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駿河湾サクラエビ秋漁終了 2022年振り返り

 近年、深刻な不況が続いている駿河湾サクラエビ漁の2022年秋漁が終了しました。総漁獲量は県桜えび漁業組合が資源回復を目的にした自主規制を開始した2018年以降、秋漁の中では最多となりました。2022年の春漁と秋漁の特徴について1ページで振り返ります。

秋漁最終日は強風で出漁せず 182トンで終了

 駿河湾で11月から続いていたサクラエビ秋漁が25日、漁期を終えた。最終日は強風を理由に出漁せず、期間中は計14日の操業で約182トンを水揚げた。由比漁港(静岡市清水区)と大井川港(焼津市)の1ケース(15キロ)当たりの両市場平均取引値は約4万6500円で、前年秋から大きな変動はなかった。

 初競りで6万円台後半を記録した後、12月初旬までは4万円台後半から5万円台前半で取引値が推移した。12月中旬以降は漁獲量が回復したことを受け、特に由比漁港で4万円台前半へと値が落ち着いた。地元の漁業関係者からは3万円台後半を予測する声もあったが、外食産業からの需要回復や円安による国産回帰の傾向が影響したとみられる。
 今秋の総漁獲量は県桜えび漁業組合が資源回復を目的にした自主規制を開始した2018年以降、秋漁の中では最多となった。実石正則組合長は「漁獲が上がり高値も落ち着いてきたが、来春もこの傾向が続くかが今後を左右する。慎重に資源回復の状況を見極めたい」と話した。(蒲原支局・マコーリー碧水ウイリアム)
 〈2022.12.26 あなたの静岡新聞〉

12月中旬に急回復 規制導入の2018年以降、最多漁獲

 25日に最終日を迎える駿河湾サクラエビ秋漁で、漁獲量が12月の操業で急回復し、好調に推移している。23日時点の総漁獲量は約182トン。県桜えび漁業組合が自主規制をスタートし、水揚げがゼロだった2018年秋以降では最多となった。実石正則組合長は「ようやく資源回復が確証に変わりつつある。ただ、まだまだ回復途上なので期待しつつ来春もしっかり資源状況を見極めたい」とした。

過去6年の年間漁獲量
過去6年の年間漁獲量
 例年、大井川沖を主な漁場とする秋漁は悪天候の影響で解禁から5日遅れの11月6日に初漁を実施したが、昨秋を下回る約3トンの水揚げと出だしは振るわなかった。11月中は海水温が下がらず、まとまった魚群が現れない漁に不適な環境の中、1日の漁獲高が数トン程度にとどまる日が続いた。
 12月上旬も同様の傾向が続き、さらに悪天候の影響で休漁が重なったが、同月9日、吉田町沖の「ウタレ」と呼ばれる漁場などで一挙に約36トンの水揚げがあった。続く11日の出漁でも約19トン、20日には約21トンと自主規制下の中でもまれな好調が継続。秋漁が始まってから計14回実施した操業のうち、12月の5回で約100トンを水揚げする結果となった。
 サクラエビは近年、深刻な不漁が続き、組合が操業場所や漁獲可能なエビの大きさを制限する自主規制を続けているほか、主産卵場に注ぐ富士川流域では河川環境改善のための市民運動が続く。自主規制導入前年の17年秋漁では320トンを水揚げした。(蒲原支局・マコーリー碧水ウイリアム)
 〈2022.12.24 あなたの静岡新聞〉

秋漁の操業条件を緩和 静岡県漁業組合が自主規制見直し

 ※2022年10月21日 あなたの静岡新聞から

サクラエビ
サクラエビ
 静岡県桜えび漁業組合(実石正則組合長)は(10月)20日、船主会を由比漁港で開き、11月に解禁するサクラエビ秋漁の自主規制内容を決定した。産卵場となるため最も厳しい規制値を設定していた湾奥富士川沖について数値を引き下げつつ、同海域で操業可能になった場合の隻数制限を新しく盛り込んだ。規制見直しについて実石組合長は「厳しい規制を耐えて、今も資源回復の途上にある。台無しにするようなことは絶対にしない」と強調した。
 サクラエビ秋漁では深刻な不漁への対策として来年卵を産むエビを保護しようと、海域ごとに操業可能な体長35ミリ以上の親エビの割合を決め、出漁時に試験網でエビを採取し規制値を超えているか調査してから操業している。今回は最多の75%以上としていた湾奥の規制値を50%へと見直した。合わせて1日当たりの操業隻数について、最大80隻としている他海域とは異なり湾奥では20隻までとした。そのほかの規制内容は前年を踏襲した。
 組合は2019年以降、資源回復を目的に自主規制を続けてきた。実石組合長は「資源回復に影響を与えないギリギリの線を見極めたい」と話した。今年の秋漁は11月1日から12月25日まで。(蒲原支局・マコーリー碧水ウイリアム)

春漁 回復基調で終了 自主規制後初の200トン超え

 ※2022年6月9日 あなたの静岡新聞から

サクラエビ水揚げ量の推移
サクラエビ水揚げ量の推移
 サクラエビの春漁が(6月)8日夜、終了した。水揚げ量は約202トン(出漁計23回)で、昨年の春漁約141トンに比べて1・4倍に増えた。県桜えび漁業組合(実石正則組合長)が記録的な不漁を受けて2018年秋から自主規制を導入して以来、初の200トン超えとなり、静岡市清水区由比の漁業関係者は「漁獲量が回復基調を見せ、漁師の努力が実を結びつつある」と話した。
 春漁は3月27日に解禁となったが、天候不順が続き当初は漁獲が伸びなかった。5月中旬に入ると一転して各日の漁獲量が10トンを超え、同16日には最多の約21トンを記録した。好天に恵まれたことで、静岡市清水区蒲原の富士川河川敷ではエビの天日干しで桜色に染まった光景が広がった。
 9日早朝には由比漁港(同市清水区)と大井川港(焼津市)で春漁最後の競りが開かれた。競りを見守った実石組合長は春漁について「自主規制をしつつ漁獲が増えるということは、分母となる資源も増えているのではないか。次の秋漁が楽しみだ」と総括した。

 ■「富士川環境改善で好影響」 漁業者ら指摘
 河口にサクラエビの産卵場がある富士川水系で2009年から続いた高分子凝集剤入り汚泥の不法投棄が19年に終わり、河川環境が大幅に改善したとの指摘が漁業者らから寄せられている。春漁に好影響を与えたとの見方が相次いでいる。
 「天然アユのはみ跡が十数年ぶりに見られる」と話すのは本流に漁業権を持つ芝川漁協の関係者だ。川底の石と石の隙間に入り込んでいた粘着質の泥が少なくなり、ケイ藻が生えるようになった。中流域でも水生昆虫類が確認されている。
 サクラエビ漁師によると春漁の主漁場は富士川の沖合で、河口にも群れがいた。「灰色だった川の泥が自然の茶色に戻ってきた」と話す。県水産資源課も「回復初期からさらに進み、回復基調になった」と指摘する。
 由比港漁協の宮原淳一組合長は「川がきれいになり、本来の海を取り戻しつつある。人間ができることについては今後も取り組むつもりだ」と話した。(サクラエビ異変取材班)
地域再生大賞