでしたが、店を継いでからは鮮度抜群の素材を目の前で料理し、すぐに提供できるように、7年前にカウンター形式にリニューアルしました。

<杉山さん>
「けさ、焼津でとれたブリ。素晴らしいブリが焼津でもあがります。確かに日本海の方がブリたくさんとれますけど、こっちであがるブリは一本一本に対してすごく丁寧な処理がなされていますんで」
最高の食材に、料理人が絶妙な火入れをします。
<杉山さん>
「ちょっと温度を上げた方がおいしい。血合いのところは落とさずに風味は鮮度に直結している」
この日のお客さんは、すべて静岡県民でした。焼津で獲れたブリの鮮度と調理法に、みな驚きを隠せません。
<客>
「経験したことのないような味というか仕立てというか。まさか静岡で寒ブリがここまでおいしくいただけるとは」
鮮度の高い魚を調理でさらにおいしくするために、杉山さんは今年に入って変えたものがあります。
<杉山さん>
「尚毅さんの魚は保水性があるから表面を乾かしたくない」
炭を変えて、さらにジューシーな状態に仕上げた看板メニューの「金目鯛の鱗焼き」。

<客>
「ジューシーになった気がする」
「静岡の食材がこんなにおいしいなんて来たときは思わなかった。こちらに来させていただいてから静岡の良さを感じている」
「焼津でたくさんの種類の魚がとれることを知らなかった」
「鮮度やこだわりがないとおいしくいただけないということを改めて感じた」
魚の個性や鮮度の良さが生きるような料理を常に意識して、多くの美食家たちから人気を集めるようになった焼津の名店「温石」。

<杉山さん>
「尚毅さんが仕立ててくださる最高な魚があって、存分に生かせるような料理を、焼津は最高だといっていただけるようなレストランをつくっていきたい」