知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

あたたかみ紡ぐ仲見世商店街 老いも若きも集える沼津市中心街

 沼津市などは、JR沼津駅付近高架化に伴い中心市街地の回遊性向上に向けた社会実験を行っています。マルサン書店などが店を連ねる沼津仲見世商店街では、「オープンヌマヅ」と呼ばれるイベントも行われ、週末のにぎわいも。各地の商店街の衰退が進む中、活性化の取り組みが進む仲見世商店街の今をまとめてお届けします。

月替わりのテーマで週末にぎわい「オープンヌマヅ」

 沼津市などは7月14日、JR沼津駅付近高架化に伴う中心市街地の回遊性向上に向けた社会実験「オープンヌマヅ」の第3弾を沼津仲見世商店街で始めた。12月下旬までの長期間、路上に休憩スペースを設け、日常的な利用状況を検証する。

路上に設けた休憩スペースで音楽演奏が行われた社会実験「オープンヌマヅ」=沼津市の沼津仲見世商店街
路上に設けた休憩スペースで音楽演奏が行われた社会実験「オープンヌマヅ」=沼津市の沼津仲見世商店街
 実験は旧マルサン書店仲見世店と駐車場「仲見世パーク2」前にテーブルや椅子を設置。16日までは「ミュージック」をテーマに、市内の音楽グループが路上で演奏し、飲食店4店が軽食を販売する。12月まで月替わりでテーマを決め、月1回週末にテーマに沿った市内の店舗が出店する。
 市などから委託を受け、イベントを企画運営するまちづくり会社「レイバー」(同市)の鈴木智博代表は「毎月違うテーマで展開することで、まちづくりに携わる人が増えていけば」と期待した。

「ラブライブ!」聖地 旧マルサン書店 棚や装飾品譲渡
 沼津市のコミュニティースペース「循環ワークス」(山本広気代表)は16日まで、2022年5月に閉店したマルサン書店仲見世店(同市大手町)で使用したブックエンドやテーブルなどを同店跡地で無償譲渡している。市などが沼津仲見世商店街で実施している社会実験「オープンヌマヅ」の関連事業。
 同店は沼津を舞台にした人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン‼」の“聖地”として知られる。循環ワークスは店で不要になった棚や装飾品などを引き取り、展示譲渡している。今後も12月まで、月1回開かれる社会実験のイベントに合わせ、同店や市中心部で閉店した店舗で不要になった物品を並べる計画。
 山本代表は「店側も不要品は費用を払って処分している。まだ使えて捨てられる品を、使いたい人につないでいきたい」と話した。
(東部総局・尾藤旭)
〈2023.7.15 あなたの静岡新聞より〉

社会実験活用、地域で思いつながり循環 馴染みの店の骨とう並ぶ「カンカンマーケット」

 地域で愛された居酒屋を次代につなげようとの動きが地元沼津市で始動した。8月18日、店で使っていた食器や道具などを常連客や新たに開業する人らへ無償配布する取り組みが行われた。一つ一つに込められた店主の思いや、店の雰囲気を継承する。

居酒屋「相棒」で使われた食器などを無償提供するイベント「カンカンマーケット」=沼津市大手町の旧マルサン書店仲見世店
居酒屋「相棒」で使われた食器などを無償提供するイベント「カンカンマーケット」=沼津市大手町の旧マルサン書店仲見世店
 46年の歴史に幕を閉じたのは、中心街の同市大手町の居酒屋「相棒」。6月30日に店主宮本昌国さん(74)が急逝し、閉店した。昌国さんと妻の緑さん(75)が出迎え、地酒「白隠正宗」を提供する居酒屋として、多くのファンに愛された。「(昌国さんは)包丁を握れて味を維持できれば、80歳まで仕事を続けたいと話していた」と緑さんは振り返る。
 店を次代にも知ってほしいと、常連客らが動いた。18日から沼津仲見世商店街で実施している市街地活性化に向けた社会実験「オープンヌマヅ」で、不用品を無償配布するイベント「カンカンマーケット」(循環ワークス主催)に食器などを出品することを提案した。
 会場の旧マルサン書店仲見世店では、食器を手に取り、店の看板と記念撮影する来場者でにぎわった。約1年前から店に通ったイラストレーターのマツナガマサエさん(41)は「緑さんが準備する食器の種類で、昌国さんが注文を把握していたと聞いた。人柄も料理も大好きな店だったのでさみしい」と惜しむ。
 食器は新たに開業する飲食店にも引き継がれる。同市添地町で立ち飲み屋「ITA酒場」を9月に開く板坂直美さん(43)は「相棒をはじめとする沼津の飲み屋街の雰囲気に魅了され、神奈川からの移住を決めた。沼津の歴史と思いが詰まった食器を新しい店で使わせていただく」と話す。
 緑さんは「夫は晩年、お客さんに恵まれて幸せと話していた。開店当初から使った食器も多いので、使っていただければありがたい」と感謝を述べた。
(東部総局・菊地真生)
〈2023.8.19 あなたの静岡新聞より〉

