2022年、静岡県牧之原市で河本千奈ちゃん(当時3歳)が通園バスに置き去りにされ亡くなった事件の判決公判が7月4日開かれ、静岡地方裁判所は元理事長に対して、禁錮1年4カ月の実刑判決を言い渡しました。裁判長は「千奈ちゃんは教訓になるために生まれてきたわけではない」と言葉にしました。

<千奈ちゃんの父親>
「裁判が一つ終わったよ、と。元園長は、実刑になったよと。元担任も、執行猶予が付いたけど、有罪判決で終わったよと」
判決後、父親は娘にそう報告したいと話しました。

園服を身に着け大好きな幼稚園に通う河本千奈ちゃん当時3歳。2022年9月、通っていた「川崎幼稚園」の通園バスの中に約5時間、置き去りにされ、重度の熱中症で亡くなりました。
そして、7月4日ー。
<LIVEしずおか 井手春希キャスター>
「元理事長を乗せた車が静岡地裁に入ります」
事件をめぐっては、当時、運転していた元理事長の男は、園児をバスから降ろす際座席の確認を怠って、千奈ちゃんを車内に置き去りにしたなどの過失。元クラス担任の女は、登園していないと気付いたにもかかわらず、「欠席」と信じ込み確認しなかったなどの過失で、千奈ちゃんを死亡させたとして業務上過失致死の罪に問われました。
これまでの公判で、両被告は起訴内容を認めていて、検察側は2人に実刑判決を求めた一方、弁護側は元クラス担任の女に執行猶予付きの判決を求めていました。

静岡地裁で開かれた判決公判には、4日朝から傍聴券を求める人が次々と訪れました。午前11時の開廷後、すぐに判決が言い渡されました。
<静岡地裁 國井恒志裁判長>
「主文、被告を禁錮1年4か月に処する」
判決のあと、ついたての奥で千奈ちゃんの両親の泣く声が響きました。
國井恒志裁判長は元理事長に対し、「安全確保に対する意識の欠如は甚だしく、園児の命を預かる保育者として厳しい非難を免れない。その刑の執行を猶予する余地は認められない」と指摘し、禁錮2年6か月の求刑に対し、禁錮1年4カ月の実刑判決を言い渡しました。
また、元クラス担任の女には「基本的な注意義務を怠った」として、禁錮1年の求刑に対し、禁錮1年執行猶予3年の判決を言い渡しました。
裁判官は最後に被告に対して、こう説きました。

<静岡地裁 國井恒志裁判長>
「千奈ちゃんが生まれた意味は、両親を不幸にするために生まれてきたのではなく、幸せにするために生まれてきた。今回のような事件の教訓になるために生まれてきたわけではない」
裁判の後、千奈ちゃんの父親が会見を開きました。
<千奈ちゃんの父親>
「國井裁判長が少し言葉を詰まらせながら、感情的になりながら、私たちに声をかけてくれたことは、とても説得力があって、素直に私の中で受け止めることができました。元園長(元理事長の男)が実刑だとわかったとき、何も考えられない状況でした。妻とは手を握り合いました」
元理事長の男は、判決後「今回の判決を大変重く受け止めております。今後とも、千奈さんの慰霊、ご遺族への謝罪、償いを続けてまいります」とコメントを出しました。
判決の日、事件が起きた現場には手を合わせに来た人の姿がありました。
<焼津市から来た人>
「ここに来ただけで涙が出る。二度とこういう事故が起きないようにしないといけない。それが生きている我々の使命だと思います」
事件発生からまもなく2年。求められているのは、子どもたちの命を守る具体的な取り組みです。