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タケノコ王ってどんな人?

 テレビのバラエティー番組で活躍中の「タケノコ王」。その正体は、静岡県富士宮市でタケノコ農家を営む風岡直宏さん(49)です。2025年春のシーズンを最後に直売所「風岡たけのこ園」の閉店を決断していましたが、酷使した体が悲鳴を上げ、今年8月に引退時期を早めました。「最後まで最高の味を追い求め、伝説になって終わりたい」と仕事への情熱を燃やしています。引退の理由は…どんな人なのかな…と気になる方へ。1ページにまとめてみました!

「タケノコ王」直売所閉店へ 25年春までは全力疾走

※2023年5月19日あなたの静岡新聞より

「風岡たけのこ園」閉店への思いを語る風岡直宏さん=3月下旬、富士宮市長貫
「風岡たけのこ園」閉店への思いを語る風岡直宏さん=3月下旬、富士宮市長貫
 テレビ番組などで「タケノコ王」として親しまれる風岡直宏さん(49)が営む直売所「風岡たけのこ園」(富士宮市長貫)が、2025年春のシーズンを最後に閉店する。足に不調を抱えていることに加え、長期的な事業継続が難しいことから、タケノコの生産自体をやめると決断した。風岡さんは「タケノコ農家の仕事に命を懸けてきた。最後まで最高の味を追い求め、伝説になって終わりたい」と意欲を燃やす。
 風岡さんは01年から実家の竹林でタケノコ生産に従事。年間300日以上を山の管理と収穫に費やす。高値がつく「白子」と呼ばれる白いタケノコの量産に成功して注目を集め、地元地域をPRするためテレビのバラエティー番組にも出演するようになった。
 「夢は、生涯現役でタケノコ農家の仕事を全うすることだった」。だが、トライアスロン選手だった時に酷使した右足の状態が悪化し、4年前に1回目の手術を経験。さらに昨年12月の検査で、近い将来、再手術が必要と医師に告げられた。手術後は足の可動域が狭くなり、「アスリート並みに足を使うタケノコ生産は難しくなった」という。
 決断に至ったもう一つの理由は「将来、長男にタケノコ農家を継いでもらえるほどの収入が、現状で確保できていないこと」。風岡さんが栽培するタケノコはミシュランの星付き料理店で採用される一方、近年は客の高齢化による需要の低迷や交通事情の変化で売り上げが減少している。「周辺の旧芝川町エリアの他のタケノコ生産者に専業はおらず、高齢化も進んでいる。地域全体が将来的に厳しい環境」と語る。
 決断までに葛藤したが、「今は、すがすがしい気持ち。ゴールが見えたからこそ、あとは全力でやるだけ」と表情は明るい。閉店の告知を始めたのは、古くからの顧客や取引先への影響を最小限にするため。「閉店後のことはまだ全く考えていない。命を懸けられる仕事に、最高の仲間たちと一緒に取り組めて幸せだった」。タケノコ王は今季を含め3シーズン。全力で走り抜けるつもりだ。(生活報道部・大滝麻衣)

シャキシャキ食感♡こだわり「タケノコ王カレー」開発

※2021年8月17日あなたの静岡新聞より

タケノコのシャキシャキ食感が楽しめるレトルトカレーをPRする風岡さん=富士宮市長貫
タケノコのシャキシャキ食感が楽しめるレトルトカレーをPRする風岡さん=富士宮市長貫
 テレビのバラエティー番組に出演し、“タケノコ王”として親しまれている風岡直宏さん(47)=富士宮市長貫=がこのほど、真富士屋食品(静岡市)と共同で静岡県産タケノコを使ったレトルトカレー「タケノコ王カレー」を開発した。県産タケノコの普及促進や農家の所得向上を目指す。
 レトルトカレーはキーマ風。豚ひき肉のうまみに加え、大きく刻んだタケノコの存在感が目を引く。通常は商品性が低いというタケノコの根元に着目し、レトルトにすることでほどよい堅さを維持しタケノコの食感が楽しめる商品に仕上げた。
 パッケージは風岡さんのイメージカラーのピンクを全面に、自身も登場するインパクトあるデザイン。風岡さんは「タケノコが苦手な方にも感動を届けられる商品。すべてにこだわった」と語る。
 商品開発は風岡さんが日頃から交流のある福祉施設・市地域活動支援センターバンブーに収益を寄付することも目的の一つ。風岡さんが営む直売所にはセンターの利用者がタケノコ商品やサイン入り色紙を買いに訪れるといい、風岡さんは「商品開発を通じて彼らに恩返しがしたい。今後、彼らと一緒に仕事もできたら」と話す。
 「風岡たけのこ園」直売所(同市長貫)や量販店などで販売中。

