静岡県議辞職で幕引き 戦後最年少当選の中山氏 無免許運転発覚
4月に戦後最年少の27歳で静岡県議に初当選した中山真珠氏。当選からわずか4カ月後、軽乗用車を無免許運転し、議員辞職しました。県政史上初となる辞職勧告決議案が可決される見通しでしたが、辞職願を提出し、一度も議会に経緯を説明することなく職を辞しました。問題の経緯をまとめました。
8月に発覚 所属政党に離党届
4月の静岡県議選で戦後最年少当選を果たした静岡市清水区選出で国民民主党の中山真珠氏(28)が、静岡市内で無免許運転をしていたことが8月5日分かった。同日離党届を提出したという。
![中山真珠氏](/news/images/n132/1314710/IP230808TAN000023000_0001_CDSP(2).jpg)
中山氏は4月の県議選に出馬し、27歳で初当選した。静岡新聞社の取材に「社会人としての自覚のなさが今回の事態を招いた。反省し、重く受け止めている」と述べた。県議としての進退は、今後関係者と話し合って決めるという。
〈2023.08.06 あなたの静岡新聞〉
「代行を利用」と虚偽説明 元所属会派は辞職勧告案
中山真珠静岡県議(静岡市清水区、無所属)が運転免許の失効に気付きながら車の運転をしていた問題で、中山県議が当時所属していた県議会第2会派ふじのくに県民クラブの有志は8月23日までに、県議会9月定例会に中山県議の辞職を求める辞職勧告決議案を提出する方向で検討を始めた。中山県議が問題発覚直後に同会派に「運転代行を利用した」などと虚偽の説明をしていたことが判明したとして、事態を重く見た。
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関係者によると、中山県議は免許失効を自覚した後の8月2日、自ら車を運転して中部運転免許センター(同市葵区)に行き、帰りも運転している姿が防犯カメラなどで確認された。22日から23日にかけて帰路での無免許運転が報道された。
ふじのくにの田口章会長は23日、中山県議に「己の非を恥じ、潔く辞職すべき」と求めるコメントを発表。「虚偽説明をそのままお伝えし、このような事態を招いたことを深くおわび申し上げる」と陳謝した。
同会派幹部によると、田口会長や会派の倫理審査会の複数人がリモートで行った聞き取りに対し、中山県議は運転免許センターからの帰りは「車を運転していない。運転代行を利用した」と説明。幹部は運転免許センターで職員に免許失効を指摘された後は、4日まで自分で運転していないとの説明を受けたという。
中山県議は20日付で体調不良のため休養を要するとの診断書を議会事務局に提出している。田口会長は今後、本人に強く辞職を促すとともに「その意思が示されない場合には、辞職勧告を含め毅然(きぜん)たる対応を取らざるを得ない」とした。
同会派幹部は、所属議員の総意として同決議案を提出したいとしているが、意見がまとまらない場合は有志で提出することを視野に入れている。
〈2023.08.24 あなたの静岡新聞〉
発覚から1カ月で辞職願、議長が許可 異例の郵送で辞表提出
静岡県議会の中沢公彦議長は9月8日、中山真珠県議(28)=静岡市清水区=の辞職を許可した。6日に代理人を通じてメールで辞職の意向が示され、8日午前に書面が郵送で届いた。辞職は6日付。
![中山真珠氏](/news/images/n132/1314710/IP230906TAN000141000_O.jpg)
中山氏は6日、代理人を通じて議会事務局宛てに辞職願などをメールに添付する形で送って辞職の意向を伝えていた。8日に郵送で辞職願が県議会事務局に届いた。議会事務局によると、郵送での辞表提出は過去に例がないという。中山氏は8月8日の会見後、休養を要するとの診断書を提出し、一度も県議会に経緯を説明することなく職を辞した。
中山氏の辞職で、県議会(定数68)は欠員1の67人となる。会派構成は自民改革会議41人、ふじのくに県民クラブ17人、公明党県議団5人、無所属4人。
欠員1となっても、県議会6月定例会で1票差で否決された知事不信任決議案の可決要件は「51」のまま変わらない。補欠選挙は、静岡市清水区選挙区でさらに欠員が生じなければ、2025年の知事選と同時に行われる。
〈2023.09.09 あなたの静岡新聞〉
視座(8月14日)信頼回復への道険しく 中山県議の無免許運転
静岡市清水区選出の中山真珠県議(28)が運転免許を失効していたにもかかわらず、軽乗用車を運転していたことが分かった。中山氏は所属していた国民民主党を離党せざるを得なくなった上、県議会第2会派のふじのくに県民クラブからは除名処分を受けた。事実関係を認めて謝罪したが、県議の職にはとどまる意向を示している。最大会派の自民改革会議は辞職勧告決議案を提出する方針だ。決議案は可決されたとしても法的拘束力がなく、中山氏が県議を続けることは可能だが、その場合、厳しい批判にさらされることは避けられない。
進退は本人が決めることだが、職にとどまるとすれば、信頼回復への道は相当険しいと覚悟すべきだ。批判の声によくよく耳を傾けて最終的な判断をしてもらいたい。
中山氏の説明などによると、免許証の更新期限は5月16日だったが、住所変更手続きを怠っていたため気付かず、今月1日に身分証が必要になったことで、期限を過ぎていたことを初めて自覚した。2日には自分で運転して運転免許センターに向かったが、時間外で手続きができなかった。4日も仕事で運転し、横断中の歩行者の通行を妨げたとして警察官に声をかけられたことで無免許運転が発覚した。
中山氏は大阪市出身。4月の県議選に、戦後最年少の27歳という若さで初当選した。国民の公募に応じて党の県議選候補となり、5期を務めて引退した県議の後継として清水区選挙区から出馬。定数4を5人で争い、1万4千票余りを得て3位で議席を確保した。大学時代からNPOで子供の貧困対策などに取り組んだ経験がある。女性議員が少なく、若者の政治参加も課題になっている県議会にあっては、周囲の期待も大きかったはずだ。
残念なのは、中山氏が政党や県議会会派に属していたにもかかわらず、組織の若手議員を育成する機能が十分に働いていなかったことだ。4月の県議選の後にどのような指導を行ってきたのか定かではないが、真っ先にたたき込まれるべき責任の自覚や順法意識が十分でなかったことは、今回の経緯を見れば明らかだ。結果、国民やふじのくには貴重な人材をみすみす失った。党、会派として真しん摯しに反省する必要がある。
静岡県議会では7月、川勝平太知事の給与返上問題を巡って自民が不信任決議案を提出した。ふじのくにの反対で可決に必要な51票に1票足りず、否決されたばかりだ。仮に中山氏が辞職したとしても、自民側が直ちに不信任案を可決できる状況になるわけではないが、職にとどまった場合、計算上は中山氏が賛成に回れば可決されることになる。
川勝知事と自民の対立が続く中、一人の議員の不適切な行動が県議会の不安定さを増す要因になり得ることは、中山氏も自覚しておくべきだろう。進退を含め、この問題が県政にどう影響するのかしっかりと見届ける必要がある。
(論説委員長・橋本和之)
〈2023.08.14 あなたの静岡新聞〉