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コロナ禍で広がった「巣ごもり演奏需要」 大人も楽しもう

 コロナ禍の巣ごもり演奏需要が増え、静岡県内の楽器メーカーは大人向けモデルにも力を入れています。腹式呼吸を利用する楽器演奏は、脳の活性化やストレス解消など健康増進への期待も。楽譜が読めなくても始められるなど、手軽さも魅力の楽器を紹介します。

「児童用楽器」イメージ一新 鈴木楽器製作所が新色鍵盤ハーモニカ

 鈴木楽器製作所(浜松市中区)はこのほど、国内初の鍵盤ハーモニカとして1961年に売り出した「メロディオン」の児童用製品のイメージを一新した「MFR―32」を発売した。繁忙期となる4~5月を前に販売態勢を強化する。

鈴木楽器製作所のメロディオンの新製品(右)=浜松市南区の鈴木楽器販売
鈴木楽器製作所のメロディオンの新製品(右)=浜松市南区の鈴木楽器販売
 性別に関係なく小学校卒業後も使用できるようなブラウンの色に統一した。本体はボディーの形状を柔らかい音色が出るように改良し、重さを従来の565グラムから528グラムへと軽量化を図った。カバーはプラスチックからEVAセミハードケースに改めた。
 同社製品を販売する鈴木楽器販売(南区)の担当者は「SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも、教材だけでなく楽器として提供していきたい」としている。
 同社によると、新型コロナの巣ごもり需要で、大人の鍵盤ハーモニカ愛好家はここ数年増加傾向。コロナ前から同社が全国で開催するメロディオンを奏でる「ケンハモ認定研修会」には定員以上の申し込みがあるという。
 MFR―32の価格は税込み7480円。(浜松総局・大山雄一郎)
〈2023.3.28 あなたの静岡新聞〉
 

鍵盤ハーモニカ「音楽療法」効果に期待 浜松の販売会社が普及活動

 息を吹き込みながら指で音を鳴らす「鍵盤ハーモニカ」を使って健康増進やコミュニケーションの活性化を図ろうと、発祥の地の浜松市の楽器販売会社が大人向けの普及活動に乗り出す。音楽教室での個別指導に加え、高齢者施設や事業所に講師を派遣する出前教室などを計画する。

気軽に演奏できる鍵盤ハーモニカ。浜松の楽器販売会社が大人向けの普及活動を始める=2月上旬、浜松市南区の鈴木楽器販売
気軽に演奏できる鍵盤ハーモニカ。浜松の楽器販売会社が大人向けの普及活動を始める=2月上旬、浜松市南区の鈴木楽器販売
 企画したのは、国産初とされる鍵盤ハーモニカ「メロディオン」を製造した鈴木楽器製作所(中区)の製品を取り扱う鈴木楽器販売(南区)とアオイ楽器店(中区)。
 鈴木楽器販売の多田和修執行役員営業推進部長は「鍵盤ハーモニカは子供向けの教育楽器とのイメージが強いが、大人向けモデルも増えている。年齢を問わず、楽しく簡単に演奏できることを知ってほしい」と話す。
 鍵盤ハーモニカは多くの人が小学校などで演奏経験がある。年齢を重ね、時間の余裕を得やすくなった世代を中心に再挑戦してもらい、演奏者の裾野を広げる狙いだ。第1弾のイベントとして25日、同社で音楽と呼吸をテーマにした鍵盤ハーモニカのセミナーを開いた後、出前教室などの事業をスタートする。セミナーはオンラインでも公開予定。
 腹式呼吸を利用する楽器演奏は、呼吸器系機能や嚥下(えんげ)機能の向上、脳の活性化、ストレス解消などの効果が期待され、「音楽療法」として注目されているという。
 アオイ楽器店の川上嘉将社長は「健康づくりとともに、職場の仲間同士で演奏すれば、横のつながりが強まるのでは」と波及効果に期待する。(浜松総局・杉山諭)
〈2022.2.21 あなたの静岡新聞〉
 

楽譜読めなくてもキーボード演奏 ヤマハが3機種

 ヤマハはコロナ禍の巣ごもり演奏需要が増えている電子キーボードで、演奏スキルに対応した新モデル3機種を国内で相次いで売り出した。10日には鍵盤が光って弾く場所を教えてくれるライトガイド機能搭載の「EZ-300」を発売、楽譜が読めない初心者にも鍵盤楽器に触れる楽しさを体感してもらう。