スタートは焼け野原、商店街発展と再生への歩み

 静岡県東部の「商都」沼津市を代表する商店街、沼津仲見世商店街。戦前は駅前通りの裏通り的な存在だった。戦後、空襲で焼け野原になった街に青空市場が出現すると、徐々に商店街として形成されていき、1953(昭和28)年に「仲見世通り」と名付けられた。

photo01
 
photo01
 
㊤いま 七夕まつりの飾りがつるされた沼津仲見世商店街。アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の“聖地”として訪れるファンの姿も見られる=沼津市大手町
㊦むかし お中元商戦でにぎわう1962年ごろの沼津仲見世商店街。アーケードができたばかりの七夕まつりの飾りは、今よりシンプル(沼津市提供)

 56(昭和31)年には沼津の夏の風物詩となっている七夕まつりがスタート。61(昭和36)年にはアーケードが完成し、高度経済成長期には商店街やその周辺に十字屋、丸井などの大型店が出店。にぎわいは最盛期を迎えた。
 バブル経済の崩壊や郊外型店舗の出店で、90年代から2000年代初頭にかけて大型店は相次いで撤退。再開発の起爆剤となるはずのJR沼津駅高架化は足踏みを続けた。その後は徐々に店舗や人通りも減少したが、高架工事が始まったのに呼応し、マルサン書店の旧仲見世店(旧十字屋)周辺で再開発の動きが始まっている。
 仲見世商店街が高校への通学路だった望月大樹さん(45)は昨年から今年にかけ、商店街に飲食店と韓国食品店を出店した。「再開発には時間がかかる。それまで中高生から親世代が集い続ける商店街にするため、小さな店が頑張りたい」とにぎわい復活へ意気込む。
(東部総局・尾藤旭)
​〈2023.7.3 あなたの静岡新聞より〉

誰でも立ち寄りやすい店に 韓国食品店オープン

 沼津市のJR沼津駅南口の沼津仲見世商店街に静岡県東部では珍しいという韓国の食品を販売する専門店がオープンした。商都沼津の象徴の一つだった同商店街は、大規模郊外店の進出で近年は衰退が顕著。同店関係者は「にぎわい創出につなげたい」と意気込む。

沼津仲見世商店街にオープンしたチャンマート=沼津市
沼津仲見世商店街にオープンしたチャンマート=沼津市
 店は「CHAN MART(チャンマート)」。菓子やドリンクなど手軽に購入できる商品も多く、先月29日のオープン以降、若者を含め幅広い世代の人気を集めている。
 キムチやチャンジャといった定番商品に加えて、人気が高まっているグミやスナック菓子、ジュースも並ぶ。チヂミやハットグなどの冷凍食品、麺類、調味料もそろう。化粧品も扱う。
 隣で居酒屋を運営する「あした葉」がオープンした。紳士服店だった約200平方メートルの店舗を借り、その半分で昨年居酒屋を開業。残りの空間を活用し、サラリーマンや高齢者が多い同商店街に中高生を呼び込もうと考えた。商品ラインアップを充実させ、立ち寄りやすい店舗づくりを心がけた。
 同商店街は高校への通学路だったという望月大樹社長(45)は「中高生の憧れの場所だった」と振り返る。新店舗が「歩くきっかけをつくり、にぎわいを生むとうれしい」と話す。
(東部総局・矢嶋宏行)
〈2023.5.7 あなたの静岡新聞より〉
地域再生大賞