元トライアスロンのプロ選手/タケノコにもプロ魂で挑む

 テレビのバラエティー番組に出演し、“タケノコ王”として親しまれる富士宮市のタケノコ農家、風岡直宏さん(47)。静岡市葵区の主婦(30代)から「不思議で魅力的なキャラクター。今後の夢やプライベートが気になる。テレビ出演の際によく着ているピンクのタンクトップについても聞いてほしい」との依頼が届いた。富士宮市の直売所「風岡たけのこ園」を訪ねると、生産に懸ける熱い思いを語ってくれた。

風岡直宏さん
風岡直宏さん

 ■“日本一の味へ 命懸け”
 2016年に経済紙で「タケノコで1億円稼いだ男」などと紹介された時、“タケノコ王”という見出しが付き、そう呼ばれるようになりました。農業は命そのものを扱う大切な仕事ですが、注目される機会は少ないです。テレビ出演を通じてタケノコ農家の仕事や、日本一の味を目指して命懸けで作っているタケノコを多くの人に知ってもらいたいと考えています。
 生まれ育った旧芝川町は、自然豊かで交通アクセスも良い魅力的な場所ですが、高齢化や過疎化が止まりません。残念ながら、同級生のほとんどがこの土地を離れました。なので、ここで一緒に新しいことに挑戦したいという人を全国から呼び込みたい、という思いも強いです。

 ■“プロ魂は前職から”
 タケノコ農家になって20年、年間300日以上を山の管理と収穫に当てています。「タケノコは勝手に生えてくる」と言う人がいます。でも、しっかりと研究した肥料を与え、適切に竹の伐採や草刈りを施した山のタケノコは、味が全く違います。私が育てたタケノコはあくが少なく、甘みが強い。ミシュランの星付き料理店でも採用されています。
 若い頃、トライアスロンのプロ選手でした。今はタケノコ農家のプロ。プロは「安定した成績を長年にわたって出す人」だと思います。タケノコは通常、豊作の表年と不作の裏年が1年交代ですが、私の山には裏年はない。プロとして、体の故障がないように気を付け、徹底した山の管理をしています。

普段はピンク色とは限りません

 選手時代、レースでピンク色のユニホームを着ていたため、テレビでは衣装として着ています。普段はピンク色とは限りません。ただ、春先からはタンクトップを着ることが多いです。もちろん、山では安全のため、袖付きの服を着ています。

風岡直宏さん
風岡直宏さん
 体が資本なので、毎晩午後8時には寝ています。お酒は飲みません。休みは少ないですが、伊豆シャボテン動物公園などにカピバラを見に行くのが好きです。自衛隊の活動をPRする富士宮市自衛隊協力会の会長を務めていて、戦車などに乗車させてもらえるのも楽しみの一つです。
 体を動かし、忙しく働く今の生活が好きです。生涯現役でタケノコ農家の仕事を全うし、後継者も育てられればと思っています。

 <Profile>
 かざおか・なおひろ 1973年、旧芝川町(富士宮市)生まれ。短大時代にトライアスロンを始め、23歳までプロチームに所属し、国内レースで13勝。足の故障で引退後は工場勤務などを経て、クワガタとカブトムシの養殖販売を手掛けた。2001年から実家の竹林でタケノコ生産に取り組み、「風岡たけのこ園」を営む。
地域再生大賞