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こども病院ファシリティ犬 交代

 静岡県立こども病院で療養中の子どもや家族らを支えるファシリティドッグが「ヨギ」から「タイ」へ交代します。2010年に国内で初めて導入して以降、子どもたちに寄り添い、勇気を与えてきたファシリティドッグの活躍をまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・安達美佑〉

「ヨギ」と「タイ」 県庁で報告

 静岡市葵区の静岡県立こども病院で療養中の子どもや家族らを支えるファシリティドッグが交代するのを前に、9年間同病院に勤務した「ヨギ」と後任の「タイ」のハンドラー(指導者)らが1日、県庁に川勝平太知事を訪ね、活動を報告した。6日に同病院で引き継ぎ式を開き、ヨギは引退する。

川勝平太静岡県知事(中央)を訪問したファシリティドッグのヨギ(左)と後任のタイ(右)=1日午後、県庁
川勝平太静岡県知事(中央)を訪問したファシリティドッグのヨギ(左)と後任のタイ(右)=1日午後、県庁
 ファシリティドッグは、専門のトレーニングを受けた犬と看護師資格などを持つハンドラーが1組となり、入院中の子どもの手術やリハビリに付き添いケアに当たる。同病院が2010年に国内で初めて、認定NPO法人「シャイン・オン・キッズ」(東京都)からの派遣で導入し、ヨギは12年から2代目として常駐した。ヨギのハンドラー鈴木恵子さん(57)は「病院の日常の中に犬がいて子どもや家族に良い影響を与える環境を、ヨギが確立してくれた」と振り返った。
 後任のタイは、テニスボールで遊ぶのが大好きな2歳半のオス。6月に着任し、ヨギとともに子どもたちと関わってきた。ハンドラーを務める谷口めぐみさん(35)は「ヨギと鈴木さんの背中から多くを学んだ」と話した。坂本喜三郎院長も「ヨギは人間で言うと約60年にわたり病院に貢献してくれた。ファシリティドッグが安心感や安らぎを与えてくれている」と話した。
〈2021.09.02 あなたの静岡新聞〉

9年間勤務した「ヨギ」 子どもたちに安心やぬくもり届ける

 静岡市葵区の県立こども病院で、療養中の子供を支えるファシリティドッグ「ヨギ」が秋に引退する。これまで延べ2万7千人に安心やぬくもりを届けてきた。

秋に引退するヨギとハンドラーの鈴木恵子さん=6月下旬、静岡市葵区の県立こども病院
秋に引退するヨギとハンドラーの鈴木恵子さん=6月下旬、静岡市葵区の県立こども病院
 ヨギはオーストラリアで生まれ、2012年から同病院に常駐している。病棟を巡るほか、患者の要望に合わせて手術室に同行したり、検査や処置の間、寄り添ったりする。6月に、一般的に犬の身体機能の低下が顕著になるとされる10歳となり、後任の「タイ」への引き継ぎが進められている。
 「ヨギを見つけて患者も病院スタッフも笑顔になる。日々存在の大きさを感じた」。ヨギとともに引退するハンドラー(指導者)の鈴木恵子さん(57)は振り返る。この1年はコロナ禍で活動を制限せざるを得ないこともあったが、引退を前に会いに来てくれる子は多いという。
 引退後は鈴木さんの故郷の長野県で暮らす予定。鈴木さんは「たくさんの人に尽くしてきた。のんびりさせてあげたい」とほほ笑んだ。
〈2021.07.03 あなたの静岡新聞〉

「ヨギ」のハンドラー 鈴木恵子さん

 ※着任時、2015年のインタビュー記事から

ファシリティドッグ「ヨギ」の新任ハンドラー 鈴木恵子さん
ファシリティドッグ「ヨギ」の新任ハンドラー 鈴木恵子さん

 看護師として東京都内の病院と大手電機メーカーに計30年間勤務。今秋、県立こども病院(静岡市葵区)に常駐し患者に安らぎを与えるファシリティドッグ「ヨギ」のハンドラー(指導者)として活動を始めた。長野県出身。52歳。

 -なぜハンドラーを目指したのか。
 「看護師の経験を生かしつつ大好きな犬に関われる仕事を探していたところ、こども病院にヨギを派遣する認定NPO法人『シャイン・オン!キッズ』の活動を知った。今年、新たなハンドラーを募集していると知って、迷わず応募した」

 -どんな研修をしたか。
「ヨギがファシリティドッグになるための訓練をしたハワイから指導者を招き、指示の出し方をはじめ、犬の生態学や心理学、危機管理など幅広く勉強した」

 -病院での業務は。
 「全ての病棟を巡回するほか、要望があれば特定の患者の元に行く。採血時に手の震えが止まらなかった子がヨギを見て落ち着くことができた。ヨギは子どもたちの状況をよく理解していて、自分で判断して動いている」

 -抱負を。
 「子どもは宝。ヨギはその子どもたちの宝物になってほしい。ヨギが考えていることをくみ取って、子どもたちが前向きに治療に取り組めるようにしたい」
      ◇
 「性格とよく寝るところはヨギと似ているかも」と、好相性の様子。
〈2015.11.03 静岡新聞朝刊〉

国内初ファシリティ犬は「ベイリー」

 病院で療養する子どもたちを支える「ファシリティドッグ」として、2010年に国内で初めて県立こども病院(静岡市葵区)で活動を始めたゴールデンレトリバーの「ベイリー」が年内(※2018年)で引退する。これまでに関わった子どもは延べ2万4千人。ハンドラーの森田優子さん(36)は「院内にほわんとした雰囲気をつくり出し、前例のないことを成し遂げていった」と振り返る。

多くの子どもたちに寄り添ってきたベイリー(右)=4日、横浜市南区の神奈川県立こども医療センター
多くの子どもたちに寄り添ってきたベイリー(右)=4日、横浜市南区の神奈川県立こども医療センター
  ベイリーはオーストラリアで生まれ、米ハワイ州で訓練を受けて日本にやって来た。当時、海外の病院で導入例はあったが、日本では衛生面などから院内に動物を入れることへの抵抗が強かった。そんな中、効果に期待した同病院で活動がスタートした。
  「ベイリーと一緒なら」と検査や手術を乗り越えた子や、ベイリーに会うことを目標に術後のリハビリに取り組み回復が早まった子もいたという。医療スタッフにも癒やしを与えた。
  12年に神奈川県立こども医療センター(横浜市南区)に移り、昨年から後輩の「アニー」とともに活動している。既に10歳。犬では身体機能の低下が顕著になる年齢とされ、盲導犬なども10歳前後が引退の目安となっている。
  6月には「名誉ファシリティドッグ」となり、病棟への訪問は限定的になった。今後は同センターのボランティア団体の中で、触れ合いを主とした「ボランティア犬」として余生を過ごす。森田さんは「ずっと人のために働いてきた。長生きしてほしい」と願う。
〈2018.07.20 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