
サッカーのセレクションに合格するにはどうすればいい?目立つ方法は?清水エスパルスのジュニアチーム監督に聞いてみました!
サッカー小学生のセレクション「ドリブルが重要」って本当?
清水エスパルスU-12清水の選手を指導する太田貴光氏
今年もサッカージュニアチームのセレクションの時期が近づいてきました!清水エスパルスU-12清水は小学2〜3年生を対象とした1次試験を来年1月26日に実施することを発表しました。10月に開催されたフジパンCUPU-12東海大会の決勝は静岡県勢対決となり、ステラ焼津が優勝、藤枝東FCジュニアが準優勝に輝くなど、Jリーグのアカデミーだけでなく各地域の街クラブも元気です。
多くのパパやママが気になるセレクションについて、シズサカ編集部は昨年、清水エスパルスに取材しています。ご参考に!
「ドリブルせずにパスばかりだと受からないらしいよ」「親の身長が低いと、不合格になっちゃうみたい」
Jリーグ下部組織のセレクションが近づくと、サッカー少年のパパやママたちの間でこんな都市伝説のような話が飛び交います。実際はどうなのでしょう?
“お受験戦争”の過熱化にはもちろん反対ですが、「プロの教えを受け、上手な仲間たちに囲まれながら成長してほしい」という親心は理解できます。
今回は「なんとか難関を突破してほしい」と願うパパやママの素朴な疑問を、清水エスパルスU-12清水監督の太田貴光氏(53)にぶつけてみました!
太田氏は清水商業高時代に全国高校選手権優勝に貢献し、プロ入り後は清水エスパルスやコンサドーレ札幌などで活躍しました。
清水エスパルスU-12清水の太田貴光監督を直撃!
ー1次試験はどんなメニューがありますか。
「50メートル走や立ち幅跳びなどの身体能力のほか、スローインをどれぐらい飛ばせるか、キックはどれぐらい飛ぶかなどをチェックします。
トレーナーを中心に、自分の体を自由にコントロールできているかどうかをみています。スローインもキックも全身をうまく使うことができていれば、ボールの飛距離は伸びます。
最近の子どもは外遊びをやらなくなったせいか、うまく体を使うことができない。転んでも手をつけないから、顔から落ちてしまったりすることがあるんですよね」
ー50メートル走のタイムは提出書類にも書く欄がありますが…。
「セレクションでは、きちんと計測機で測ります。今後の体の成長スピードによってはすぐに順位は入れ替わるし、トレーニングすれば速くなることもあります。タイムだけで不合格にすることはないですが、やっぱり今の時点でも足が速いのは一つの魅力です」
ーボールを使ったメニューはありますか。
「ウォーミングアップの時にリフティングしながら相手にぶつからないようにさせてみたり、コーチの笛に合わせてボールを高く上げてコントロールさせてみたり。1次試験は4対4などのミニゲームが中心となります」
ー例年、セレクションの参加者は何人ぐらいですか。
「多くても40人ぐらい。合格者はそのうちの10人ぐらいです。これまでは小学3年生が対象でしたが、2024年1月のセレクションからは小学2年生も対象にして若干名を募集しています」
ー何人ぐらいのスタッフでチェックするんですか。
「ジュニア、ジュニアユース、ユースのスタッフなど12〜13人で見ています。全員で全参加者を見て『ボールを受ける姿勢がいい、立ち姿がいい』とか『ボールコントロールがうまい』とか、それぞれの特徴をメモ用紙に書き込んでいく。
『テクニック』『ドリブル』などとチェック項目が細かく分かれているわけではありません。それぞれの目立った特徴、気づいたことをメモする欄があります。
40人参加すればすぐに5、6人は目立つので『はい、合格』となります。あとの5人をどうするか。スタッフの中でも意見が分かれることが多い。クラブハウスで会議を開いて、『B君はどういう印象だったか』『俺はこう思う』『俺は全然印象がない』などと話し合います」
前向きな声はプラス材料!親の身長は…
ー2次試験はどんなメニューになりますか。「8対8の試合が中心になります。1次試験のスモールゲームだと、みんな足元ばかりでドリブルが上手い子が目立つのですが、大きなグラウンドになるとスペースに飛び出したり、スペースにパスを出したりという感覚なども確認できる。またちょっと印象が変わってくるんです」
ー試合のポジションは誰が決めるんですか。
「4チームつくるのであれば、4チームに1人ずつコーチを付けて、必ず1度は自分が一番得意なポジションをやってもらうようにします」
ーチームごとの話し合いの時はどんなところをチェックしてますか。
「真っ先に『俺はセンターフォワード』と自信満々に主張する選手もいれば、周囲の反応を見て、気遣いできる選手もいる。初めて顔を合わせたチームメートに『こういう場面ではこうしよう』と指示を出せる子もいる。
おとなしい子よりは、しっかり話すことができる子の方がいいかなと思います。前向きな声を出す選手は目立つし、プラス材料になります。一方で「文句しか言わず、自分は何もしない」とメモすることもあります(笑)」
ドリブルばかりした方がいい?
