荒茶の生産量で静岡県が初めて2位に転落したことを受け、静岡県内の茶農家は悔しさをにじませました。後継者不足が課題となる中、祖父のお茶を残したいと、家業を継ぐことを決意した女性は静岡のお茶の魅力発信に奮闘しています。
静岡県沼津市の茶農家「宮代製茶」です。お茶の栽培から販売まで一貫して行っています。茶の都、静岡県にとって衝撃のニュースがきのう発表されました。
農林水産省が発表した農林水産統計で、2024年の静岡県の荒茶の生産量は2万5800トンで国内2位と初めて首位の座から転落したのです。
<静岡県 鈴木康友知事>
「2位になったということは大変残念だったと思います。去年は特に一番茶の価格が低迷したことにより、二番茶以降の収穫を控える農家が多かったということで、その分生産量が低かったことが原因として考えられます」
一番茶では静岡県が1位となっていますが、ペットボトルのお茶を中心に使われる二番茶以降で鹿児島が静岡を上回り、巻き返しをはかった形です。
<宮代製茶2代目 宮代雄一さん(84)>
「カメとウサギと同じように、鹿児島はぼちぼちやっていて、静岡は抜かれちゃった。お茶の価格が上がるわけではないのに経費だけ取られている。こんな事じゃ嫌だというのがあらかたですよ。必ず九州には負けますよ」
宮代雄一さんは3年前、大病を患ったことや高齢になったことがきっかけでお茶工場を閉めることを考えていました。
祖父が守ってきたお茶を途絶えさせたくないと、孫の友梨佳さんが、後を継ぐことを決意しました。
<宮代製茶3代目 宮代友梨佳さん(30)>
「私自身も自分の家のお茶が大好きなので、飲めなくなるというのが考えられなくて。銀行を退職して茶業に専念することに決めました」
静岡の茶畑は、鹿児島と比べて急斜面で栽培する茶園が多く、機械での摘み取りが難しいのが現状です。お茶の栽培面積の減少幅は、鹿児島県が5%ほどでとどまっているのに対し、静岡県は30%ほど減っています。
宮代製茶の茶畑の周りにも耕作放棄地があります。
<宮代製茶3代目 宮代友梨佳さん>
「静岡=お茶だったのが崩れてきてしまいそうな感じがして悔しさはありました。メインでやっている事業主が高齢化に伴って衰退していくのが一番の要因だと思う」
孫の友梨佳さんは、2024年から飲食店などと連携し、ほうじ茶を使ったカクテルや煎茶を使ったラーメンなど静岡のお茶の魅力を広める取り組みにも力を入れています。
<宮代製茶3代目 宮代友梨佳さん>
「茶摘みをしたいとか工場見学をしたいというのが外国の方は興味があるみたい。体験的なもので。何とかなくさないように生産や製造を続けていく形が取れないかなと思っています」
お茶王国・静岡が1位に返り咲くため、茶業界の変革が問われています。