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追悼 音楽家・坂本龍一さん 静岡県内から惜しむ声

 世界的な音楽家として知られた坂本龍一さんが3月28日、死去しました。「教授」の名で多くのファンから親しまれ、音楽活動だけでなく非戦や脱原発の社会運動も積極的に続けました。早すぎる訃報に、静岡県内からも惜しむ声が相次いでいます。

世界的音楽家の坂本龍一さん死去 YMO、環境・平和活動も

 音楽ユニット「イエロー・マジック・オーケストラ」(YMO)のメンバーで、世界的な音楽家として知られた坂本龍一(さかもと・りゅういち)さんが3月28日、死去した。71歳。東京都出身。葬儀は近親者で行った。

坂本龍一さん
坂本龍一さん
 1978年に細野晴臣さん、高橋幸宏さんとYMOを結成し、キーボードを担当。シンセサイザーを駆使したテクノ・ポップ・サウンドで一世を風靡した。
 大島渚監督の映画「戦場のメリークリスマス」に出演し、音楽も担当。映画「ラストエンペラー」の音楽で、米アカデミー作曲賞、グラミー賞を受賞した。
 環境問題や平和問題にも関心が深く、近年は脱原発で積極的な発言を続け、被災地支援活動にも携わった。
 2014年に中咽頭がん、21年1月に直腸がんの治療を公表。同年10、12月には両肺に転移したがん摘出手術を受けた。22年12月に配信コンサートを行い、「ライブでコンサートをやりきる体力がない。この形式で演奏を見ていただくのは、これが最後になるかもしれない」とコメントしていた。
 〈2023.04.02 あなたの静岡新聞〉

世界的な音楽家、ヤマハピアノを愛用 静岡県内から惜しむ声

 音楽家坂本龍一さんの訃報から一夜明けた3日、静岡県内関係者からも惜しむ声が相次いだ。

坂本龍一さんのアルバムなどを並べた追悼コーナー=3日午後、磐田市高見丘のタワーレコードららぽーと磐田店
坂本龍一さんのアルバムなどを並べた追悼コーナー=3日午後、磐田市高見丘のタワーレコードららぽーと磐田店
 坂本さんはヤマハ(浜松市中区)のコンサートグランドピアノを愛用していた。同社は「長年にわたる交流を通じて坂本さんの類いまれな音楽、芸術活動に触れるなど貴重な学びを得た」と追悼の意を表した。
 同社ウェブサイトに掲載された2009年の坂本さんへのインタビューでは「日本の家の木造りのような雰囲気を醸し出している」と同社のピアノを評し、愛着を示した。坂本さんを追った17年のドキュメンタリー映画では、東日本大震災で津波被害を受けた同社のピアノを修復する場面などが使用された。
 坂本さんが監修した音楽全集「commmonsschola(コモンズスコラ)」の第16巻「日本の歌謡曲・ポップス」で、座談会にゲスト参加した静岡文化芸術大の奥中康人教授(音楽学)は「坂本さんは明治時代の西洋音楽といった専門的な分野まで興味を深め、人文学的な素養にあふれていた。クラシックからアフリカ音楽、ロックまで分け隔てなく音楽を捉える貴重な存在だった」と惜しんだ。
 磐田市の「タワーレコードららぽーと磐田店」は追悼コーナーを設置した。闘病中の坂本さんが1月、6年ぶりに発売した「12」を含むアルバムとサウンドトラック計7種類を並べ、追悼のメッセージパネルを添えた。加藤元博店長(42)によると、在庫の問い合わせが多く寄せられている。
 加藤店長は「(坂本さんが)亡くなっても作品は生き続ける。坂本さんの音楽を改めて聴いてみたい人など多くの人に手に取ってもらいたい」と話した。(教育文化部・柏木かほる)
 〈2023.04.04 あなたの静岡新聞〉

​思想でも重要な役割 「ヒカシュー」の巻上公一さん寄稿

 YMOと同時代にデビュー、活動した者として、ライバル心から距離があったが、「憲法9条を守る」べきという点で、坂本龍一がナビゲーターをつとめる番組「レディオ・サカモト」に呼ばれたことがあった。

巻上公一さん
巻上公一さん
 坂本さんは、音楽のみならず、音楽家の思想というものに大変興味を持っていたのではないだろうか。
 ますますきな臭い軍拡や原発の再稼働、自然破壊にノーという重要な役割を引き受け、リーダーシップをとり続けてくれた。
 これから先、誰がその役割を担ってくれるだろうか。本当に惜しい死である。
 音楽家として世界に認められたスターであり、俳優であり、社会活動家でもあった。憂いある柔和な笑顔が、人懐っこく、知的な活動が、とても印象深い。
 Eテレの「Schola 坂本龍一 音楽の学校」では、バッハからジャズ、民族音楽まで広範な音楽の学びを提示した。
 坂本さんから、次は「声」をテーマにしたいから手伝ってほしいといわれたが、それが叶[かな]わなかったのが残念だ。
 実は、1曲だけ一緒に歌を作ったことがある。高橋幸宏のプロデュースで、坂本龍一の作曲、ぼくが作詞した。
 もっと話をして、新しい歌も作ってみたかった。大きな喪失を感じる。(音楽家・詩人。バンド「ヒカシュー」リーダー、熱海市在住)
 〈2023.04.04 あなたの静岡新聞〉
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