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廃校プールが養殖場に変身 “沼津産”海ブドウ商品化 経緯は

 2021年3月に閉校した沼津・旧内浦小学校の25メートルプール跡で沖縄県の名産「海ブドウ」の陸上養殖が行われています。長泉の企業が昨年10月に本格稼働し、苗から沼津で育てた海ブドウは今月20日、出荷開始されました。
 商品化に至るまでの経緯を1ページでまとめます。

長泉の企業が挑戦 学校プールの排水設備活用

 沖縄県で海ブドウの養殖を手がける企業が、昨年閉校した沼津市の旧内浦小のプール跡で“沼津産海ブドウ”の陸上養殖に取り組んでいる。(※2022年10月)4日には「しずおか海ぶどうLABO.(ラボ)」と名付けた施設で初の植え付け作業が始まり、本格稼働した。11月中旬にも沼津産の初出荷を目指す。

植え付けネットに海ブドウの苗を広げる永井良太社長(右端)ら=4日午後、沼津市内浦三津の旧内浦小
植え付けネットに海ブドウの苗を広げる永井良太社長(右端)ら=4日午後、沼津市内浦三津の旧内浦小
 プール跡での養殖に乗り出したのは「Rカンパニー」(長泉町)。三島市内で飲食店を経営していた同町出身の永井良太社長(37)が5年前、沖縄県宮古島市に移住。2018年から同市で海ブドウの養殖を始めた。
 永井社長が本州での事業拡大を考えていた際、沼津市が、養殖場に適した排水設備が備わる旧内浦小プールを活用する事業者を募集しているのを地元の知人から教わり、応募した。
 同社は長さ25メートル、幅13メートルのプールを市から借り、今年7月からプール跡に8基の小さなプールや、内浦漁港からくんだ海水を循環させる装置を設置した。水温を適温の24度以上に保つため、ビニールハウスも設けた。初の母草(苗)の植え付け作業では、縦1メートル、横1・5メートルの2枚のネットに母草を広げて挟み、プールに沈めた。約40日で成長し、出荷できるという。
 既に宮古島で生産した海ブドウを沼津に運んでプールで養生し、7月末から製品の出荷を始めている。庄司昌弘場長(41)は「養生した海ブドウはいい食感に育った。養殖した母草も順調に育ってほしい」と願う。
 出荷した製品は、JAふじ伊豆の直売所18カ所で販売している。既に100グラム入りのパックを1200個販売し、評判も上々。“完全沼津産”の海ブドウも販売する予定だ。
(東部総局・尾藤旭)
〈2022.10.5 あなたの静岡新聞〉
※肩書等、当時のままです
 

苗から育てた「完全沼津産」出荷スタート 限定販売も

 沼津市の旧内浦小プール跡を活用した海ブドウの陸上養殖場「しずおか海ぶどうLABO.(ラボ)」で8月20日、苗から沼津市内で育てた〝沼津産〟の海ブドウの出荷が始まった。21日に三島市谷田のJAふじ伊豆直売所「みしまるかん」で20パック限定で販売する。

出荷する海ブドウの出来栄えを確認する庄司場長=沼津市の旧内浦小
出荷する海ブドウの出来栄えを確認する庄司場長=沼津市の旧内浦小
 陸上養殖に取り組むのは、沖縄県宮古島市でも海ブドウ養殖を手がける長泉町の「Rカンパニー」。昨年7月にプール跡を沼津市から借り、ビニールハウスや養殖用の小さなプールを設置した。同年10月から本格的な養殖を始めたが、機器の不調などで出荷には至らなかった。これまでは宮古島市の養殖場で収穫した海ブドウを沼津に運び、一定期間プールに入れて出荷できる状態にして販売してきた。
 
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 今回販売するのは、5月末~7月に沼津で植え付けた約1・6キロ。20日はパック詰めを行った。養殖場の庄司昌弘場長(42)は「沼津産がようやく出荷できホッとしているが、収穫量はまだまだ。皆さんの期待に応えられるよう量を増やしていきたい」と話した。
 今回の販売価格は1パック(80グラム)550円。今後は収穫量に応じて他の店舗にも出荷する計画で、価格は変動する見込み。
(東部総局・尾藤旭)
〈2023.8.21 あなたの静岡新聞〉

プールの飛び込み台が残る 海ブドウの陸上養殖場の様子【写真】

 

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ビニールハウスを設置して海ブドウ養殖場「しずおか海ぶどうLABO.」に生まれ変わった旧内浦小プール=17日午後、沼津市内浦三津

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ネットに敷き詰めて挟み込んだ海ブドウの「母草」を水槽に沈めて養殖する

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歴史民俗資料館の移転も予定されている旧内浦小=沼津市内浦三津

(東部総局・尾藤旭)
〈2022.10.23 静岡新聞「YOMOっと静岡」 2023.6.23あなたの静岡新聞より〉
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