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伊豆中央道・修善寺道路 料金徴収期限が延長に 経緯まとめ

 伊豆地域の住民の生活道路としても利用されている有料道路、伊豆中央道と修善寺道路。この2つの道路の料金徴収期限について、10月の期限を前に2057年3月8日まで33年延長されることになりました。2つの道路の料金徴収期限延長を巡る問題の経緯を振り返ります。

料金徴収期限33年5カ月延長 2057年3月まで

 静岡県は5日の県議会建設委員会で、伊豆地域の有料道路、伊豆中央道と修善寺道路の新たな料金徴収期限を2057年3月8日とする方針を明らかにした。現行の23年10月2日から約33年5カ月延長する。

 利用者の利便性向上のため設ける自動料金収受システム(ETC)の導入時期は26年度を予定しているとした。山梨義之道路企画課長は「速やかに高速道路会社と県道路公社との間で基本計画の策定を進め、詳細な設計や工事を行う。一日も早い導入を目指す」と述べた。徴収期限延長の理由として、トンネル・橋りょうの大規模修繕が見込まれることや、無料化した場合に交通量が大幅に増加することを挙げた。
 地元住民向けの新たな料金割引制度については「対象や割引内容などいくつかの組み合わせがあり、実現可能性を確認しながら決めていきたい」と説明した。伊豆市、伊豆の国市、函南町で生活道路への流入対策にも取り組む。
 国道414号静浦バイパスの未整備区間有料化について、利用料金を普通自動車で200円とする方針も明らかにした。近接する伊豆中央道、修善寺道路と一体的な道路と位置付け、早期整備を促進する。有料道路とすることで整備期間を30年から15年短縮できるという。
(経済部・森田憲吾)
〈2023.7.6 あなたの静岡新聞〉

共通回数券の販売箇所拡大 下田市役所で7月20日から販売

 静岡県道路公社は、有料道路「伊豆中央道」と「修善寺道路」の共通回数券を7月20日から下田市役所で販売すると発表した。料金徴収期限の延長が決まったことを受け、地元住民の利便性向上を図る。県によると、賀茂地域の他の自治体や熱海市、伊東市にも販売箇所を広げる。

 回数券は160回分で、普通車は1万6250円、軽自動車は1万3千円。下田市役所建設課と観光交流課で平日午前8時半から午後5時まで販売する。通常の通行料金は普通車200円、軽自動車160円。
 回数券の販売は現在、料金所や伊豆市役所、伊豆の国市役所、周辺のコンビニなどに限られ、賀茂地域では取り扱っていなかった。徴収期限延長に関する地元説明会で要望があり、県は県議会6月定例会で下田市役所を皮切りに販売箇所を拡大する方針を示していた。
 

 回数券(160回分)
普通車  16,250円(通常32,000円)
軽自動車 13,000円(通常13,000円)  
〈2023.7.15 あなたの静岡新聞〉

 

住民から「納得できない」の声が出ていた 5月に下田市と函南町で説明会

 静岡県は5月30、31の両日、伊豆中央道と修善寺道路の料金徴収期限延長に関する一般向け説明会を下田市と函南町でそれぞれ開いた。県は両道路を無料化すると交通量が大幅に増えて渋滞が悪化するとしたが、参加者からは「納得できない」と説明不足を指摘する声が複数上がった。

県が道路の料金徴収方針に理解を求めた説明会=下田市
県が道路の料金徴収方針に理解を求めた説明会=下田市
 一部の参加者は道路の高速性や定時性確保と無料化の関連性を疑問視。交通量調査などによる実態把握を求めた。10月から40年程度延長される方針の徴収期限について社会情勢の変化に対応した柔軟な対応を求めたり、利便性向上のためにETC導入を要請したりする参加者もいた。
 県は道路建設から40年近く経過した構造物の老朽化対策の必要性を強調。伊豆半島全体の道路ネットワークの早期整備に向けた財源確保のため料金徴収の延長に理解を求めた。
 下田市の説明会では県内他地域との不平等感を訴える意見に対し、県は賀茂地域の住民への優遇措置を「何かできないか探っている」と回答。一部地域でしか購入できないという道路料金の回数券について「賀茂での販売をなるべく早急に対応したい」とした。
 5月に開かれた賀茂6市町の議員向け説明会では「地元の利点がない」との声が多数上がっていた。両市町の説明会には延べ100人ほどが参加した。
(下田支局・伊藤龍太)
〈2023.6.2 あなたの静岡新聞〉

整備“大義”に賛同も 静岡県説明不足に不信感

 ※2023年6月21日 あなたの静岡新聞より

伊豆中央道、修善寺道路の料金徴収延長に対する各市町の立場
伊豆中央道、修善寺道路の料金徴収延長に対する各市町の立場
 伊豆中央道と修善寺道路の料金徴収期限を延長する静岡県の方針を巡り、生活道路として活用する沿線や賀茂地域の市町で、首長によって見解が分かれている。伊豆半島の道路網整備に向けた財源確保を“大義”に賛同する意見が多数を占めるが、「メリットがない」と反対も。県は23日開会の県議会6月定例会に関連議案を提出するが、期限延長に理解を示す市町の議員や住民からも、県の説明不足を指摘する声が上がる。

 「延命や補修の予算が必要だ」(岸重宏河津町長)。「道路が脆弱(ぜいじゃく)な伊豆半島に投資できる。賛成したい」(菊地豊伊豆市長)。伊豆縦貫道をはじめとする道路網の整備促進は、観光や防災、救急搬送の迅速化の面から伊豆地域の市町の悲願だ。岩井茂樹東伊豆町長は「近年は道路財源の獲得競争が激しい」との認識を示す。両道路の利用者の大半が、県外からの観光客である点も、徴収期限延長に賛同する要因だ。
 一方、伊豆中央道の起点にある函南町は反対の立場。有料区間を避ける車両が生活道路に流入し、交通安全上の危険を長年強いられてきたからだ。伊豆中央道は2014年度、修善寺道路との合併採算性の導入で無料化が先延ばしされた経緯があり、仁科喜世志町長は「協力した間に有料道路を避ける車両がさらに増えた」と強調する。
 2度目の無料化延長にもかかわらず、県の方針が判明したのは、県議会2月定例会の答弁だった。地元説明会も町が要請して5月末にようやく実現し、県の対応に対する不信感は根強い。町議会でも3月定例会で「一度棚上げされた。納得できない」との声が上がり、町は徴収期限通り無料化するよう求める意見書を国や県に提出した。
 賛同する市町にも県の説明を疑問視する議員は多い。県は無料化した場合に定時性と高速性の維持が困難だとするが、根拠が曖昧で「今のままでは地域住民の理解は得られない」との指摘が上がる。
 県は近接する国道414号静浦バイパスの一部区間を有料化する意向も示す。財源の一部は、徴収期限を延長する両道路の料金収入を充てる方針だ。定期的に両道路を利用する下田市の男性会社員は「賀茂地域の住民から徴収するなら賀茂地域の振興にも充ててほしい」と訴える。
〈2023.6.21 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