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⚽ジュビロ磐田 劇的自動昇格! 1年の歩み振り返ります

 サッカーJリーグ2部(J2)最終節の12日、3位のジュビロ磐田は栃木SCを下し、J1自動昇格を決めました。今季は選手契約を巡る補強禁止処分を受けるなど厳しい局面が続きましたが、最後の最後に自動昇格争いを制しました。ジュビロ磐田の1年の歩みをまとめました。

⚽決めた!J1昇格 磐田が栃木に2ー1、逆転で2位

 サッカーJリーグ2部(J2)は12日、栃木県のカンセキスタジアムとちぎなどで最終節11試合を行った。3位のジュビロ磐田は栃木SCを2ー1で下して勝ち点を75に伸ばした。2位の清水エスパルスが水戸ホーリーホックに1ー1で引き分けて勝ち点74にとどまったため、磐田が逆転で2位となりJ1自動昇格が決まった。

J1昇格を決め、喜びを爆発させるジュビロ磐田の選手と横内昭展監督(右端)
J1昇格を決め、喜びを爆発させるジュビロ磐田の選手と横内昭展監督(右端)
 磐田のJ1復帰は22年以来2季ぶりとなる。清水は自動昇格を逃しプレーオフに回る。
 磐田は前半24分に先制されたが、同41分にMFドゥドゥのミドルシュートで同点。さらに後半16分、MF松本昌也が頭で合わせて勝ち越した。
 
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ジュビロ磐田 2023年順位の推移

1年前に流した涙 J1最下位確定で降格、奇跡ならず

 サッカーJリーグ1部(J1)は29日、大阪府吹田市のパナソニックスタジアム吹田などで第33節9試合を行った。最下位のジュビロ磐田は17位のガンバ大阪に0-2で敗れ、11月5日の最終節を残して2019年以来3年ぶり3度目の2部(J2)降格が決まった。今季J1に復帰した磐田だが、わずか1年でJ2に戻ることになった。

G大阪―磐田 後半28分、磐田はG大阪・パトリック(右から2人目)に追加点を奪われる=大阪・パナスタ(写真部・小糸恵介)
G大阪―磐田 後半28分、磐田はG大阪・パトリック(右から2人目)に追加点を奪われる=大阪・パナスタ(写真部・小糸恵介)

②パナスタ(G大阪1勝1分け)▽観衆27988人
G大阪 9勝9分け15敗(36) 2(0―0 2―0)0 磐田 6勝11分け16敗(29)
▽得点者【G】食野(2)パトリック(5)

 【評】磐田は好機を生かせず、G大阪に完敗した。
 磐田は前半、自陣でブロックをつくりながら好機を待った。前半28分に相手のミスから決定機を迎えたが、FW杉本が決められなかった。41分の相手の決定機はMF松本が体を張って防ぎ、前半を無得点で折り返した。
 後半は互いにゴール前で好機を外していたが21分、相手にサイドから中央に運ばれて先制を許した。28分にも追加点を奪われ、選手交代で局面の打開を図ったが実らなかった。

イレブン涙「ゼロからやり直す」 今季象徴、遅すぎた逆襲

 J2降格を告げる無情の笛が鳴ると、磐田の選手はぼうぜんと立ち尽くし、動くことができなかった。MF鈴木は「実力不足。結果を受け入れるしかない」と涙を流した。
 先に失点すると挽回できない、今季を象徴するような展開だった。前半から質の高いクロスは上がるが、ゴール前の精度を欠き、決定機を外し続けた。
 2点を取られた残り15分余りで、渋谷監督は慌てて好調なMF古川、DF松原を含めて3人を一挙に投入した。だが、出遅れを取り戻すにはあまりに時間が少なすぎた。
 成績不振を理由に解任された伊藤前監督からチームを引き継ぎ、8月に就任した渋谷監督は戦い方を簡略化させ、就任後7試合で勝ち点7と粘った。特に直近4試合は7得点で4戦負けなしと復調の兆しが見えたが、巻き返しが遅かった。指揮官は「このような結果になり申し訳ない」と頭を下げた。
 外国人選手の契約問題で国際サッカー連盟から来年の補強禁止処分を受けるなど、スポーツ仲裁裁判所から裁定が出るまで不透明な状況が続く。藤田スポーツダイレクターは来季の補強に向けて「全く動けない。解決すべき課題を整理して備えるとしか言えない」と表情を曇らせた。裁定次第では既に決まっている大学生の内定取り消しも危惧される。
 「来年ゼロからやり直す。一貫性を持ってチームづくり、クラブづくりをしなければいけない」とMF山田。J2から出直す来季はいばらの道が待ち受けている。

