静岡SSUボニータの本田監督、たくましいチームづくりに意欲!
サッカー女子なでしこリーグ1部の静岡SSUボニータ監督に復帰した本田美登里さんは、J1ジュビロ磐田と女子サッカースーパーバイザーの契約を結び、磐田からの出向という形で指揮を執ります。「ボニータというチームが10年、20年どう残っていくか。ジュビロと一緒にやっていきたい」と意気込んでいます。
ー開幕の約1週間前での就任となった。
チームには大変ご迷惑をかけております。時間はないなと思っている。目先の勝ち負けはもちろん必要だが、私のなかでは1年とか2年をかけて戦術、サッカーの基本を選手たちに伝える。直近2年がどんな2年か分からないが、しっかりサッカー、強いチーム、WEリーグを目指せるようなチームをつくる。たくましい静岡を代表するチームをつくっていく。1年、2年でできるとも思っていないが、そのスタートを私がやれたらいい。
ーウズベキスタン代表監督を務めた2年前との変化は。
サッカーの基本は変わっていない。いろんな経験を積んでシステムなどを少し勉強し、自分の引き出しが増えた。
ー中京大との練習試合を見た感想は。
(代表の)三浦さんもこのチームの目標はスペクタクルなとか、お客さんが見ていて楽しいようなとか。攻撃の面で単調にバイタルエリアを攻める。意図的に攻めることがない。選手たちもなんとなく分かっているが、もっと意図的に攻撃を仕掛ける。もう少し選手たちにバイタルの崩しを教えてあげたい。個人のところでも、伝えてあげられることは多いかなと思います。
ー海外チームを率いた経験をどう生かすか。
間違いなく言葉の面ではやりやすい。やりにくさではないが、向こうの選手は身体能力が高い。練習をしていようがしてまいが、ワンステップで逆サイドまで振れてしまう。60メートル蹴れてしまう。サイズ感の違いはあった。GKで180センチぐらい、一番小さい子で私と同じ160センチぐらい。セントラルアジアなのでロシア系、トルコ系、韓国系もいるし。選手一人一人のルーツが全部違う。それぞれの筋力を見ていくとふくらはぎがものすごくいい選手もいるし、シュッとした選手もいる。そういう意味では逆に難しかった。
理想はボールを相手に渡さないサッカー

ー塩沢優新主将と話し合ったか。
優の方から「私キャプテンになりました」って。私前から彼女はキャプテンをやっているのかと思った。私がいるときから。そうか初めてだったか思うぐらい。2年前は中堅だったが、上と下のバランスを取りながら非常にいいコーディネートをしてくれる。前からいた選手はやりたいサッカーを分かっていると思う。それにこの2年間でつくった引き出しを彼女たちに足していきたい。
ーどんなサッカーを目指したいか。
簡単にボールを失わない。相手に渡さない。それができるようになるのは5年後とかだと思うが。蹴ってしまうのではないし。スペースがあるからってスペースに蹴ったとしても走ってなければ相手に出すのと一緒。走っている選手の足元に出してほしい。ボールを保持するという言葉もいろんな人が使うが、相手に渡さないサッカー。それは本当に究極の理想です。
ージュビロ磐田からの出向という形をとる。スーパーバイザーの役割は。
まだ具体的には伝えられていない。おそらくジュビロが女子のサッカーに力を入れますよというアナウンスだと思う。私が以前いたときも現場同士でコミュニケーションを取っていた。フロント同士はなかなか難しい。われわれとしてはジュビロという大きなネームバリューと一緒にできるのは大きなこと。ジュビロ側も女子に手を付けてこなかったが、普及も含めて力を入れていく。私の提案として15歳の世代をつくりたい。中学生のチームが意外とない。U-15、U-18とか上に上がっていく。今年からボニータのユニホームの背中に「ジュビロ」が入る。
ーハードな仕事になるが。
健康だけは取りえなので大丈夫だと思う。
ウズベキスタン代表監督経験で得たものは?

ーウズベキスタンでの経験は。
とんでもないところに行ったのは確かで、時間を守らないことから始まった。ピアスはして練習に出てくる。サンダルで出てくる。コーラは飲んでケーキを食べているような状況からで。ただ持っているものはすごいので、やれば、やらせればできる。ちょっとのとこでいらいらしなくなった。五輪最終予選で練習場がないとか、バスが来ないとか。そんなの日常茶飯事だった。雨が降るとどうしてもなにかやりたかったが、1日ぐらいやれなくても関係ないかと思えるようになった。
ー目標の五輪出場まであと一歩に迫った。
振り返ればやるだけのことはやって結果も残せたかなと思う。しんどいことはしんどかった。細かいミス、イレギュラーが多すぎて。想像はできなかった。ウズベキスタンの選手のレベルも分からなかった。行ってみて最初に練習をみてこれは難しいなと思った。しっかり選手と向き合うことで、選手がこっちを向いてくれるのは同じ。やれることは精いっぱい時間を惜しまずやったことに選手は応えてくれた。
ー開幕はヤマハスタジアムで昨季覇者のオルカ鴨川と対戦する。
ジュビロ磐田も開幕が(昨季王者)ヴィッセル神戸でリスペクトしすぎた。徐々にボニータカラーを出していければいいが、しばらくは負けないサッカーをしながら1試合ずつ攻撃的な部分を練習でやっていく。それが試合に現れたらいい。長い目で見てください(笑)。なでしこリーグとして10年後、20年後をどうしていきたいかというイメージのある人は少ない。もちろん目先で勝つことは大事だが、このチームがどう残っていくかのほうも、1試合に勝つのと同じくらい重みがある。そこをジュビロと一緒にやっていきたい。せっかくジュビロがこっちを向いてくれているのであれば、向いている方に一緒にやっていきたい。