「160棟のうち100棟が空き家」耐震化率が低く、高齢化率が高い 能登と伊豆「半島」共通の課題【備え続けよー地震災害の教訓③】
防災シリーズ「備え続けよ!」地震災害の教訓から静岡の備えを見直します。今回は「低い耐震化率」と「高い高齢化率」です。住宅の倒壊が相次いだ「能登半島地震」。「伊豆半島」も同じような課題を抱えています。
伊豆半島の先端に位置する静岡県南伊豆町。人口は約7500人で町内には34の小規模な集落があります。
<和田啓記者>
「比較的年月の経った木造の家屋が密集しています。伊豆半島にはこういった場所がたくさんあります」
沿岸部に広がる木造の住宅密集地。能登半島地震の被災地と立地条件が似ています。
<住民>
「崩れているから外へ崩れてきたやつをみんな中へ入れてるの」
地区の住民が案内してくれたのは崩れかけた空き家でした。
<住民>
「とにかく地震津波避難で逃げろと。浜の方にいても、どこの路地を通ってもみんな旧三浜小学校(避難所)へ行くようになっている。ただ、その段階でこれが倒れてきたらどうやって逃げるんだと」
この地域は、地震発生から7分で最大12メートルの津波が到達すると想定されています。しかし、空き家の所有者がわからず、直接対処を依頼することができないといいます。
隣の地区でも同様の問題が表面化していました。
<南伊豆町妻良地区 鈴木恵区長>
「ここらへんも空き家。空き家、空き家、ここも空き家だし」
Q.ここが空き家で、ここも空き家?
「空き家、空き家。そこの白い壁の家も空き家。ああいう風に壊れてるでしょう。でも、連絡取りようがないから」
区長によると妻良地区の約160棟のうち、100棟ほどが空き家だといいます。
<南伊豆町妻良地区 鈴木恵区長>
Q.能登半島くらいの揺れがあったらどうなる?
「ほぼつぶれるでしょう。耐震なんか、ほとんどやっていないし」
<住民>
Q.こちらにお住まいですか?
「これ、木造」
Q.耐震化してますか?
「耐震化…ほとんどの家がしていないね」
「やってない」
南伊豆町の住宅の耐震化率は、静岡県内で最も低い62.6%。県全体は89.3%です。(いずれも2018年~2020年の数値・静岡県調べ)
町では、住宅の耐震工事に最大120万円の補助金を出していますが、伸び悩んでいます。
<南伊豆町地域整備課 鈴木礼治さん>
「高齢者世帯が非常に多い。これから何年住むか分からない住宅に大金をなかなかかけることができないと」
ネックとなっているのは住民の高齢化。防災先進県と呼ばれてきた静岡県ですが、住宅の耐震化率で言えば人口規模の大きい首都圏の方が数値が高いのが現状です。(東京都92%、神奈川県94%)
大都市圏は、活発な経済活動や若者の流入などを背景に建物が新しくなり、結果的に災害に強くなっているといいます。
<静岡大学防災総合センター 岩田孝仁特任教授>
「もともと都市計画って整然とした街をつくるのが目的じゃなくて、そこで生活する人たちが安全で安心して暮らせる、産業もそこで呼び込めるということで都市計画の仕組みがある。大都市圏だけが享受しているのではなくて、こうした地方都市でも、そういう概念を受け入れて、街をもう1回再構築していく取り組みを目指すべきではないか」
安心して暮らせる「まちづくり」は、災害に強い「まちづくり」でもある。その取り組みが次の大地震への備えになりそうです。
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