ジュビロ磐田の沿革
 母体は1972年創部のヤマハ発動機サッカー部。93年ジャパンフットボールリーグ(JFL)で2位となり、94年からJリーグに参入した。年間優勝は97、99、2002年の3度。リーグカップ戦優勝は1998、2010年の2度。天皇杯優勝は03年度。1999年アジアクラブ選手権、アジアスーパーカップ優勝。2014、15、20、21年はJリーグ2部(J2)。
 ジュビロはスペイン語やポルトガル語で「歓喜」の意味。運営会社はジュビロ。クラブカラーはサックスブルー。ホームタウンは磐田市。
<2022.10.30 あなたの静岡新聞>

補強禁止処分 ジュビロ磐田の訴え棄却 スポーツ仲裁裁判所

 サッカーJリーグ来季2部(J2)のジュビロ磐田は23日、ファビアンゴンザレス選手(30)の契約を巡り、国際サッカー連盟(FIFA)から来季の補強禁止などの処分を受けスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴していたが、訴えを棄却されたと発表した。クラブは「申し立てが認められなかったのは遺憾だが、CASの判断に従いスポーツ制裁を受け入れる」とした。


 発表によると、クラブ側が10月19日にCASに提訴した件について、今月20日に審問が行われ、22日に申し立て棄却の判断が下された。CASが訴えを棄却した理由は現時点で明示されていない。
 この判断を受け、クラブは「結果を非常に重く受け止め、ガバナンス体制を改めて見直し、再発防止を図る」とコメントした。
 クラブによると、2021年から加入したゴンザレス選手は前所属クラブ退団後、磐田との契約締結前にタイのクラブと取り交わした契約があったとされ、FIFA規則に違反するとの指摘を受けた。磐田はタイのクラブとの契約を認識しておらず、引き抜きには当たらないと主張していた。FIFAの決定内容は、ゴンザレス選手と磐田が連帯してタイのクラブに約5万ドルを支払うよう命じたほか、ゴンザレス選手の4カ月間の公式戦出場停止処分があった。

降格に加わった痛手 信頼回復へ復権の道を
 ジュビロ磐田に対する国際サッカー連盟(FIFA)の厳しい決定は覆らなかった。
 問題が発覚した当初、クラブ幹部は空手形で選手獲得に動くこともできず「絶望的」とクラブが置かれた状況を嘆いた。今季、ベテラン中心の編成で夏場に失速し、J2に降格した磐田にとって、新たな若い戦力を補強できないのは致命的。来季加入が内定していた大学生FWの仮契約を解除せざるを得ず、Jリーグ他チームに流れたのも大きな痛手だ。このままでは1年でのJ1昇格はおろか、J2での上位確保さえ危ぶまれる事態だ。
 問題の余波はトップチームだけでなく、小中高校生の育成年代にまで及んでいる。各年代のチームはこの問題の影響で1年間、日本サッカー協会への登録が必要な大会や活動に参加できない旨を伝えた上で選手募集を行っていた。この年代の戦力に大きな穴が開く事態は避けられない。
 クラブ創設30年目の来季、J2で戦う磐田。戦力補強のできない来季はチーム内の若手育成の好機とも言える。苦戦を強いられても一歩ずつ着実に、信頼回復と復権への道を模索するしかない。
<2022.12.24 あなたの静岡新聞>
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