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【1月1日から】浜松市の行政区再編 暮らしはどう変わるの?

 そういえば浜松の区再編って2024年1月からだった!?最寄りのスーパーで買い物中、レジ横の年賀状コーナーが目に入り、ハッとしました。ひょっとするとあの人の宛先も変わるかも。住所や選挙、区役所など浜松の暮らしに関わる情報を中心にまとめました。
⇒3区案内定までの経緯についてはこちら

【住所】統合される区は「中央」か「浜名」に 「天竜」はそのまま

 浜松市議会は22日の2月定例会本会議で、現行の7行政区を3区にする行政区再編関連条例案を原案通り可決した。2024年1月1日に施行する。中央区(現在の中、東、西、南区と北区三方原地区)、浜名区(現在の浜北区と北区の大部分)、天竜区(現行のまま)の3区となる。

行政区再編の区割と区役所などの位置
行政区再編の区割と区役所などの位置
 本会議では酒井豊実(共産党市議団)、波多野亘(自民党浜松)、鈴木恵(市政向上委員会)の3氏が反対討論に立ち、旧町村部の行政サービス低下への懸念などを指摘した。最大会派の自民党浜松は波多野氏以外の全員が賛成し、共産党以外の主要会派も賛成した。
 現在の中、浜北、天竜各区役所は存続し、その他の4区役所は行政センターと改称して住民へのサービスを維持する。事務作業の集約や区長、選挙管理委員の削減などで年間約6億5千万円の経費節減を見込む。
 市は節減額の一部を活用して地域課題に取り組むコミュニティ担当職員を拡充するほか、区政担当副市長の新設、区協議会の体制再編を通じて、住民に身近な問題解決力の強化を図るとしている。
 同市は05年に近隣11市町村を吸収合併し、07年に政令市に移行した。行政区再編は同年の現行7区発足後、市の行財政改革推進審議会(行革審)で「多すぎる」との答申を受け、市議会で議論を続けてきた。
(浜松総局・宮坂武司)
〈2023.2.22 あなたの静岡新聞〉

【選挙】27年市議選は3選挙区で実施 議員定数の議論も本格化

 浜松市議会(定数46)が議員定数に関する本格的な議論を始めた。現行7区が3区になる2024年1月1日の行政区再編に伴い、27年4月予定の次期市議選は前回選の7選挙区から新たな3選挙区で実施する。人口減社会での持続可能な自治体運営を目的に、紆余(うよ)曲折を経て市議会は行政区再編を決断した。自らも身を削り、議会改革を進めようと定数削減に積極的な意見がある一方、既に全国の政令市で定数が最少ということもあり、少数派や地域の意見をきめ細かく吸い上げられなくなることを危惧する声も根強い。

浜松市議会の定数の推移
浜松市議会の定数の推移
 10月中旬の市議会議会改革検討会議。要綱を定めた15年以降、非公開で行ってきたが、定数議論が市民に直結することから、透明性を高めるために初めて公開した。「まずは現在の定数が適正かを検証する。市民の共感が得られるよう、慎重、丁寧に進める」。加茂俊武委員長は狙いをこう説明し、今後も節目の協議を公開する方針を明示した。
 05年7月の12市町村合併前に計216人だった市町村議は合併に伴って65人となり、政令市移行後の07年に54人、11年に46人と段階的に削減して選挙を行った。現在は合併前の浜松市と同じ定数で、人口68万人の静岡市より2人少なく、相模原、岡山市と並んで全国20政令市で最少だ。議員活動を支える議員報酬や政務活動費も政令市で最少水準という。
 議員定数の議論は行政区再編を機に再燃した。人口減に伴って将来の税収減が予想される中、行政区再編を進める行財政改革の流れを受けて、定数の「削減」を訴える市議は多い。
 複数回当選の市議は「行政区再編を行うのだから削減は当然」と主張する。その上で「同時に住民自治の強化や市議のレベル向上も必要だ」と強調。別のベテラン市議は「議員が減ってもデジタル技術などを駆使することで活動自体はフォローできる。市民の信頼を得るためにも定数を減らすべき」と思いを語る。
 一方、他市との比較や、全国で2番目に広い市域などを理由に、削減に否定的な声もある。浜北区と北区の大半を併せた「浜名区」が選挙区となる市議は「行政区再編でさまざまな問題が浮上する可能性があり、今まで以上に議員の責務は増す。少数意見や地域の声を吸い上げ、市政に反映させる機能が低下する恐れがある」と現状維持を求める。若手市議も「広大な面積の浜松は地域ごとに課題が異なる。市民に不安を与えるのでは」と危惧する。
 市議会は外部有識者の意見も参考に議論し、25年5月に増減・維持の方針を、26年2月に3区の配分を含む定数の決定を目指す。  新3区への配分も課題
 浜松市議会(定数46)の議員定数を巡る議論は3区への配分も課題になる。
 各区の人口は2005年の合併前の浜松市域を中心とする中央区が約60万8000人と大多数を占めるのに対し、北区の大半と浜北区を合わせた浜名区は約15万6000人、現行政区を維持する天竜区は約2万5000人と規模が大きく異なる。
 現行7選挙区の定数配分などを基に条例で暫定的に定めた3区移行後の定数は中央区が34人、浜名区が9人、天竜区が3人。議員1人当たりの人口は天竜区が中央、浜名両区より9000人程度少なくなっている。
 公職選挙法では、定数は人口に比例して定めるとしている。ただ、特別の事情がある場合については人口を基準とし、地域間の均衡を考慮して定めることができると規定している。
 (浜松総局・宮崎浩一)

