「いくら正しい情報が来ても簡単には否定できない」飛び交う被災地のニセ情報…SNSでデマ拡散のナゼ

1月1日に発生した石川県能登半島を震源とする大地震をめぐって、SNS上では、ニセの情報が飛び交っていて、総務省が注意を呼び掛ける事態となっています。

災害時のニセの情報。最近では、2016年の「熊本地震」や2018年の「北海道胆振東部地震」でSNSを通して拡散し、100年前の「関東大震災」でも新聞で広まり、問題になりました。

1923年の「関東大震災」では、地震発生から約3日間「流言」=デマが広まり、混乱が起きたと歴史の記録に残っています。

災害時のデマは、なぜ流れて、広がるのか。防災情報の専門家が2023年3月、都内で開催された「日本災害情報学会」で議論しました。

<東京大学 関谷直也教授>
「9月3日の段階でこういう新聞記事が出ています。上水道に毒をまく。囚人300名脱獄し大暴状。静岡隊出動す。当時は必ずしも口伝えだけで混乱が広がった訳じゃなくて新聞を通しても広まっていった」

同様の記事は全国の新聞に掲載されていて、当時は、新聞記者も正確な情報をつかめなかったと考えられています。

<東京大学 関谷直也教授>
「電灯もなく情報もなく何が起こっているのか分からない中で不安があるからこそ流言が流れ続けた」

現代では、多くの人が新聞だけでなく、SNSなどのネットから情報を得ています。最近の災害でも、デマに惑わされるケースが度々起きています。

2016年の熊本地震では…
「地震のせいでうちの近くの動物園からライオン放たれたんだが熊本」

SNSで誤った情報が拡散され、投稿した人が逮捕される事態になりました。

2022年1月、南太平洋トンガ沖の海底火山の噴火では、津波のフェイク動画にだまされ、テレビで放送してしまう失敗もありました。投稿者とも接触して使用許諾を得て、どこで撮影したのかというやりとりをしても、フェイクであると見抜くのは難しかったといいます。

2018年の北海道胆振東部地震では、自衛隊もデマの打ち消しに苦労しました。

<国士舘大学 中林啓修准教授>
「自衛隊から聞きましたと。あしたの何時頃本震が来る。そんな予知はどう考えてもできる訳はなくて防衛省がどうするんだろうと見ていたが打ち消しに半日以上かかっていた」

時代や伝達手段が変わっても、人々が不安を感じる限り、災害時にデマは流れると専門家は指摘します。

<東京大学 関谷直也教授>
「正しい、正しくないではなくて、こんなひどい目にあっているという心情を共有したいというのが根本にある。結局、いくらファクトチェックをして正しい情報を伝えても、本人がそれを自覚して、これは流言ではないかという目を持たない限り、いくら正しい情報が後から来ても、そう簡単には否定できない」

災害時には、正しくない情報が流れる。そのことを私たち一人ひとりが理解しておかない限り、デマに惑わされてしまいます。

流言やデマに惑わされないためには、どうしたらいいのか。東京大学の関谷教授は、日本災害情報学会のシンポジウムで、3つのポイントを挙げました。

①「不安だから流言は広がる」=メカニズムを知ることが大事。
②「流言は知者に留まる」=おかしいと思った人が止めることで拡大を防げる。
③「流言ワクチンを打つ」=流言がどう広がるのか、あらかじめ知っておけば、正しいかどうか判断できる。

災害時はもちろん、平時から考えておくことが大切です。

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

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