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静岡空港、国際線再開へ インバウンド回復に業界期待高まる

 新型コロナウイルスの影響で2020年3月から全便欠航が続いている静岡空港の国際線について、3月26日にソウル線定期便の運航が再開される見通しとなりました。これに先立ち、2月25日には韓国発着のチャーター便のフライトも決まりました。再開を巡る動きや、観光業界の受け止めを1ページにまとめました。

2月に韓国チャーター便 2年11カ月ぶりに国際線運航

 静岡県と富士山静岡空港株式会社は5日、新型コロナウイルスの影響で2020年3月から全便欠航している静岡空港(牧之原市)の国際線について、23年2月下旬に韓国発着のチャーター便で2年11カ月ぶりに運航を再開すると発表した。

静岡空港を利用するチェジュ航空の機体=2019年6月(静岡県提供)
静岡空港を利用するチェジュ航空の機体=2019年6月(静岡県提供)
 チャーター便は、韓国最大手の旅行会社「ハナツアー」による3泊4日の団体旅行に合わせた。チェジュ航空(韓国)が2月25日と28日に仁川(ソウル)―静岡間往復の計4便を運航する。各便の座席数は189席。
 ハナツアーの旅行商品は、県中部や伊豆半島を周遊するコースや、東京都内や箱根などを巡るツアーが販売されている。チャーター便の復路に合わせた日本から韓国へのツアーについても、県内の旅行会社などが販売を検討しているという。
 県は22年度、出野勉副知事が訪韓するなどして航空会社や旅行会社に韓国路線の再開を働きかけてきた。
〈2023.1.6 あなたの静岡新聞から抜粋〉

コロナ収束後見据え空港機能強化 国際線カウンターなど拡充

新たに増設された国際線のチェックインカウンター=1月上旬、静岡空港
新たに増設された国際線のチェックインカウンター=1月上旬、静岡空港
 ※2022年1月17日 あなたの静岡新聞から
 新型コロナウイルスの影響で航空旅客が減少する中、富士山静岡空港株式会社(牧之原市)が収束後の需要回復を見据えた取り組みを進めている。昨年(2021年)末には国際線受け入れ機能を強化する工事が完了し、旅行客やエアラインの利便性向上を目的とした設備を整えた。民営空港の強みを生かした事業を展開し、さらなる利用客増加につなげたい考え。
 国内線の利用客が搭乗手続きを行う横で、客の行き来のない国際線チェックインカウンターに、真新しいモニターが並んだ。
 国土交通省によると、静岡空港の2018年度の国際線利用客数は29万人で、全体の約4割に上った。しかしコロナ禍の影響で、20年3月の運航を最後に全便欠航が続いている。国交省の補助を受け昨年(2021年)9月に始まった拡張工事では、国際線の有人カウンターを10カ所から18カ所に増設したほか、自動チェックイン機を5台導入した。これまで同時2便が限界だったチェックインは、最大3便まで対応可能になる。同一時間帯での増便が期待できるという。混雑解消を図るため、カウンター前に設置されていた保安検査機は新たに設けた検査場に移した。
 コロナ禍の苦境にありながらも同社は本年度、観光庁の「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」の補助金を活用した事業を展開している。大井川流域観光拠点化計画と題して、周辺施設の観光周遊促進を目的にジャンボタクシーの実証運行や顔認証AIカメラを空港や周辺の観光施設に設置して人流調査を実施している。
 同社はコロナ前の18年度に約70万人いた旅客数を、38年度までに135万人に伸ばす長期計画を掲げる。今後も民間資本による柔軟な資金運用で、空港を軸とした観光振興事業を手掛けていくという。担当者は「収束後に動きだすのではなく、空港自らが先を見据えて行動していかなければならない。供給の拡充から需要増につなげていきたい」と話した。(榛原支局・足立健太郎)
 ※内容は当時のまま