監視機能向上の議論 同時に
井柳美紀静岡大教授(政治学)の話

 議会改革で重要なのは行政の監視という議会本来の機能をいかに高めるかにある。行政区再編は行政運営の効率化を目指しているため、「ひずみ」が生まれる懸念もある。定数削減自体は有権者の賛同を得やすいが、削減する際は、この「ひずみ」を監視する機能をどのように担保するかも考えるべきだ。議会の監視機能が低下してはならない。多様な民意を集約できるのか、都市部以外の声をしっかりと反映できるのか、という観点も必要だろう。
〈2023.11.22 あなたの静岡新聞〉

【区役所】組織見直し サービス維持とコンパクト化を両立

 浜松市は来年1月1日の行政区再編に合わせて区役所組織を見直す。七つの区役所を三つにし、各区役所にある健康福祉部門の課を本庁健康福祉部内の「福祉事業所」「健康づくりセンター」に集約することで、区役所の課・第1種事業所を48から20に削減する。区役所や行政センターなどに本庁組織の出先グループや担当職員を配置し、住民サービスの質は維持させる。

浜松市・課相当の組織数の比較
浜松市・課相当の組織数の比較

 3区役所にはそれぞれ区振興、区民生活、まちづくり推進の3課を残す。これらの課長には現在の中区、浜北区、天竜区の各課長がそのまま就くため、異動対象者の人数には含めていない。三つの土木整備事務所は区役所など12カ所に職員を配置する。中山間地域の課題に取り組む中山間地域振興担当課長を市民協働・地域政策課内に新設する。
〈2023.12.1 あなたの静岡新聞〉

市民からは期待と不安の声「スピード感持って」「表記の変更負担」

 浜松市議会が行政区再編関連条例を可決した22日、これまで議論に関わった市民からは期待と不安が交錯するさまざまな声が上がった。事業者からは住所表記の変更に関する負担感も聞かれた。

浜松市の行政区再編を巡る主な経過
浜松市の行政区再編を巡る主な経過
 再編協議は市と市議会に加え、各区の区協議会や自治会連合会も意見交換に参加してきた。中でも、新たに「浜名区」となる現在の浜北区と北区では、区役所の位置や区名を巡って慎重な議論が繰り返されてきた。
 浜北区協議会の大石静夫会長(74)は「さまざまな経緯を経てここまでたどり着いた。(北区と)地理的な距離はあるものの一体感を持てるようになってほしい」と切望する。
 区役所が行政センターと改称される北区では、2005年の合併後の行政機能の後退が感じられるたびに不満が高まってきた。区協議会の戸田達也会長(64)は「市には市民サービスの継続や区の事業への支援など現時点の要望に応えてもらい、再編後に出てくる課題にもスピード感を持って対応してほしい」とくぎを刺した。
 「中央区」となる中区の住民からは、五つの区が一つになり、区役所の混雑を懸念する意見も。土地家屋調査士古橋敏彦さん(67)は「今もマイナンバーカードの手続きで連日行列ができている。もっと業務の効率を上げてもらわないと困る」と話した。
 市には住所表記の変更に伴う補助制度の有無を尋ねる質問が寄せられているが、現時点で補助は予定されていない。東区と浜北区でパン屋と飲食店計3店を経営する平出美香さん(54)は「はんこや領収書、商品に貼るシールなどで表記の変更が必要で、負担感はある。何が必要かを考え、準備を進めたい」と身構えた。

「改選後 再チェックを」 市議会
 浜松市の行政区再編は、鈴木康友市長が2011年の市長選で公約に掲げてから丸12年にわたる議論を経て、実現が確定した。市議会は「住民サービスを低下させない」との鈴木市長の説明を踏まえて議論を重ね、22日の採決で関係条例案を可決した。ただ、行政機能の低下を懸念する反対討論が相次いだほか、賛成した議員にも葛藤が見られた。市は引き続き、市民の不安の払拭に努める必要がある。
 市は再編で削減するのは区長ら管理職と区選挙管理委員が中心で、市民生活への影響はほとんどないと説明する。市議会特別委員会は60回を超える会合で、この説明内容を吟味してきた。それでも不安の声が絶えないのは07年の政令市移行以来、16年間にわたる鈴木市政の行財政改革で旧町村部にある出先機関の職員が減り続け、住民の声が届きにくくなってきたからだ。
 賛成した北区の市議の1人は採決前、「市の説明をそのまま信じていいのか、最後まで迷っている」と漏らした。市議の間では4月の市長選と市議選を経て来年1月1日の再編施行まで、特別委を再度設置して、細部の議論を続けるべきとの意見が目立つ。これまで特別委を主導してきた高林修委員長は「全議員が納得したとは思っていない。より良い再編にするために(市議の)改選後、あらためて内容をチェックすべきだ」と指摘する。
(浜松総局・宮坂武司)
〈2023.2.23 あなたの静岡新聞〉
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