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「自治会活動ができないと訓練もまともにできない」都市部でも50%超え…進む高齢化で広がる防災訓練の“地域間格差”

12月1日は「地域防災の日」。静岡県内各地で自主防災組織による訓練が実施されました。「地域防災訓練」は長年、静岡の防災力を支えてきましたが、人口減少や高齢化の影響で「地域の格差」とも言える状況が生まれています。

住民が主役となる地域防災訓練。今から80年前に発生した南海トラフ地震の教訓から、各地の自主防災組織が地域の特性を踏まえた訓練を、静岡県では毎年、12月第1日曜日に独自で行っています。

<参加者>
「まともに参加できたのは、今年が初めて。子どもたちもいい年齢になってきていい経験もさせたかったですし自分はずっと忙しかったんですけどそれもひと段落ついてきて」
「体験したからなんかできそうだなって」

能登半島地震の発生からまもなく1年。人ごとではないと取り組むのが、伊豆半島の先端に位置する南伊豆町の妻良地区です。人口は約170人。その半分の86人が訓練に参加し、高台まで避難にかかる時間を測りました。しかし。

<住民(93)>
Q上にあると時間もかかりますね?
「まだとてもだね。もう津波に流されるよ」

津波の第一波は、地震発生からわずか7分で襲ってくる想定ですが、今回は避難の完了まで20分かかりました。突きつけられているのは、住民のおよそ6割が「高齢者」という現実です。

人口減少に伴う「過疎化」にも向き合う必要があります。住民わずか10人の南伊豆町吉田地区です。吉田地区で想定されるのは、最大で高さ20メートルの大津波。区長の吉田克規さんは、経営する宿泊施設での避難誘導訓練と1人暮らしの高齢者への見回りをしました。

「昔は20人以上、コロナ前は集まっていた。お年寄りが80歳を過ぎて(集まるのは)やめた方がいいんじゃないかと。その時は、消火訓練も機械で放水の練習も全部やってたが、逆に(高齢者には)危ないということでこういう形になった」(南伊豆町吉田地区 吉田克規区長)

地区に住むのは5世帯で、吉田さんの息子夫婦を除いて全員、高齢者です。

<住民(89)>
「夜の地震じゃ、本当に怖いなと思っている」
Q周りに人がいなくなってきちゃうと
「なおさらね」

少子高齢化の波は、都市部にも襲いかかっています。静岡市清水区新富町は、400人ほどの住民がいますが、高齢化率は50%を超えています。2023年からは、訓練の参加者を自治会の役員と小・中学生だけに絞りました。

<新富町自治会 大畑勲会長>
Q65歳以上の高齢化率はどのくらい?
「55%は超してると思う。“町場の過疎化”って言うか、なんて言うか」

<住民(70代)>
「昔は炊き出しをやったり、本当に消火器で撒いたり、そうすると近所で迷惑とか、そういうのも出てきている、だからまぁ…形だけ」

地域の防災を支える自主防災組織。そのベースは自治会ですが、加入率は年々減少し、今や70%ほど。防災を支える地域の力も減り続けています。

一方、120人以上の小・中学生が参加する大規模な訓練を行った地区もあります。静岡市清水区の渋川北地区では、土地に余裕があり、新しい住宅が増え、若い世代が多いといいます。

<清水区入江地区連合自治会 加藤勉会長>
「“地域の格差”が500世帯対100世帯だと100世帯の町内はギブアップしている。自治会の活動ができないと、防災訓練もまともにできないという話で。助けてほしいということが去年ぐらいから、やっと声があがってきた」

この地区の連合自治会長は、まずは実態を理解してもらうことが必要だと話します。訓練から見えてきた“静岡の備え”を取り巻く不安。地域防災のあり方は、転換点を迎えています。

2023年の地域防災訓練は、「津波注意報」発表の影響で一部の地区で中止となり、静岡県内一斉の訓練は2年ぶりとなりました。2024年の参加者数は県内全体で約65万人。ピーク時には、300万人ほどが参加していたという記録もあります。高齢化が進む中、いま、県民の防災への向き合い方が問われています。

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