観光業界「待ちわびていた」 国際線再開に歓迎の声

外国語のパンフレットや音声ガイドの案内を準備する職員=5日午後、島田市のふじのくに茶の都ミュージアム
外国語のパンフレットや音声ガイドの案内を準備する職員=5日午後、島田市のふじのくに茶の都ミュージアム
 ※2023年1月6日 あなたの静岡新聞から
 静岡空港国際線の再開が発表された5日、静岡県内の観光関係者からは「待ちわびていた」「地域活性化の励みになる」などと歓迎の声が上がった。定期便の再開につながれば新型コロナウイルス禍で約3年にわたり途絶えていた外国人観光客の来県が本格回復に向かうとみられ、各事業者は好機を逃すまいと受け入れ準備を加速させる。
 ふじのくに茶の都ミュージアム(島田市)はコロナ禍のあおりで、2018、19年度に年間各2500人を超えていた外国人来館者が激減。大半は茶への関心が高い中国や台湾、韓国のツアー客で、茶道体験や茶摘みが人気だった。白井満副館長は「国際線再開は大きな励み。国内客と合わせ、訪日客にも日本文化や茶畑の景観を満喫してほしい」と期待する。
 川根本町では、昨年の台風15号による被害で通行止めが続いていた人気スポット「夢のつり橋」の通行が14日に再開される。同町まちづくり観光協会の戸塚崇次長は「自然の中の絶景は訪日客の目的地になりつつある。ツアー実施が台湾などにも拡大するとうれしい」と話した。
 舘山寺温泉観光協会(浜松市西区)は、浜名湖上での舞台芸術を3年連続で行うなど、コロナ後を見据えた誘客策を進めてきた。金原貴会長は「舘山寺温泉の今後の振興に訪日客は欠かせない存在。地域の魅力を発信しながら、準備を急ぎたい」と言葉に力を込める。
 静岡市清水区の三保松原文化創造センター「みほしるべ」は、19年の入館者(約66万5千人)の2~3割を訪日客が占めていたが、21年の総入館者数は約25万人に落ち込んだ。23年は三保松原が富士山世界文化遺産の構成資産に登録されてから10周年。真田剛光所長は「世界に誇る三保松原の風景を一人でも多くの外国人に再び見てほしい」と意気込む。(経済部・駒木千尋)

中国がゼロコロナ政策終了 インバウンド回復お預けか

中国の新型コロナ対策の変更点
中国の新型コロナ対策の変更点
 ※2022年12月28日 あなたの静岡新聞から
 中国が26日、新型コロナウイルス対策の柱としてきた入国時の隔離を来月(1月)から撤廃すると発表した。感染者の爆発的増加に構うことなく、「ゼロコロナ」政策の幕引きを強行。ウイルス流入を警戒する日本は水際対策の強化を即決した。日中の往来正常化には時間を要し、インバウンド(訪日客)の本格回復はお預けとなりそうな旅行関係者からはため息も漏れた。

見切り発車
 中国当局は現在、感染者の全数把握を放棄。政府は1日の感染者を数千人としているが、地方政府の情報などから判断すると少なくとも数百万人が日々感染しているのは確実だ。日本の厚生労働省幹部は「対策緩和が感染拡大の原因」とみる。
 北京の会社員は「7割ぐらいの同僚は感染した」と明かす。ある官庁職員は「各部局とも数人しか出勤できていない」と証言。発熱外来は昼夜問わず混雑し、火葬場近くの住民は「通常の2倍ほどの人が来ている」と話す。流行は農村にも広がりつつある。
 中国政府は今回、新型コロナを隔離が不要な感染症と位置付け、入国時の強制隔離もやめる方針転換に踏み切った。大流行に逆行するような判断について共産党関係筋は「従来の政策を続けるならば、北京や上海といった大都市は機能を停止しなければならない。経済は崩壊だ」と解説する。
 ゼロ政策終了はオミクロン株の猛威に政府が対応し切れなくなったための見切り発車だ。政府関係者も「事前準備は整っていない。突然だという感じは否めない」と認めるしかなかった。

春節控え
 「臨時的な特別措置を講じる」。岸田文雄首相は27日午後、官邸で水際強化を急きょ発表。来月(1月)には中国が春節(旧正月)の大型連休に入る。訪日観光客の急増が予想される中、中国側発表から間髪入れずに決断した。
 国内は流行「第8波」で新規感染者の報告が1日20万人に達した。与党内には、対策を講じなければ国民の不安がさらに増大しかねないとの懸念があり、首相官邸にも伝えられていた。
 日本政府は今回の措置が対中外交に影響しないか中国側の反応を注視する。11月に首相と習近平・中国国家主席が約3年ぶりに対面会談したばかり。対話基調に水を差さないよう慎重を期す。中国側に「あくまで科学的に調査するための臨時措置だ」と伝達。官邸筋は「理解を得た」と語る。

消えた爆買い
 水際緩和は世界の潮流で、国連機関などによると、120を超える国・地域が入国規制を撤廃した。だが、専門家は中国の急転換を疑問視する。東京医大の浜田篤郎特任教授(渡航医学)は「なぜ(感染が急増した)この時期に一気に緩和したのかが分からない。段階的に緩めていくのが望ましいのではないか」と指摘する。
 浜田氏によると、海外からの渡航者を診療できる病院は限られており、入国者の急増は医療逼迫を加速させる恐れもある。日本の水際強化策については「先手を打った対応」と評価した。
 ただ、規制導入は中国人訪日客の回復という面からは足かせになる。
 中国人の“爆買い”が消えた百貨店業界ではゼロ政策終了が伝わった27日午前、「売り上げの後押しになる」(百貨店の広報担当者)と期待が広がったが、規制策発表でムードは一変。航空関係者は「中国の感染状況を踏まえれば仕方ない」と肩を落とした。(北京、東京共同)
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