3月12日は春闘の集中回答日です。私たちの生活に直結する賃上げについて、2024年に続き、2025年も大企業は「満額」回答が相次ぎました。一方、出遅れが指摘されていた中小企業ですが、ここにきて賃上げの兆しが見え始めています。
3月12日、労働組合のホワイトボードに書き込まれたのは景気のいい数字。春闘の集中回答日で、大企業は軒並み労働組合の要求に対し、満額、またはそれを上回る賃上げを提示したのです。
トヨタ自動車は5年連続となる満額回答でした。静岡県磐田市に本社を置くヤマハ発動機は、労働組合の要求に近い1万9400円の賃上げとなりました。一方、2025年の春闘で焦点となっているのが、大企業と中小企業の「賃上げ格差」の是正です。
2024年の賃上げ率は大企業が5%台なのに対し、中小企業は3%台でした。
・大手企業平均5.58%(経団連集計)
・中小企業平均3.62%(日本商工会議所集計)
この格差を縮める中小企業が静岡県内で出始めています。
浜松市の自動車部品メーカー「国本工業」は、ロボットを駆使したパイプ加工で高い技術を誇る従業員63人の中小企業です。この春、2024年に続き思い切った賃上げに踏み切ることを決めました。
<国本工業 国本賢治社長>
「できる限り春闘の中小企業の目標に達成できるように考えています」
労働組合をまとめる連合は、2025年の春闘で中小企業に対して6%以上の賃上げを目標に掲げています。
高いハードルを越える賃上げに踏み切った理由は、物価の上昇です。
<国本社長>
「スーパーマーケットに行くと野菜の値段が高くなっていたり、ガソリンスタンドでガソリンが高くなっている。このままだと弊社の社員が今の生活水準を落とさなければいけないという危機感から」
人材の確保が難しい中小企業が、既存の社員のモチベーションと会社のブランド力を上げるために、賃上げは欠かせない要素と判断。
国本工業では、社員が仕事の改善点を提案する仕組みを導入し、効率化で削ったコストを社員に還元するというサイクルを生み出しました。
<国本社長>
「将来への投資という意味で、人材にお金を費やしていく形ですね」
稼げる会社になるため、最大の課題ともいえる商品の値上げ=価格転嫁も、ようやく明るい兆しが見えてきたと話します。
<国本社長>
「おかげさまでお付き合いしているお客様には、しっかり部品に価格転嫁させて頂いている。弊社も協力会社にそれを受けて価格転嫁している」
経済の専門家は、中小企業の活性化は大企業にもメリットがあると話します。
<静岡経済研究所 望月毅主席研究員>
「中小企業が事業を継続できる環境、それが大企業にとっても必要だと思いますので、中小企業が賃上げできるような水準まで取引条件、調達仕入れ価格を引き上げるとか、中小企業にもメリットがあるような取引環境を作っていく、それが大企業にとっても生き残りのカギになる」
ただ、すべての企業で賃上げが達成されたわけではなく、物価は上がり続けているため、景気が良くなるためにはさらなる賃上げの広がりが必要とされます。