サッカージャーナリスト河治良幸
パリ五輪へ!U-22日本代表の“静岡勢”がアルゼンチン戦で示した進化
清水の日本平で、大岩剛監督率いるU-22日本代表はアルゼンチンに5-2の勝利を飾った。静岡にゆかりのある選手では 御殿場で活動していたJFAアカデミー福島出身の三戸舜介(アルビレックス新潟)、今夏まで清水エスパルスに在籍した鈴木唯人(ブレンビー)がスタメンで起用されて、10番を背負う鈴木は2得点の活躍。三戸と同じくJFAアカデミー福島育ちの植中朝日(横浜F・マリノス)も追加招集ながら、後半途中から前線に投入されて、精力的なハイプレスなどでチームを活性化させた。
静岡学園高出身の松村優太(鹿島アントラーズ)は前半の終わりから左サイドでプレー。後半30分に左からの仕掛けで鈴木唯の3点目につながるクロスをゴール右の半田陸(ガンバ大阪)に届け、その6分後にはミドルレンジから豪快な左足のシュートを決めるなど、印象的な活躍。鈴木海音(ジュビロ磐田)は出番がなかった。
元エスパルス鈴木唯人の確かな成長
鈴木唯は「自分自身、そんなあんまりしっくりはきてないんですけど、結果として勝てたことはよかった」と振り返り、周囲の評価とは裏腹に、自分に厳しく矢印を向けている。先制点につながるプレーは、鈴木唯の成長を象徴するシーンだった。その直前、鈴木唯はMFカルロス・アルカラスとイーブンボールの奪い合いになり、自身のファウルになると、直後に相手と睨み合いになった。
そこで怯むことなく、すぐに切り替えて相手のリスタートを奪い返して松木玖生(FC東京)へ。鈴木唯はメンタル的な強さも見せつけるプレーで佐藤恵允(ブレーメン)の得点を演出した。
一度はアルゼンチンに逆転されるが、鈴木唯は後半21分、右の半田からのパスをバイタルエリアで受けて、左足で豪快なミドルシュートを決めて2−2の同点に。チーム3点目となる後半30分の逆転ゴールも鈴木唯が起点となり、左サイドから松村が縦に仕掛けてゴール前にクロス。半田の折り返しを鈴木唯が押し込んだ。
半田とのイメージ共有について鈴木唯は「よく今までも何回も一緒にプレーしてますし、お互いのやりたいことがよく共有できている」と話す。清水に代表選手として帰ってきたことについては「正直、気にしないようにしてた」というが、2得点という結果を出せたことで「観に来た方には少しでも成長した姿を見せられたんじゃないか」と語った。
MF松村優太も左サイドで猛アピール
松村は「プロ初ゴールもこのピッチ。名前がアナウンスされた時に大きな拍手や歓声が聞こえてました」と喜びを語った。「ちょっと最初は試合に入るのが難しかった」というが、そこから「状況を見極めながら、自分の中でも、いい判断をしながらプレーできたんじゃないかなと思います」と振り返る。4点目のミドルシュートによるゴールも素晴らしかったが、3点目につながったプレーは松村の確かな成長を表している。
「冷静にファーにボールを置くようなボールだったと思うんですけども、ああいう判断の部分は、徐々に自分の中で成長している実感があります」
そう語る松村は所属クラブの鹿島では右サイドで出ることが多い。しかし、左サイドだと「利き足が右の分、カットインのしやすさだったりっていうのもあると思います」と言うように、左サイドならではの良さを出すこともできる。右なら三戸、左なら代表チームでも仲が良いという佐藤に加えて、現在は怪我で外れている斉藤光毅(スパルタ)が強力なライバルになる。
松村は「ここからサバイバルになると思うし、今日点取ったからって次入るか分からないし、そこまで自チームでしっかり活躍して、ここに戻ってきて、また結果を出せるように頑張りたい」と語った。鹿島では今季リーグ戦18試合に出ているが、スタメンは3試合。それでも岩政大樹監督は松村の成長を認めている。残りシーズンを良い形で締めくくり、来シーズンの開幕戦から主力として活躍できるかが、パリ五輪に向けたハイレベルな競争に勝っていくための鍵になる。
ジュビロ磐田で最終節の栃木戦にセンターバックで出場し、J1昇格を支えた鈴木海音は出番がなく「皆さんの注目度も高かった試合で、出られなかったのは実力」と語ったが、アルゼンチンとは完全非公開のトレーニングマッチが21日にあり、そちらでチャンスを得ているはずだ。
<河治良幸>
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。 サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。著書は「ジャイアントキリングはキセキじゃない」(東邦出版)「勝負のスイッチ」(白夜書房)「解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る」(内外出版社)など。
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。