ー保護者の方々の間では「セレクションの時は遠慮せず、ゴリゴリとドリブルした方がいい」という話がありますが…。「ドリブルする子の方がたしかに目立ちます。ただ、我々も状況判断の良し悪しはしっかり見ています。ドリブルで抜いた方がいい場面と、パスしてワンツーで抜けた方がいい場面がちゃんと見極められているか。
『何も考えずドリブルで突っ込んで、ボールを奪われてるだけだな』と感じることも多いです。そういう選手でも『まずは合格させて、パスを覚えさせよう』ということもありますが、『この子は判断がいい』と評価された選手はドリブルが上手な選手よりも評価は高くなる気がします」
ードリブル以外で目立つためにはどうすればいいですか。
「個人的にはやっぱり負けず嫌いの選手がいい。ボールを取られたら必死に取り返しにいくこと。まずは当たり前のことを当たり前にやる」
親はどこまでチェックされている?
ー提出書類には親の身長とスポーツ歴を書く欄がありますが、どう利用するのですか。「参考にはしています。エスパルスの中盤はこれまで小柄でうまい選手が多かった印象がありますが、現代サッカーは『速い、大きい』が求められるようになってきました。お母さんの身長が高ければ子どもも背が高くなるんじゃないかと言われているので、特にキーパーに関しては参考にしています」
ーこれまでの長い指導歴の中で、本当にママの背が高いと子どもも高くなっている?
「実は僕の中ではあんまり…。そんなに信用していません(笑)『この選手はデカくなるんだろうな』と思っていても、思ったほどデカくならないことが多い。一方180センチまではいかないだろうと思っていた子が185センチぐらいになったり。やはり背が高くなる選手は、よく食べるんですよ。そしてよく寝る。ぐんぐん伸びていきます。
毎日練習するよりも、練習した翌日は休んで、練習した翌日は休んでの繰り返しの方が身長は伸びるのではと考えています。サッカーばかりやってるより、家でお菓子を食べながらゲームして、寝る。保護者の方には怒られるかもしれないですが、それも大事なのかなと(笑)
エスパルスのジュニアチームは現在、チームの練習や試合が週5日あります。そのほか別の日にトレセンの練習に通っている子もいて、合わせて週6日サッカーをやっている。だからメディカルスタッフとも話をして、体を大きくするためにチーム練習日を1日減らすことも検討しているぐらいです」
ー親の性格や態度はチェックしているんですか。
「特にはしていません。ただ、失礼な言い方になるかもしれませんが、いろんな声は耳に入ってきます。『どこどこの親御さんは試合中、ピッチサイドで自分の息子に指示してる』とか。合否に関係することはありませんが、合格した後に『あとはこちらに任せてください』と保護者の方にはお伝えします」
ー小学1〜3年生の段階で、地域の選手情報はクラブに入ってきますか。
「エスパルスのスクールに通ってくれていれば、コーチから選手の情報はある程度入ってきます。あとは地域のクラブや少年団の指導者の方々から『この子は有望だよ』という話はありますが、セレクションでのプレー次第です」
ーこれからセレクションを受ける選手や保護者に言っておきたいことはありますか。
「セレクションの合否がすべてではないということ。『エスパルスに落ちたからもう駄目だ』というのは100パーセント違う。エスパルスに落ちて『なにくそ』と思い、他のクラブで成長した選手はたくさんいますから。セレクションでは、楽しく元気よく、自分の特長をしっかり出してもらいたいです」
取材を終えて…
当初は「セレクションに合格するための秘策」のようなタイトル記事をつくるつもりでしたが、インタビューを終え、秘策なんてないと思うに至りました。
太田監督は「ゲームを見れば5、6人の合格者はすぐに分かる」と言います。ボールコントロール、判断力、スピード…。何か一つ武器を持ちつつ、総合力も高い。その子たちは審査員の誰もが納得する選手たちでしょう。
では当落線上の選手たちはどうすればいいか。
「セレクションでは、目立つためにドリブルをした方がいい」という声をよく耳にします。間違いではなさそうですが、そうとも言い切れないようです。
いつもパスを散らすプレースタイルなら審査員の目を引くためにドリブルも意識した方が良さそうですが、ドリブルが不得手な選手が無理にやっても…。一方、いつもドリブルばかりの選手は視野の広さを少しはアピールしたいところ。
時間が限られたセレクションの中で、自分をどう見せるか。選手それぞれに、違うアドバイスが必要になりそうです。
Jリーグの下部組織はプロの養成機関。目先の勝利よりも、どのぐらいトップチームに選手を輩出したかが問われます。街クラブ以上に、特長のある個性的な選手を求めています。
「ドリブルは超うまいんだけど、状況判断が…」とか「足はめっちゃ速いんだけど、ボールコントロールが…」「キック力はあるけど、スピードが…」といった選手もノーチャンスとは言い切れません。
パパやママにできることは結局、子どもの緊張をやわらげ「思いっきり、全力でプレーしてくればいいよ」と伝えることだけなのかもしれません。(シズサカ編集部)


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