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名建築 沼津・アーケード名店街 歴史と歩みをまとめます

 1954年、防火建築で全国初のアーケード街として誕生し、昭和30年頃には沼津の商業の中心地としてにぎわった「アーケード名店街」が大きく変わろうとしています。24年に解体が始まり、27年には新たな建物が誕生予定です。日本の建築史に名を刻む名店街の歴史と再開発事業について1ページでおさらいします。

有階アーケード、角に丸み持たせた優美な壁面...愛好家ら惜しむ

 JR沼津駅と沼津港の間に位置する「沼津アーケード名店街」。日本の建築史にその名を残す長さ約250メートルの商店街は2022年に再開発が決まり、24年には解体が始まる。

2階以上が歩道の上にせり出す沼津アーケード名店街。北端の商店街入り口=3月中旬
2階以上が歩道の上にせり出す沼津アーケード名店街。北端の商店街入り口=3月中旬
 2階以上が突き出して1階部分の屋根の役目を果たす、全国でも珍しい「有階アーケード」、角に丸みを持たせた優美な壁面、水平のラインを強調したガラスサッシのファサード―。まもなく姿を消す昭和20年代の名建築を惜しみ、静岡県内外から建築愛好家らが訪れている。
 1953(昭和28)年12月に商店街西側、翌54(昭和29)年11月に東側が完成。戦後復興の中で鉄筋コンクリートの「防火建築帯」としてつくられた。都市の不燃化運動の先駆けともされる。
 「有階アーケード」は苦肉の策だった。都市計画道路だった商店街の道路は幅20メートルが必要とされた。だが、中心部の4階建て百貨店「松菱」の移動が困難だったため、その1階部分を貫通させて歩道を造った。周囲の店舗はそれに合わせて1階部分だけを後退させることにした。沼津市誌(61年)は「商店街共同建築のモデルケース」と記している。
 県ヘリテージセンター長で一級建築士の塩見寛さん(70)=同市=は「住民と行政が歩み寄り、新しいまちづくりへの志を結実させた」と評価する。

〈2023.4.14 あなたの静岡新聞〉
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昭和30年前後の名店街。中心付近からJR沼津駅方面を望む(商店街振興組合沼津アーケード名店街提供)
 
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車道側の屋根を支える柱がない「沼津アーケード名店街」第1ブロック=沼津市
 
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第1ブロックと第2ブロックの曲面部分。屋根は後年取り付けられたもの
 
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「沼津アーケード名店街」第一地区の2階、3階部分。均一な形の窓が並ぶ=沼津市
  (教育文化部・橋爪充)

検討から20年、中心地再生実現へ前進 27年8月に完成予定

 静岡県は24日、沼津市中心街のアーケード名店街で計画されている再開発事業の事業計画を認可した。まちづくりの検討が始まってから約20年。商都・沼津のかつての中心地再生に向けた事業の実現へ大きく前進した。

建物の完成イメージ図
建物の完成イメージ図
 市役所で伝達式が開かれ、頼重秀一市長が施工者「町方町・通横町第一地区市街地再開発組合」の水口隆太理事長(67)に事業許可書を手渡した。
 2000年代前半に新たなまちづくりの検討を始め、対象区域や手法を協議してきた。水口理事長は「次の世代に引き継げるものを作ろうと地域の力を合わせてきた。やっと、ここにたどり着いた」と喜びを語った。
 事業計画地は3千平方メートル。地下1階、地上10階の建物を建設し、1階は店舗、2~10階は住居とする計画。特定業務代行者のタカラレーベン・フジタ共同企業体が設計や建築工事を担う。23年度に権利変換計画の認可を受け24年から現存建物を解体した後、着工する。27年8月に完成予定。
 公共歩廊で知られるアーケード名店街は昭和30年代に沼津の商業の中心地だった。市制100周年の節目の年に事業認可を受け、頼重市長は「市のまちづくりが加速する大きなチャンス」と期待を寄せた。
(東部総局・矢嶋宏行)
〈2023.3.25 あなたの静岡新聞〉

名店街の将来像、住民が議論 沼津でワークショップ

 再開発が始動した沼津市のアーケード名店街周辺の住民らが20日夜、再開発後の公共空間や道路のデザインについて考える最初のワークショップを市青少年教育センターで開いた。五つの街区に分かれた名店街全体の将来像や、道路の整備イメージを中心に意見交換した。

地域住民がアーケード名店街周辺のデザインについて考えたワークショップ=沼津市青少年教育センター
地域住民がアーケード名店街周辺のデザインについて考えたワークショップ=沼津市青少年教育センター
 名店街の商店主や住民ら13人が参加。2グループに分かれ、模型や地図を見ながら、「生活が完結する街」「子どもがいる街」など将来像について語り合った。裏通りも含めた道路の在り方もテーマにしたほか、歩行者と自転車のすみ分けや停車スペースの確保など広範囲にわたって意見を交わした。
 名店街周辺の再開発「町方町・通横町地区第一種市街地再開発事業」は、南西側の街区が先行スタート。市は国の「街なみ環境整備事業」を活用し街路空間などの住環境を整備する。8月と12月にもワークショップを開き、年内に具体的方針をまとめる。
 地域まちづくり研究所(静岡市)のスタッフがアドバイザーとして参加した。
 (東部総局・尾藤旭)
〈2023.6.23 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