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河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

3バックで森保ジャパンが躍動!日本代表が中国戦で7-0の大勝利を飾った理由<サッカーW杯アジア最終予選>


【サッカージャーナリスト・河治良幸】森保一監督が率いる日本代表は北中米W杯のアジア最終予選の初戦となる中国戦に臨み、7−0の大勝利を収めた。「選手たちがアジア最終予選の初戦の大切さと難しさを認識してくれて、そこで最善の準備をしてくれたことがこの結果につながった」と森保監督は語る。

前回はホームでオマーンに敗れた後、何とか中国に勝利したが、第3戦でサウジアラビアに敗れると、危機的な状況に追い込まれた。その時にオマーンを率いていたのが、今回の中国を率いるイバンコビッチ監督ということもあり、森保監督はもちろん、選手たちも同じ轍を踏まないことを強く意識していたようだ。

三笘の生かし方


4-4-2の中国を相手に、日本は3-4-2-1のシステムでスタートした。最終予選の最初の試合を、従来の4-2-3-1でも4-3-3でもなく3バックで臨んだことには驚きもある。森保監督は「新しくやったというより、6月からやってきたことの継続。その中で選手の状態を見ながら起用した」と説明する。

実際、3バックは中国を相手に攻守ともに、よく機能した。“第2次・森保ジャパン”の強みは4バックでスタートしても、3バックでスタートしても、選手の組み合わせや相手との噛み合わせに応じて、攻撃と守備のバランスを変えたり、流れの中で形を変えて相手が対応しにくい状況にしたり、幅広く使い分けられることだ。

今回は3バックが右から板倉滉、谷口彰悟、町田浩樹という並びで、左右のウイングバックは三笘薫と堂安律という攻撃的なセットだった。高い位置での守備の時は三笘が上がり目、堂安が下り目となり、最終ラインが左にややスライドして4バック気味になる可変をしていた。

それは4-4-2の中国に対して高い位置から守備をハメていく意図もあるが、攻撃のキーマンである三笘が下がらずに、常に攻撃の起点になる準備ができるようにという狙いもあった。

3バック固定だとどうしても、サイドの裏を狙われやすいし、5バックにすると後ろに重くなりやすく、前からのプレッシャーをかけにくい。3バックでも、積極的にボールを奪いにいく時は4-4-2のようになるというのは、4バックに長く取り組んできて、後から3バックを導入した強みと言えるかもしれない。

攻撃面のメカニズムとしても、左の三笘が外側に張って、左センターバックの町田やボランチの守田英正から斜めのパスを受けて縦に仕掛ける一方で、右側の堂安はシャドーの久保建英とポジションチェンジなどを織り交ぜながら、前向きにゴールを狙うという意識が見られた。

CKから遠藤航の得点で1−0とリードして迎えた、前半アディショナルタイムに決めたチームの2点目は見事だった。右センターバックの板倉を起点に、右外でボールを持った久保が2人のディフェンスを引き付けて、中寄りの下り目にポジションを取った堂安に戻しのパスを入れる形だった。そこから堂安が左足でクロスを入れると、ゴール前の中央を越えたボールにファーから三笘が飛び込んで合わせた。

狙い明確の得点シーン


日本のインとアウトを織り交ぜた攻撃に耐えられなくなった中国は後半4-4-2から5-3-2にチェンジするが、日本は3バックへのプレッシャーが緩くなった状況を利用して、左センターバックの町田が相手陣内から効果的な縦パスを攻撃陣に通す。

52分と57分に南野が決めた得点はともに町田を起点としたもの。1点目は町田から縦パスを受けた南野が外側の三笘とワンツーでボックス内に侵入して、混乱した中国のディフェンスを切り裂いた。2点目は町田からFW上田綺世にボールを当てた落としを南野がうまく受けて、シュートに持ち込んだ。

その後、右サイドで途中出場した伊東純也が記録した日本の5点目、三笘に代わり左サイドに投入された前田大然のスピードを生かした飛び込みからのゴール、最後の久保による7点目にいたるまで、狙いはすべて明確だった。

ラッシュの呼び水となった遠藤の先制点

最終予選の初戦という難しい状況で7-0という圧倒的なスコアを叩き出した大きな要因の一つは、早い時間帯に獲得したCKのチャンスを逃さなかったことだ。マンツーマンで守る中国に対して、ゴール前で町田、上田、南野がうまく遠藤のマーカーをブロックして、久保から左足のボールが来る直前にマークを外させた。まさしく練習で仕込んでいた通りだったという。

森保監督は「セットプレーの攻撃は前田(遼一)コーチのもと、ミーティングとトレーニングでイメージを共有したものが出せた」と答えた。

強豪がこぞって苦戦、波乱含みの展開に

セットプレーによる幸先良い得点もあり、日本は理想的な形で得点を重ねた。最後まで攻める姿勢を緩めることなく、7得点を奪い切ったことは今後、より厳しい戦いに遭遇した時に、良い方に影響してくるはず。

その一方で、他会場ではサウジアラビアがホームで成長著しいインドネシアと引き分け、オーストラリアが日本と次に対戦するバーレーンに敗れるという波乱があった。別グループでも、韓国がパレスチナと0−0で引き分けるなど、W杯経験国がこぞって苦戦する状況も起きている。森保監督や選手が今回の7-0で油断することはないだろうが、アウェーのバーレーン戦も中国戦と変わらない注意をして臨みたい。

中国戦は残念ながらベンチ外だった静岡県勢の旗手怜央や、6月シリーズでアピールした中村敬斗、プレミアリーグ挑戦中の鎌田大地など、中国戦で出場チャンスに恵まれなかった選手たちがいかに奮起して、バーレーン戦での活躍に繋げるか。森保監督が引き続き3バックを使うのか、別のシステムで行くのかも含めて注目していきたい。
シズサカ シズサカ

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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