サッカージャーナリスト河治良幸
サッカー五輪代表歴代ベストイレブンを静岡県勢だけで選んでみた!“マイアミの奇跡”を起こしたメンバーがずらり
パリ五輪の男子サッカーは7月24日に初戦を迎える。D組の日本はパラグアイ、マリ、イスラエルと対戦する。1968年のメキシコ五輪で銅メダルを獲得して以来、五輪がU-23の大会になってからは初めてのメダルを目指す。これまで五輪では多くの静岡県勢が活躍してきた。今回は大会での活躍度を基準に、歴代ベストイレブンを選んでみた。
システムは3−4−1−2に。GKは川口能活をおいてほかにいないだろう。富士市出身の川口はアトランタ五輪でゴールマウスを守り、度重なるビッグセーブで日本を「マイアミの奇跡」に導いた。予選突破はならなかったものの2勝1敗の結果に貢献し、A代表の守護神へと飛躍を遂げた。
元清水エスパルスの山本海人は北京五輪予選突破の立役者の一人だったが、本大会では西川周作のサブに回る形となった。なお当時の静岡県勢ではなかったが、現在、清水エスパルスの守護神に君臨する権田修一が、ロンドン五輪ベスト4のメンバーだったことも付記しておく。
磐田コンビが最終ラインを統率
3バックもアトランタ五輪の3人に。浜松市出身で、磐田一筋で現役生活を全うした鈴木秀人はアトランタ五輪で3バックの左を担い、ブラジル戦では相手エースのベベットを封じ込んだ。
A代表は1キャップだけだが、五輪での経験を生かし、2002年のJリーグ・ベストイレブンに輝くなど、磐田の“黄金時代”を支えた。静岡市清水区出身で、磐田でプロ生活の大半を過ごした田中誠はアトランタ五輪で、3バックの中央から守備を統率した。左の鈴木、右の松田直樹をカバーしながら、幅広くチームを支えた。
もう一人のDFは富士市生まれで、清水エスパルスでも活躍した白井博幸を選んだ。守備のエキスパートとして西野朗監督が高く信頼し、ディフェンスラインだけでなく、右のウイングバックとしても相手のチャンスメーカー封じに起用した。
静岡出身ではないが、清水エスパルスに所属していた森岡隆三が、2000年のシドニー五輪にオーバーエイジとして参加して、ベスト8に進出したチームを心身両面で支えたことも印象深い。
右ウイングバックは函南町の出身で、清水東高校のOBである内田篤人をチョイス。本田圭佑や長友佑都とともに出場した2008年の北京五輪は3戦全敗に終わったが、個人としてもインパクトは強く、A代表やブンデスリーガでの飛躍につながる大会だった。
チームとしても惨敗のイメージが強い北京五輪だが、ここから内田をはじめ、多くの選手がA代表や欧州で活躍した事実を考えれば、当時の反町康治監督(現・清水エスパルスGM)の選手を見る目は確かだったと言えるかもしれない。
左ウイングバックは静岡学園出身の旗手怜央に。東京五輪時は川崎フロンターレで左サイドバックを経験。本大会でも同ポジションと左サイドハーフで起用された。
プロ入り前は順天堂大学でFWとしてゴールを量産していた。“シズガク”で磨いた高度なテクニックと持ち前のサッカーIQを発揮し、東京五輪では久保建英や三笘薫といった選手たちとベスト4に躍進。惜しくもメダル獲得はならなかったが、その後、スコットランドの名門セルティックに移籍。A代表に定着し、ますます幅を広げている。
ボランチは「和製マラドーナ」と呼ばれたあの鉄人
ボランチは伊東輝悦と大島僚太の2枚に。東海大一高校出身で地元の清水エスパルスに加入した伊東はアトランタ五輪のブラジル戦で、奇跡的な決勝ゴールを決めて一躍脚光を浴びた。
3−2で勝利したハンガリー戦でも、前園真聖の決勝点をアシストしている。A代表でも27キャップを持つ鉄人は49歳の現在も、アスルクラロ沼津で現役を継続中。アトランタ五輪の頃は豊富な運動量とダイナミックなドリブルを武器としていたが、そこから味のあるボランチに成熟していった。
大島僚太は根っからの清水育ちで、中高ともに静岡学園だったが、2011年に川崎フロンターレ入り。翌年から同郷の風間八宏監督のもとでメキメキと頭角を現し、アンダーカテゴリーの代表でも中心を担うようになっていった。
リオ五輪ではキャプテンの遠藤航とともに中心的な役割を果たしたが、決勝トーナメントは逃している。川崎ではクラブ初のリーグ優勝に貢献し、A代表でも飛躍が期待された。しかし度重なる怪我に泣かされ、ベスト16に進出した2018年のロシアW杯も出番なく終わってしまったことは残念だ。
攻撃の中心はやはり小野伸二だろう。シドニー五輪は予選で相手のラフプレーにより大怪我を負い、世界中の注目を集めるはずだった檜舞台を棒に振ってしまった。しかし、4年後のアテネ五輪でオーバーエイジとして選ばれると、3試合でPKによる2得点など、特別な存在感を放った。
シドニーで輝いた高原が2トップの一角に
2トップは小野とともに黄金世代の象徴的な存在で、シドニー五輪の南アフリカ戦で2得点を記録するなど、計3得点でエース的な役割を果たした高原直泰と、アトランタ五輪で「マイアミの奇跡」を彩った松原良香で構成した。
こうして振り返ると、やはり代表レベルで活躍する静岡県勢が減少傾向にあるのも確かだ。パリ五輪では、静岡市出身で静岡学園から飛躍したDF関根大輝(柏レイソル)や、御殿場市を拠点に活動していたJFAアカデミー福島OBの三戸舜介(スパルタ)の輝かしい活躍を期待したい。
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。