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「ライトガイド」機能を搭載し、楽譜が読めない初心者でも演奏が楽しめるヤマハの電子キーボード「EZ-300」
 

  コロナ禍での奏者の年代や挑戦理由の変化などを踏まえ、幅広い機能と価格帯を用意して新規顧客獲得にもつなげる。担当者は「最適な一台を選んでもらえたら」と期待する。

  EZ-300は曲の大事なポイントを取り出し、効果的に上達を図る「ソングマスター」など豊富な練習機能を備える。大人も楽しめる定番曲を含め222曲を収録。622音色に加え自動伴奏も205種類を内蔵し、上達後も愛用できる。デザインは幅広い年代や室内空間に合う上質仕上げのシルバーホワイトを採用した。価格は税込み3万円前後。
  弾く強さに応じて音の強弱が表現できる機能を備えた初~中級者向けの「PSR-E373」は同2万4千円前後。1373音色を搭載し、質の高い演奏や楽曲制作を可能にしたシリーズ最上位モデル「PSR-SX600」(同8万円前後)とともに発売した。(荻島浩太)
〈2020.12.12 あなたの静岡新聞〉
 

クロマハープ、魅力発信へ講座 浜松の愛好家が東海楽器製造と連携 

 「コロナ禍でも、心を癒やす優しい音色を気軽に楽しんで」。1960~70年代に一大ブームを巻き起こした楽器「クロマハープ」を再び普及させようと、浜松市の男性愛好家が入門者向けの演奏講座を小規模ながらスタートした。販売を担う東海楽器製造(同市南区)の全面協力で、ギターコードを押さえにくい人にも弾きやすい“簡単な楽器”の魅力を発信している。

置いても抱えても弾けるクロマハープを奏でる高須栄さん(左)。東海楽器製造の足立庄平社長(右から2人目)も音色に聴き入る=9月下旬、浜松市中区
置いても抱えても弾けるクロマハープを奏でる高須栄さん(左)。東海楽器製造の足立庄平社長(右から2人目)も音色に聴き入る=9月下旬、浜松市中区
 9月末、同市中区の西部協働センター。「指を見ず、コードを感覚で覚えればもっと楽に弾けますよ」。クロマハープ歴約10年の高須栄さん(73)=北区=が実演を交え、「キラキラ星」「さくらさくら」の弾き方を受講者2人に伝えた。
 全5回の3回目。中区の和田まち子さん(69)は「幼い頃は手が小さくてギターを諦めたけど、和音は分かる。初心者でもすぐに楽しめるのは魅力」と自慢の歌声も乗せて軽快に奏でた。元ピアノ職人、西区の山北敏明さん(74)も「落ち着いた音色が好き。コロナが収まれば大人数で弾きたい」と笑顔を見せた。
 静岡市内を中心に活動する静岡クロマハープ協会の指導を受け、魅了された高須さん。勤務先の浜名湖ガーデンパークで定期演奏してきた。コロナ禍で一時休んだが「習える場を尋ねてくる来園者は多かった。関心は高い」との確信から開講を決意。少人数制で感染対策を徹底し、14日の最終回での途中参加も歓迎する。
 販売を担う東海楽器によると、コロナ禍で、自宅で音量などを調整できる楽器特性から、弦やチューニングハンマーの発注が世界中から相次いだ。日本のアニメ音楽を演奏したいとフランス人からの楽器注文もあった。
 会員制交流サイト(SNS)で発信を続ける足立庄平社長(62)は「手頃な価格で、挑戦しやすい楽器を弾きたがっている人は多い」と捉え、潜在的需要の掘り起こし策を練る。

 <メモ>クロマハープ 弦は36本。左手でコード(和音)バーを押さえ、ピックを付けた右手ではじくとジャランと鳴る。新品価格は7万円前後からで、中古は1万円弱。原型は100年以上前に米国で誕生し、「オートハープ」の呼び名で教育楽器として普及した。日本では東海楽器製造が製造販売、輸出し、その後中止したが約3年前に販売を再開した。優しいアコースティックの音色や抱えて弾ける演奏スタイルが中高年の心を捉え、静岡市を中心に県内の活動は全国で最も盛んといわれる。(荻島浩太)
〈2020.10.12 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