災害関連死を含めて28人が犠牲となった静岡県熱海市の土石流災害をめぐる民事訴訟で2月5日、初めての証人尋問が行われました。証人として立ったのは、盛り土の現在の土地所有者の下で働いていた元社員で、弁護団は「現所有者の法的責任を基礎づける大きな証言」と位置づけました。
熱海市で2021年に発生した土石流災害をめぐっては、遺族などが盛り土の前の土地所有者や現在の土地所有者、そして、静岡県や熱海市に対し、64億円あまりの損害賠償を求める裁判を起こしています。
原告の新・弁護団側によりますと、5日午前に開かれた非公開の協議では、責任の所在を確認するための手続きがあり、裁判所からは3月末までに責任についての議論を詰める方針が示されたということです。
28人の命を奪った土石流災害の「責任」はどこにあるのか。5日午後に、東京地裁で開かれたのが、この訴訟では初めてとなる証人尋問です。
<現・土地所有者の会社の元社員>
「真実を明らかにしなきゃいけないという私の正義感から出たための行動」
盛り土の現在の土地所有者の下で働いていた男性。健康状態が不安定なため、先行して尋問が実施されました。証人として立った元社員は熱海市から指摘された危険性は現所有者に伝えていたと主張しました。
<現・土地所有者の会社の元社員>
「熱海市から言われたことは(現土地所有者には)漏れなく、そつなく伝えているし、『はい、分かりました』という感じで、淡々と私の提出した書類を受け取る。いずれ時間が経てば、真実、実態が明らかになってくるんじゃないか」
<原告側の旧弁護団 加藤博太郎弁護士>
「現所有者の過失、いわゆる法的責任を基礎づける大きな証言をいただけたんじゃないかと思っている」
土石流で母親を亡くした原告の瀬下雄史さんは、元・社員が証言したことを評価しました。
<瀬下雄史さん>
「中立の立場で非常によくご存じの方がされた証言ということで、非常に大きな意味があったんじゃないかなと考えている」
新・弁護団によりますと、次回は5月に弁論が行われ、責任の所在に加えて損害の規模や程度などについて審理していくということです。

